36 / 94
第一章
第35話:結婚
しおりを挟む
皇紀2218年・王歴222年・冬・ロスリン城
「ハリー殿、国王が選帝侯家から正室を迎えたが、カンリフ騎士家は王家と王国を存続させる気なのか」
爺様が不思議そうに聞いてくるが、俺に聞くなよ。
カンリフ騎士家との繋がりは爺様に任せたのだ。
知りたいのなら、俺に聞かずにカンリフ騎士家のルーカスに直接聞けばいいのだ。
まあ、今は周囲をエクセター侯爵軍に厳しく封鎖されているから、無理だけど。
俺には国王の結婚よりも、エクセター侯爵軍の方が気になるのだ。
だが、情報の共有はとても大切だから、影衆が調べてくれたことと、そこから俺が導き出した予測を話しておかなければいけないな。
「恐らくだが、カンリフ騎士家は、王国貴族はもちろん、多くの貴族士族に反抗されたのだろう。
味方になってくれる、自分達のやっている事を理解してくれる。
そう思っていた、自分達と同じように、主君である王国貴族を滅ぼした士族にまで、反抗され続けたのだろう。
カンリフ騎士家が、王家と同じ一族の三大宰相家や六公爵家だったら、王国貴族も士族もあれほどまでに反抗しなかっただろう。
いや、せめて侯爵家や伯爵家だったら、新たな王家となれただろう。
だがカンリフ騎士家は、主君である伯爵家を滅ぼして地方を支配した。
三大宰相家の分家である伯爵家を滅ぼして、その正室を自分の妻にした。
やってきた事があまりにも露骨で下劣過ぎた」
「いや、ハリー殿、それをやったのは、ルーカス殿ではなく弟のイーサンだ」
「俺や爺様は、公平にカンリフ騎士家を見ることができる。
だが王国貴族や士族は、一族や家臣がやった事もカンリフ騎士家がやった事だと思い、ルーカス殿を嫌い非難する材料にするのだ。
まあ、自分ができない事をやっている、ルーカス殿への妬み嫉みが本当に原因だが、そのような事を正直に口にする奴はおらんさ」
「なるほど、それを感じて、自ら王国を立てる事を諦めたか」
「ただ、完全に諦めたかどうかは分からないぞ。
まずは傀儡にした国王から爵位を手に入れるだろう。
カンリフ騎士家が支配する首都で暮らしている以上、ルーカス殿の叙爵願を拒む事などできないから、ルーカス殿達は王国貴族になる。
俺と同じ手を使って、皇国貴族にも叙爵されるだろう。
もう既に、主流派から疎外された選帝侯家の姫を弟の正室に迎えているのだ。
二代三代と時間をかけて、皇家と王家の外戚となり、皇国と王国の両方を支配して、都合のいい方を残す事もできる。
皇帝陛下を操り、王家を滅ぼして新たな王家を立てる事もできる」
「確かに、二代三代をかけてやるのなら、新王国の建国も可能だろう。
カンリフ騎士家ほどの戦力と富を持つ家が、時間をかけて王家を潰すと決意したら、防ぐことは難しいだろうな」
「だが選帝侯家等の皇国貴族にも、気概のある奴がいるようだ。
為す術もなく皇帝陛下をカンリフ騎士家の傀儡にするのは嫌なのだろう。
あるいは、忠義の為ではなく、自分の権力や名誉を護るためかもしれない。
だがそのどちらであろうと構わない。
王家に娘を送って、カンリフ騎士家と対抗しようとする選帝侯家があるのだ」
「なるほど、今皇国で主流派となっている選帝侯家が、カンリフ騎士家に娘を送り込んだ反主流派に対抗しようとしているのだな」
「ああ、何もしないで放置していたら、何時排除されるか分からないからな。
王家と手を組むことで、反カンリフ騎士家同盟を作るつもりだろう。
自分達が表にでるのは危険だから、国王を表に立ててな」
「なんと、国王はカンリフ騎士家の傀儡にされているだけではなく、選帝侯家の手先にもされているのか、選帝侯家とは恐ろしいものだな」
「ああ、今残っている選帝侯家は四家だが、どこも油断ならない毒虫だ。
爺様も決して気を許さず、母上が持ってくる、皇国貴族令嬢の嫁入り話を、上手く断ってくれよ」
「分かった、今無理にハリー殿の嫁を決めなくても、縁を結びたがっている王国貴族は山ほどいる、面倒な皇国貴族令嬢と無理に縁を結ぶ必要はない」
「だからと言って、母上と争わないでくれよ、爺様。
何時母上やヴィンセント子爵家を頼らなければいけなくなるか分からない。
老練な爺様の外交術を信じているからな。
俺が今一番考えなければいけないのは、エクセター侯爵の事だからな」
「分かった、争うことなく皇国貴族令嬢との縁談は壊して見せる。
ハリー殿は安心してエクセター侯爵の事だけ考えていてくれ」
春になって山の雪が解けたら、エクセター侯爵はクレイヴェン伯爵軍と一緒に攻めてくるのだろう。
問題はトリムレストン子爵家の軍勢かそれに従うか、好機と考えてエクセター侯爵に叛旗を翻すかだ。
それによって俺の狙う相手が変わってくる。
一番強敵のエクセター侯爵家を一番最初に叩き潰すか、それとも属臣となっているトリムレストン子爵家を攻めて領地を奪うか。
それとも、最初から狙っていた、もっとも弱くて領地が富をもたらしてくれる海に接している、クレイヴェン伯爵家を攻め滅ぼすかだ。
選択を間違えると、死なせなくていい家臣領民を死なせてしまう事になる。
「ハリー殿、国王が選帝侯家から正室を迎えたが、カンリフ騎士家は王家と王国を存続させる気なのか」
爺様が不思議そうに聞いてくるが、俺に聞くなよ。
カンリフ騎士家との繋がりは爺様に任せたのだ。
知りたいのなら、俺に聞かずにカンリフ騎士家のルーカスに直接聞けばいいのだ。
まあ、今は周囲をエクセター侯爵軍に厳しく封鎖されているから、無理だけど。
俺には国王の結婚よりも、エクセター侯爵軍の方が気になるのだ。
だが、情報の共有はとても大切だから、影衆が調べてくれたことと、そこから俺が導き出した予測を話しておかなければいけないな。
「恐らくだが、カンリフ騎士家は、王国貴族はもちろん、多くの貴族士族に反抗されたのだろう。
味方になってくれる、自分達のやっている事を理解してくれる。
そう思っていた、自分達と同じように、主君である王国貴族を滅ぼした士族にまで、反抗され続けたのだろう。
カンリフ騎士家が、王家と同じ一族の三大宰相家や六公爵家だったら、王国貴族も士族もあれほどまでに反抗しなかっただろう。
いや、せめて侯爵家や伯爵家だったら、新たな王家となれただろう。
だがカンリフ騎士家は、主君である伯爵家を滅ぼして地方を支配した。
三大宰相家の分家である伯爵家を滅ぼして、その正室を自分の妻にした。
やってきた事があまりにも露骨で下劣過ぎた」
「いや、ハリー殿、それをやったのは、ルーカス殿ではなく弟のイーサンだ」
「俺や爺様は、公平にカンリフ騎士家を見ることができる。
だが王国貴族や士族は、一族や家臣がやった事もカンリフ騎士家がやった事だと思い、ルーカス殿を嫌い非難する材料にするのだ。
まあ、自分ができない事をやっている、ルーカス殿への妬み嫉みが本当に原因だが、そのような事を正直に口にする奴はおらんさ」
「なるほど、それを感じて、自ら王国を立てる事を諦めたか」
「ただ、完全に諦めたかどうかは分からないぞ。
まずは傀儡にした国王から爵位を手に入れるだろう。
カンリフ騎士家が支配する首都で暮らしている以上、ルーカス殿の叙爵願を拒む事などできないから、ルーカス殿達は王国貴族になる。
俺と同じ手を使って、皇国貴族にも叙爵されるだろう。
もう既に、主流派から疎外された選帝侯家の姫を弟の正室に迎えているのだ。
二代三代と時間をかけて、皇家と王家の外戚となり、皇国と王国の両方を支配して、都合のいい方を残す事もできる。
皇帝陛下を操り、王家を滅ぼして新たな王家を立てる事もできる」
「確かに、二代三代をかけてやるのなら、新王国の建国も可能だろう。
カンリフ騎士家ほどの戦力と富を持つ家が、時間をかけて王家を潰すと決意したら、防ぐことは難しいだろうな」
「だが選帝侯家等の皇国貴族にも、気概のある奴がいるようだ。
為す術もなく皇帝陛下をカンリフ騎士家の傀儡にするのは嫌なのだろう。
あるいは、忠義の為ではなく、自分の権力や名誉を護るためかもしれない。
だがそのどちらであろうと構わない。
王家に娘を送って、カンリフ騎士家と対抗しようとする選帝侯家があるのだ」
「なるほど、今皇国で主流派となっている選帝侯家が、カンリフ騎士家に娘を送り込んだ反主流派に対抗しようとしているのだな」
「ああ、何もしないで放置していたら、何時排除されるか分からないからな。
王家と手を組むことで、反カンリフ騎士家同盟を作るつもりだろう。
自分達が表にでるのは危険だから、国王を表に立ててな」
「なんと、国王はカンリフ騎士家の傀儡にされているだけではなく、選帝侯家の手先にもされているのか、選帝侯家とは恐ろしいものだな」
「ああ、今残っている選帝侯家は四家だが、どこも油断ならない毒虫だ。
爺様も決して気を許さず、母上が持ってくる、皇国貴族令嬢の嫁入り話を、上手く断ってくれよ」
「分かった、今無理にハリー殿の嫁を決めなくても、縁を結びたがっている王国貴族は山ほどいる、面倒な皇国貴族令嬢と無理に縁を結ぶ必要はない」
「だからと言って、母上と争わないでくれよ、爺様。
何時母上やヴィンセント子爵家を頼らなければいけなくなるか分からない。
老練な爺様の外交術を信じているからな。
俺が今一番考えなければいけないのは、エクセター侯爵の事だからな」
「分かった、争うことなく皇国貴族令嬢との縁談は壊して見せる。
ハリー殿は安心してエクセター侯爵の事だけ考えていてくれ」
春になって山の雪が解けたら、エクセター侯爵はクレイヴェン伯爵軍と一緒に攻めてくるのだろう。
問題はトリムレストン子爵家の軍勢かそれに従うか、好機と考えてエクセター侯爵に叛旗を翻すかだ。
それによって俺の狙う相手が変わってくる。
一番強敵のエクセター侯爵家を一番最初に叩き潰すか、それとも属臣となっているトリムレストン子爵家を攻めて領地を奪うか。
それとも、最初から狙っていた、もっとも弱くて領地が富をもたらしてくれる海に接している、クレイヴェン伯爵家を攻め滅ぼすかだ。
選択を間違えると、死なせなくていい家臣領民を死なせてしまう事になる。
158
あなたにおすすめの小説
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
【完結】パパ、私は犯人じゃないよ ~処刑予定の私、冷徹公爵(パパ)に溺愛されるまで~
チャビューヘ
ファンタジー
※タイトル変更しました。
「掃除(処分)しろ」と私を捨てた冷徹な父。生き残るために「心を無」にして媚びを売ったら。
「……お前の声だけが、うるさくない」
心の声が聞こえるパパと、それを知らずに生存戦略を練る娘の物語。
-----
感想送っていただいている皆様へ
たくさんの嬉しい言葉や厳しい意見も届いており一つ一つがすごく嬉しいのと頑張ろうと感じています。ご意見を元に修正必要な部分は随時更新していきます。
成長のため感想欄を閉じませんが公開はする予定ありません。ですが必ず全て目を通しています。拙作にお時間を頂きありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
新作
【あやかしたちのとまり木の日常】
連載開始しました。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる