99 / 127
第三章
第99話:連続侵攻・リカルド視点
しおりを挟む
南部同盟の援軍に注意を払いつつサマセット王国に侵攻した。
ボークラーク王国の国境線近くから占領確保した。
生き残りの小さな村や街は簡単だった。
近づくだけで喜んで城門を開けて迎えてくれた。
皆飢えて餓死寸前だった。
問題は貴族士族の支配下にある都市や街だった。
臆病な貴族士族が逃げてくれれば楽だった。
だが意地を張って籠城された場所が問題だった。
無暗に攻め込んだら何の罪もない人々を巻き込んでしまう。
妻子を残して死にたくないから危険な事はしたくなかったが、将兵や無辜の民を無駄死にさせるわけにはいかない。
「我はフィフス王国王太子リカルドである。
圧政に苦しむ民を解放するためにやってきた。
我が打倒したいのは王侯貴族の義務を果たさない屑である。
関係のない民は巻き込まれないように家に隠れているんだ」
茶番だとは分かっていたが、理想の王太子を演じなければいけなかった。
だが恥じる事も照れることもない。
物心ついてからずっとやってきた事だ。
理想の王太子を演じて各国から支援を引き出し、戦う将兵を鼓舞する。
民が自暴自棄にならないように導く、自身が前線に出る事は許されない。
臆病なほど慎重に後方仕事をする、それが私の生き方だった。
前世の記憶と知識が蘇り、それを利用して力を得る事ができた。
だがそう簡単に生き方は変えられない。
それにどうやら前世の性格に引きずられているようだ。
力を得たのにあれほど焦れていた最前線で戦う事が怖くて仕方がない。
今までの自分とは違う考え方をするようになっている。
婚約者だったアセリカに裏切られた影響だとは思わないし思いたくない。
しかし今は勇気を振り絞って先陣をきるべきところだ。
魔法防御を展開すれば敵の攻撃を受ける事はない。
それが分かっていても怖くて仕方がない。
以前はこんな臆病な性格ではなかったと思うのだが、怖くなってしまっている。
それを恥じる事も無く、妻子の為に臆病になるのは当然だと思っている。
「殿下、密偵から連絡が届いております」
占領した都市の内城で次の侵攻先を相談している時に、側近の一人がやってきた。
南部同盟の動向を探らせている密偵の一人が戻ったようだ。
このままボークラーク王国の王都を目指すのか、それとも王都を放置して援軍にやってくる南部同盟軍を迎え討つのか、決めるには情報が必要だ。
自分の力を過信する事ができるのなら、一人でも敵援軍を壊滅させられる。
だがどうしてもそんな気にはなれない。
一番安全な策を選んでしまう。
そしてそれでいいのだと思っている。
「直ぐにこの場に連れて来てくれ。
いや、その前に栄養のつく飲み物を飲ませてやるのだ」
ボークラーク王国の国境線近くから占領確保した。
生き残りの小さな村や街は簡単だった。
近づくだけで喜んで城門を開けて迎えてくれた。
皆飢えて餓死寸前だった。
問題は貴族士族の支配下にある都市や街だった。
臆病な貴族士族が逃げてくれれば楽だった。
だが意地を張って籠城された場所が問題だった。
無暗に攻め込んだら何の罪もない人々を巻き込んでしまう。
妻子を残して死にたくないから危険な事はしたくなかったが、将兵や無辜の民を無駄死にさせるわけにはいかない。
「我はフィフス王国王太子リカルドである。
圧政に苦しむ民を解放するためにやってきた。
我が打倒したいのは王侯貴族の義務を果たさない屑である。
関係のない民は巻き込まれないように家に隠れているんだ」
茶番だとは分かっていたが、理想の王太子を演じなければいけなかった。
だが恥じる事も照れることもない。
物心ついてからずっとやってきた事だ。
理想の王太子を演じて各国から支援を引き出し、戦う将兵を鼓舞する。
民が自暴自棄にならないように導く、自身が前線に出る事は許されない。
臆病なほど慎重に後方仕事をする、それが私の生き方だった。
前世の記憶と知識が蘇り、それを利用して力を得る事ができた。
だがそう簡単に生き方は変えられない。
それにどうやら前世の性格に引きずられているようだ。
力を得たのにあれほど焦れていた最前線で戦う事が怖くて仕方がない。
今までの自分とは違う考え方をするようになっている。
婚約者だったアセリカに裏切られた影響だとは思わないし思いたくない。
しかし今は勇気を振り絞って先陣をきるべきところだ。
魔法防御を展開すれば敵の攻撃を受ける事はない。
それが分かっていても怖くて仕方がない。
以前はこんな臆病な性格ではなかったと思うのだが、怖くなってしまっている。
それを恥じる事も無く、妻子の為に臆病になるのは当然だと思っている。
「殿下、密偵から連絡が届いております」
占領した都市の内城で次の侵攻先を相談している時に、側近の一人がやってきた。
南部同盟の動向を探らせている密偵の一人が戻ったようだ。
このままボークラーク王国の王都を目指すのか、それとも王都を放置して援軍にやってくる南部同盟軍を迎え討つのか、決めるには情報が必要だ。
自分の力を過信する事ができるのなら、一人でも敵援軍を壊滅させられる。
だがどうしてもそんな気にはなれない。
一番安全な策を選んでしまう。
そしてそれでいいのだと思っている。
「直ぐにこの場に連れて来てくれ。
いや、その前に栄養のつく飲み物を飲ませてやるのだ」
1
あなたにおすすめの小説
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~
いとうヒンジ
ファンタジー
ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。
理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。
パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。
友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。
その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。
カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。
キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。
最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
「お前は用済みだ」役立たずの【地図製作者】と追放されたので、覚醒したチートスキルで最高の仲間と伝説のパーティーを結成することにした
黒崎隼人
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――役立たずの【地図製作者(マッパー)】として所属パーティーから無一文で追放された青年、レイン。死を覚悟した未開の地で、彼のスキルは【絶対領域把握(ワールド・マッピング)】へと覚醒する。
地形、魔物、隠された宝、そのすべてを瞬時に地図化し好きな場所へ転移する。それは世界そのものを掌に収めるに等しいチートスキルだった。
魔力制御が苦手な銀髪のエルフ美少女、誇りを失った獣人の凄腕鍛冶師。才能を活かせずにいた仲間たちと出会った時、レインの地図は彼らの未来を照らし出す最強のコンパスとなる。
これは、役立たずと罵られた一人の青年が最高の仲間と共に自らの居場所を見つけ、やがて伝説へと成り上がっていく冒険譚。
「さて、どこへ行こうか。俺たちの地図は、まだ真っ白だ」
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる