異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全

文字の大きさ
78 / 94
第一章

第77話:水に落ちた犬

しおりを挟む
 皇紀2223年・王歴227年・早春・ロスリン城

 俺は外交交渉に関しては、カンリフ一族に一切の容赦をしなかった。
 戦争にする気は全くなのだが、落ち目になった者は徹底的に叩いておいて、今後二度と逆らわないようにしておくべきだという者がいるのだ。
 それでは激しい恨みを買うだけなのだが、それが分からない者が多い。
 まあ、一族衆や譜代衆の気持ちが分からない訳ではない。
 どれほど真心を持って温情を与えても、それを踏みにじる者がいる。
 カンリフ一族がそういう恩知らずではないと言いきれないのだ。

 カンリフ一族とは直接刃を交えたわけではないが、形だけ戦争をした。
 最初の和平交渉では、当初は俺とカンリフ公爵の弟ライリーとの会談だった。
 これは格から言えばカンリフ一族の方が上の立場という事になる。
 俺が皇国名誉侯爵の立場で、ライリーが王国侯爵の立場だった。
 これは爵位の格から言えば同格の立場になる。
 会談の場所は、俺の領地にライリーが来て行われた。
 会談場所の設定では、俺が格上ということになる。
 三つの立場を複合させる事で、互いの立場を同格にしての和平交渉だった。

 だが二度目の交渉からは、俺の祖父だが隠居している爺様と当主の弟で現役の侯爵が交渉するので、交渉相手の格から言えば俺達の方が格上となっている。
 侯爵のライリーが、爵位のない隠居という、本来なら格下の相手と対等の交渉をしなければいけなくなっている。
 しかも会談場所である我が本城にわざわざ来なければいけない。
 この状況を知れば、俺の方がカンリフ公爵よりも格上で、戦争の方も俺が勝ったと思うだろう。

「御隠居殿、エレンバラ皇国名誉侯爵に領地を割譲する事だけはできません」

「フリーク侯爵閣下、それくらいの事は隠居した爺でもわかっていますよ。
 エレンバラ皇国名誉侯爵もそれは分かっています。
 ただエレンバラ皇国名誉侯爵は、皇都付近で戦を起こした事で、皇帝陛下や皇国貴族の方々に御心痛をおかけしたことを、詫びて欲しいと言っているだけです。
 なにも万余の領地を皇帝陛下や皇国貴族の方々に割譲しろとは言っていません。
 皇帝陛下に数千人、皇族の方々に数百人、皇国貴族の方々に数十人。
 それくらいの領地を割譲していただければいいのですよ」

「隠居殿、それがとても厳しいのですよ。
 首都地方の土地は長年の争いで所有者がはっきりしないのです。
 我らが皇帝陛下や皇族方の領地だと言っても、今支配している皇国貴族や騎士、教会の連中が言う事を聞かないのです。
 遠方の土地を割譲したとしても、周囲の貴族や騎士、教会の連中が何時奪うか分かりませんので、責任が取れないのです」

「それは困りましたね、それで王国を差配している公爵と言えるのですか。
 教会だけでなく、配下の貴族や士族すら管理できず、皇帝陛下の御領地すら護れなくて、よく王国の宰相だと言えますね。
 だったらどうです、皇都地方の支配をエレンバラ皇国名誉侯爵に委ねては。
 エレンバラ皇国名誉侯爵ならば、どれほど戦闘的な教会であろうと、忠誠心の欠片もない野犬のような貴族や騎士であろうと、皇帝陛下の御領地を横領するような輩は、一族皆殺しにしてみせますよ」

「お待ちいただきたい、もうしばし、もうしばらくだけお待ちいただきたい。
 必ず、必ず皇帝陛下に割譲する領地を選んでみせます。
 どうしても領地を割譲できない時には、年々支援の金と穀物を献上すると魔術誓約をさせていただきます。
 ですから、今暫く御待ち頂きたい」

「フリーク侯爵閣下にそこまで言われては、我が方としても待たしていただくしかないですが、本当にいのですか。
 エレンバラ皇国名誉侯爵が集めた情報では、がら空きのアースキン地方とフリーク侯爵閣下のマッカイ地方を狙っている勢力がありますよ」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

処理中です...