結婚式の日に婚約者を勇者に奪われた間抜けな王太子です。

克全

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第二章

第82話:魔王軍侵攻部隊

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 魔王軍が開けた穴を防ぐために進撃するリカルド王太子だったが、追い込まれた魔王軍の抵抗は熾烈を極めた。
 穴が狭い間は、四つ足で早く駆ける事のできる、体高の低いコボルトと魔狗と魔狼を主力にした、遊撃隊が大陸を荒らしまわっていた。

 だが穴が広がった今では、ゴブリンやオーク、ミノタウロスとリザードマンが続々と大陸に入り込んできていた。
 ゴブリン、オーク、ミノタウロス、リザードマンはそれぞれの種族に分かれて部隊を編制して、大陸北部の国を荒らしまわっていた。

 魔王軍遊撃隊は大陸南部から引き揚げて、大陸北部だけを荒らしまわっている。
 魔王軍遊撃隊の機動力と強さは、人間の軍では対応できない機動力だった。
 腐敗した貴族がほぼすべて粛清されたセント・ジオン皇国の騎士団ですら、奇襲を繰り返す魔王軍遊撃隊を捉えることができなかった。
 都市や村に襲撃してきた時に迎え討つので精一杯だった。

 中小の国では、村々を見捨てることで都市を守っていたが、それが通用したのは魔王軍遊撃隊までだった。
 それなりの城壁と城門しかない中小の都市では、ゴブリン、オーク、ミノタウロス、リザードマンの攻撃を防ぎきれなかった。

 ゴブリン軍団には数で圧倒された。
 ゴブリンを斃しても斃しても押し寄せてきて、最後には城壁をよじ登られた。

 オーク、ミノタウロスにはパワーで圧倒された。
 少々の城門はオークとミノタウロスの腕力で破壊されてしまうのだ。
 一旦城門を破壊されたら最後、怒涛の勢いで内部に入り込まれてしまう。

 リザードマンにもパワーで圧倒されたが、それは腕力ではなく尻尾力だった。
 リザードマンが振るう渾身の尻尾力は、オークやミノタウロスの腕力を超える破壊力があり、少々の城門なら一撃で破壊してしまう。

 堅固な城壁と城門を備えた都市や領都は、ゴブリン、オーク、ミノタウロス、リザードマンの軍団が連合して襲い掛かった。
 どれほど堅固な城壁や城門であろうと、死を全く恐れない魔王軍の大軍団の襲撃を前にしては、王や領主を護りきる事はできなかった。

 妊娠可能な女はゴブリン、オーク、ミノタウロスに襲われ、子供産む道具にされたが、それ以外の人間は食糧にされてしまう。
 飢えと性欲を満たすためなら、魔王軍は死を恐れないのだ。
 リカルド王太子に領内通過を許さなかったり、穴の封鎖を断った愚かな王侯貴族の判断が、大陸北部を生き地獄にしていた。

 リカルド王太子の進撃を阻もうとしたのは、そんなゴブリン、オーク、ミノタウロス、リザードマンの連合軍団だった。
 人間よりも弱いゴブリンの軍団が五十万、人間よりも強いオークとミノタウロスの軍団が十万、人間よりも遥かに強いリザードマンの軍勢が一万だった。
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