結婚式の日に婚約者を勇者に奪われた間抜けな王太子です。

克全

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第一章

第48話:驚愕・レイラ第三皇女視点

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 私は、いえ、皇国中の人間が、顎が外れそうになるくらい驚きました。
 リカルド王太子からは、護衛として一個騎士団と補給隊を送ると聞いていました。
 ところが、実際に皇国に現れたのは、十万を超える人間です。
 国境の警備隊が入国を禁止して、驚き慌てて報告してきました。
 愚かな重臣達が処分される前なら、リカルド王太子が攻め込んできたと大騒ぎする者が数多くいた事でしょう。

「いったい何事が起ったのでございますか、皇帝陛下」

「使者からの報告では、義勇兵だという事だ」

「義勇兵でございますか、あの、今回は私を護衛するためにリカルド王太子は騎士団を派遣されたのですよね。
 その護衛の役目と一緒に、徴募の役目も与えられていたというのですか」

 今回の結婚が政略によるものだという事は、当人である私が誰よりも一番分かっている心算でしたが、まさかここまで扱いが悪いとは思いませんでした。
 これでは主任務が義勇兵の募集で、私の護衛がついでのように見えます。
 いえ、本当についでなのかもしれません。
 だって、普通は男性側が護衛の兵力を派遣したりはしません、嫁入りする側が護衛の兵力をつけるだけです。
 でもこれでは、騎士団を護衛に派遣してもらえると聞いて、少々心ときめいた私が馬鹿みたいです。

「その件につきましては、護衛騎士団長のアルメニック近衛騎士隊長から話を聞いておりますので、説明させていただきます」

 近衛騎士隊長が護衛騎士団の団長を務めているとう事は、正式な騎士団ではなく臨時編成した騎士団という事ですか。
 本国で魔王軍と激しい戦闘を繰り返している上に、ウェルズリー王国と戦い併合した直後ですから、兵力に余裕がないのは分かります。
 分かりますし、理解もしますが、哀しく思ってしまいます。
 いえ、結構腹が立ってきましたわ。
 
「そうか、このような状況は戦争を仕掛けてきたと思われても仕方がない行為だ。
 また皇国や皇室を馬鹿にした行為ともとれる。
 朕は寛大だから直ぐに開戦などはしないが、納得できる説明は欲しいぞ」

 皇帝陛下も内心では結構本気で怒られています。

「はい、今回の件は、魔王軍遊撃隊の跳梁跋扈で苦しむ民に心を痛められたリカルド王太子殿下が、民を想って行われた事だそうでございます。
 愚かで身勝手な王侯貴族の行いの結果、多くの民が明日にも餓死するほど追い込まれており、一日でも早く救いの手を差し伸べようとなされた結果だそうです。
 幸いフィフス王国は、リカルド王太子殿下の魔術で食糧が豊富にあるそうです。
 ただ最近は交易のための隊商の派遣すら認めない国も多く、正統な理由なく兵力を他国に入れる事もできず、歯痒い思いをされていたそうでございます。
 幸いにしてレイラ皇女殿下との婚儀が整い、皇帝陛下の寛大な御心で正々堂々と騎士団を派遣することができるようになり、莫大な食糧を運びながら義勇兵として飢えた民を助けることができたそうでございます」

 皇帝陛下が、打ちひしがれたような表情をされています。
 多分、私も同じような表情をしている事でしょう。
 私達が自分達に対する礼儀や、身勝手な感情に囚われている時に、リカルド王太子は民を救う事だけを考えていた。
 普段民のためなどと口にして重臣達を処分していたのに、リカルド王太子に比べれば何もしていないのも同じだった。

 愛する女性と子供を哀しませることになると分かっていて、私を正室に迎えるのも、皇国まで堂々と兵力を送り、往復の間にできるだけ多くの民を救うため。
 リカルド王太子のお考えになられている政略結婚に比べて、私や皇室の考えていた政略結婚の、何と矮小で身勝手なことか。
 私は、恥じいって小さくなるべきなのでしょうか。
 それとも、愚かで身勝手な皇女として、怒りをぶつけるべきなのでしょうか。

「……そうか、リカルド王太子の慈愛の心がよく分かり、そのような者が朕の婿になる事を心から嬉しく思う、そうアルメニック護衛騎士団長に伝えてくれ」
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