91 / 94
第一章
第90話:哀願
しおりを挟む
皇紀2223年・王歴227年・初秋・キンロス地方
「エレンバラ侯爵殿、頼む、この通りだ、この通り頭を下げて頼む。
ライアンを助けてくれ、ライアンを助けてくれたら全てを渡す。
天下も、カンリフ家も、何もかもエレンバラ侯爵殿に渡す。
だから頼む、ライアンに竜薬を、エリクサーを与えてやってくれ」
目の前に形振り構わず土下座するカンリフ公爵がいる。
たった一人の息子、智勇兼備の名将と称えられる嫡男、ライアンが死にかけているからこその狂乱だが、その言葉を鵜吞みにはできない。
ライアンを助けた途端に態度を豹変する事が考えられる。
直ぐには態度を変えなくても、機会をとらえて牙をむく可能性がある。
何より問題なのは、三人の弟達と甥っ子達だ。
彼らは一度、目の前にカンリフ一族の頭領の地位がぶら下げられたのだ。
端的に言えば、天下の主の地位が手を伸ばせば届く場所に有ったのだ。
ライアンが確実に死ぬと思って、陰で激しい後継者争いをしていた事だろう。
俺がライアンを助けると言う事は、彼らの恨みを買うと言う事だ。
表情を取り繕っているが、俺に断れと願っているのが読み取れる。
一度欲望の火がついてしまったら、もう後戻りはできないだろう。
だから俺が助けたとしても、ライアンは親族から狙われる事になる。
「エレンバラ侯爵殿、ライアンを助けてくれるのなら、忠誠を誓う。
儂だけでなく、ライアンにも忠誠を誓わせる。
いや、命さえ助けてくれるのなら、儂もライアンも隠居する。
カンリフ公爵家の家督はアルロに継がせる。
エレンバラ侯爵殿の従弟であるアルロにカンリフ家を継がせるから、どうかライアンを助けてやってくれ、命だけは助けてやってくれ、この通りだ、頼む」
子供を助けるためなら、ここまで形振り構わず頭を下げられるカンリフ公爵は尊敬に値すると思う。
義務感や正義感だけで人助けをしている俺とは全然違う人種だ。
前世では、カンリフ公爵のような人間に生まれたかったと心から思ったものだ。
友人にはいたが、現実に近くにいると、とても面倒くさくて迷惑な奴だった。
さて、どうしたものだろうな。
自分が生き残る為だけではなく、天下万民にために働くときめたばかりだ。
安定した国にして、百年は内戦を起こさないようにしようと思えば、敵対する可能性のある有力貴族は全て潰しておくべきだ。
一番簡単なのは、ここでライアンを見殺しにして、カンリフ一族内で後継者争いをさせる事だ。
散々殺し合わせた後で、アルロが生き残っていたら支援して、あまり大きくない地方の領主にするのが一番好いと思う。
だが、その方法を使ったら、今カンリフ一族が支配している地方は、貴族や騎士や兵士だけでなく、老若男女問わず多くの民が戦に巻き込まれて死ぬ。
後世に悪名を残すのは平気だが、死んだ後で祖母に顔向けできないよな。
できるだけ民を巻き込むことなく、後世の争乱も生まずに、ライアンを助ける方法があれば理想的だが、そんな方法があるのかね。
「エレンバラ侯爵殿、頼む、この通りだ、この通り頭を下げて頼む。
ライアンを助けてくれ、ライアンを助けてくれたら全てを渡す。
天下も、カンリフ家も、何もかもエレンバラ侯爵殿に渡す。
だから頼む、ライアンに竜薬を、エリクサーを与えてやってくれ」
目の前に形振り構わず土下座するカンリフ公爵がいる。
たった一人の息子、智勇兼備の名将と称えられる嫡男、ライアンが死にかけているからこその狂乱だが、その言葉を鵜吞みにはできない。
ライアンを助けた途端に態度を豹変する事が考えられる。
直ぐには態度を変えなくても、機会をとらえて牙をむく可能性がある。
何より問題なのは、三人の弟達と甥っ子達だ。
彼らは一度、目の前にカンリフ一族の頭領の地位がぶら下げられたのだ。
端的に言えば、天下の主の地位が手を伸ばせば届く場所に有ったのだ。
ライアンが確実に死ぬと思って、陰で激しい後継者争いをしていた事だろう。
俺がライアンを助けると言う事は、彼らの恨みを買うと言う事だ。
表情を取り繕っているが、俺に断れと願っているのが読み取れる。
一度欲望の火がついてしまったら、もう後戻りはできないだろう。
だから俺が助けたとしても、ライアンは親族から狙われる事になる。
「エレンバラ侯爵殿、ライアンを助けてくれるのなら、忠誠を誓う。
儂だけでなく、ライアンにも忠誠を誓わせる。
いや、命さえ助けてくれるのなら、儂もライアンも隠居する。
カンリフ公爵家の家督はアルロに継がせる。
エレンバラ侯爵殿の従弟であるアルロにカンリフ家を継がせるから、どうかライアンを助けてやってくれ、命だけは助けてやってくれ、この通りだ、頼む」
子供を助けるためなら、ここまで形振り構わず頭を下げられるカンリフ公爵は尊敬に値すると思う。
義務感や正義感だけで人助けをしている俺とは全然違う人種だ。
前世では、カンリフ公爵のような人間に生まれたかったと心から思ったものだ。
友人にはいたが、現実に近くにいると、とても面倒くさくて迷惑な奴だった。
さて、どうしたものだろうな。
自分が生き残る為だけではなく、天下万民にために働くときめたばかりだ。
安定した国にして、百年は内戦を起こさないようにしようと思えば、敵対する可能性のある有力貴族は全て潰しておくべきだ。
一番簡単なのは、ここでライアンを見殺しにして、カンリフ一族内で後継者争いをさせる事だ。
散々殺し合わせた後で、アルロが生き残っていたら支援して、あまり大きくない地方の領主にするのが一番好いと思う。
だが、その方法を使ったら、今カンリフ一族が支配している地方は、貴族や騎士や兵士だけでなく、老若男女問わず多くの民が戦に巻き込まれて死ぬ。
後世に悪名を残すのは平気だが、死んだ後で祖母に顔向けできないよな。
できるだけ民を巻き込むことなく、後世の争乱も生まずに、ライアンを助ける方法があれば理想的だが、そんな方法があるのかね。
128
あなたにおすすめの小説
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
新作
【あやかしたちのとまり木の日常】
連載開始しました。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる