前世聖女な公爵令嬢は王太子から婚約破棄されたい。

克全

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2話

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「御姉様、そんなに魔法の勉強をなされては、公爵家の令嬢に相応しい優雅さを失ってしまわれますわよ」

 マリアが愚かなことを口にします。
 侍女達が顔色を悪くしています。
 侍女達が私の事を悪く言っていたのを耳にして、そのまま話題にしたのでしょう。
 私を貶めようとして言ったのでしょうか?
 馬鹿を演じて咎められないようにしているのでしょうか?
 三度の人生では、マリアを天真爛漫のお馬鹿と思っていましたが、四度目となって冷静に全てを見極めようと周囲を注視していたら、確証が持てなくなりました。

「構わないのよ。
 私は領地を分与してもらって、魔法の研究に生涯を費やす心算だから。
 マリアのように魅力的な殿方を探す必要などないのよ」

「まあ、御姉様はまたそんな事をおしゃる。
 それではアマル公爵家‎はどうなってしまいますの?
 わたくしがロレンツォ王太子殿下の正妃になったら、次代のアマル公爵を産むのは御姉様ではありませんか。
 アマル公爵家の婿に相応しい殿方を見つけてくださらないと、父上がお困りになるのではありませんか?」

 侍女達の顔色が青を通り越して白くなっていますね。
 全部侍女達が陰で口にしている事なのでしょう。
 まあ、マリアが口にしなくても私の耳に入っていました。
 生まれてから十六年、ひたすら魔法を磨き続けてきたのです。
 使い魔の能力も数も、王国魔術師団長にも負けないと自負しています。
 王国魔術師団全員を敵に回しても、この国から逃げ出せるという自負もあります。

 侍女全員にお仕置きするくらいは簡単ですが、そんな気はありません。
 女三人寄れば姦しいのは当然です。
 悪口陰口を言うのも普通です。
 過去三度の人生では、私が率先して悪口陰口を広めたものです。
 今はもう何もかも懐かしいです。

「そんな事は気にしなくていいわ。
 マリアが王太子殿下の正妃になるのなら、第二王子にアマル公爵の領地と爵位を与えればすむことよ。
 それで王家とアマル公爵家はさらに血が濃くなるわ。
 アマル公爵家は安泰となるわ。
 それともマリアには自信がないの?
 ロレンツォ王太子殿下は振り向いてくれそうにないの?」

「まあ!
 御姉様は誰にそんな事を仰っておられるのかしら?
 わたくし、太陽の美姫と呼ばれていますのよ。
 私の魅力に振り向かない男性など、一人もいませんわ!
 ロレンツォ王太子殿下も振り向かせてみせますわ!」

「だったら私の事は気にせず好きにしなさい。
 ただ気を付けるのですよ。
 マリアの魅力ならロレンツォ王太子殿下を振り向かせることは簡単でしょう。
 でも釘付けにするのは難しいわよ」

 やれやれ。
 マリアもマリア付きの侍女達も勝ち誇った顔をしているけど、マリアよりも魅力的な令嬢がいるんだよね。
 捨てられるどころか、私の代わりに火炙りにされなきゃいいけど。
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