幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。

克全

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蝦夷地開拓

蝦夷加役の現状二

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「主殿頭殿、大切な蝦夷地の防備を外様に任せるとは、一体どう言う事だ」
「大凶作で苦しむ東国諸藩を助けるためと、蝦夷地の厳しい寒さに耐えるには、同じく雪深い東国諸藩が適任と考えただけでございます」
「しかし、しかしだ。北辺を守る大切な御役目ではないか。親藩、いや、御三家が参加しないでどうするのだ」
「それは、水戸徳川家が、オロシャとの合戦で先陣を務めて下さると言う事ですか」
「如何にも。我が藩士は異国が相手でも臆するモノではない」
「それは頼もしい御言葉なのでございますが、水戸徳川家は定府の御家柄で、水戸徳川家の兵力を御府内から遠ざける訳には参りません」
「うぅぅむ。そこを何とかならぬか。三十五万石全てとは言わぬ。半数なりとも役目に就けぬか」
「御引受けしたいのですが、紀州家からも御役願が出ておりまして、私の一存では返事できないのです」
「なに、紀州も役目願を出しておるのか。もしや、尾州まで役目を願い出たりしておらんだろうな」
「出しておられます」
「何だと。紀州は西国大名に備える役目があり、尾州は東海道を守る役目があるではないか」
「その通りではございますが、紀州様も尾州様も、御三家の名誉にかけて、オロシャとの合戦では先陣を賜りたいと、熱心に運動されておりまして」
「それは余も同じだ。オロシャとの先陣は水戸家こそ相応しい」
「しかしながら、出島のカピタンの話では、オロシャは南蛮でも有数の大国だそうです」
「何だと」
「恐れながら、水戸様の兵数では厳しいと思われます」
「大丈夫だ。水戸徳川三十五万石の名誉にかけて、先陣を務めて見せる」
「ですがそれでは、江戸城後詰の大切な御役目が疎かになるのではありませんか」
「うぅぅむ」
「ではこうして頂けますか」
「何じゃ、何か方法があるのか」
「はい。先ずは江戸城後詰を務める軍役帳を出して頂きます」
「うむ」
「その上で、軍役帳に記載されていない、隠居や部屋住み、郷士を活用して蝦夷加役を務める軍役帳を出して頂きます」
「おお、それならば、三十五万石の軍役を蝦夷に送ってよいのだな」
「両方の軍役を定数通り務めて頂けるのなら、上様に推薦したしましょう」
「分かった。出来るだけ早く作らせる」
 田沼意次は、御三家と福井藩に連なる親藩を統制したかった。
 特に尊王の考えが強い水戸藩は、幕府の統制が及ぶようにしたかった。
 更に言えば、幕府の軍政を改革する手本として、実戦を経験させたかった。
 本当は幕府軍を投入したかったが、幕府が大敗してしまったら、また戦国の世に戻ってしまうかもしれない。
 幕府は強くなければいけなかった。

「第二次蝦夷加役」
水戸藩:三十五万石  :占守島
高松藩:十二万石   :占守島
守山藩:二万石    :占守島
府中藩:二万石    :占守島
宍戸藩:一万石    :占守島
紀州藩:五十五万五千石:幌筵島
西条藩:三万石    :幌筵島
尾張藩:六十一万九千石:黒石島
高須藩:三万石    :黒石島
福井藩:三十万石   :捨子古丹島
糸魚川藩:一万石   :越渇磨島
津山藩:五万石    :春牟古丹島
松江藩:十八万六千石 :阿頼度島 
広瀬藩:三万石    :阿頼度島
母里藩:一万石    :阿頼度島
松江新田藩:一万石  :阿頼度島
川越藩:十五万石   :磨勘留島
明石藩:六万石    :松輪島
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