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第二章:出世
第16話:抜け駆け
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1626年3月9日:江戸城中奥:柳生左門友矩13歳
ぱーん!
「ひぃいいいいい、もっと、もっと強く叩いて!」
「本当にあなたという人は、寝所での約束すら守れないのですか?!」
ぱーん!
「ひぃいいいいい、きもちいい!」
「家臣に尻の穴を責められ、尻を叩かれて喜ぶとは!
それでも将軍ですか、上様!」
ぱーん!
「ごめんなさい、こんな出来損ないでごめんなさい!」
「悪いと思っているのなら、約束した事くらいは守ってください!」
ぱーん!
「ひぃいいいいい、まもります、まもりますから、もっと、もっとよ!」
「どこが守りますですか?!
ぜんぜん守っていないではありませんか!
金森殿を大名にするなど、全く聞いていませんよ!」
「それは……寝所で頼まれたから……」
ぱーん!
「ひぃいいいいい、痛い、気持ちい、もっと、もっとぶって!」
「無暗に加増しない、役職を与えない、皆の前で約束しましたよね?!」
「でも、それは、あの時集まった者達と堀田の事で、五郎八は別だし……」
「上様!」
ぱーん!
「ひぃいいいいい、ごめんなさい、ごめんなさい。
もっと、もっと強くぶって!」
参ったな、こんな言い訳をしてくるとは思わなかった。
それに、金森殿が抜け駆けをしてくるとも思わなかった。
上様の命令には唯々諾々と従う気弱な人間と思っていたのだが、意外と強かだ。
拙者達と堀田の間隙をついて一万石の領地を得て大名になる。
状況を見極める才覚もあれば、拙者達と堀田を出し抜く度胸もある。
金森殿への評価を変えなければいけない。
問題は、金森殿が第三の勢力となって漁夫の利を得る心算かどうかだ。
金森一族は本家が三万八千石の大名だし、大御所様の信頼も厚い。
他の兄弟も次兄四兄五兄は旗本だし、長兄は加賀前田家と昵懇だ。
金森一族は油断できるような軽い血縁ではない。
有能な譜代大名衆ほどではないが、無能な譜代大名よりは力がある。
問題は上様だけに忠誠心が有るか無いかだ。
拙者個人の忠誠は上様だけに捧げられている。
内心腹立たしく思っていても、忠誠を誓った以上しかたがない。
問題は父上や他の小姓達だ。
いったい何人が拙者と同じように上様だけに忠誠を誓っている?
徳川家に忠誠を誓い、大御所様や大御台所様の方を向いている小姓が何人いる?
上様と大御所様が争う事になった場合、幾人が最後まで上様に従う?
ぱーん!
「上様、もっとしっかりしていただかなければなりません!
このままでは何時寝首を掻かれるかわかりませんぞ?!
堀田が大御所様に寝返らないとは言い切れないのですぞ!」
ぱーん!
「ひぃいいいいい、わかっている、わかっているから、もっと、もっと痛くして!」
「何がもっと痛くしてですか!
心から忠誠を誓い、上様の事だけを考えている拙者達の願いも聞かず、立身出世だけが目的の者達の願いを聞くなど、愚かにも程がありますぞ!」
「違う、他の者達も余にだけ忠誠を誓ってくれているわ。
あ、いや、いや、いや、やめないで、やめちゃいや、つづけて!」
「何が他の者達も余にだけ忠誠を誓っているですか!
堀田や金森が上様にだけ忠誠を誓っている訳がないでしょう!
上様にはそのような事も分からないのですか?!」
「私には分かるの、二人とも私にだけ忠誠を誓ってくれているわ。
大丈夫、だから続けて、お願い、左門、おかしくなりそう!」
「そんな好い加減事を口にしないでください!
続けて欲しければ、ここで拙者に誓ってください。
拙者達や堀田だけでなく、他の者にも無暗に役を与えず領地も与えないと。
そう誓ってくださるのなら、続きをして差し上げます」
「やくそくする、約束するから、もっと強く深く激しくして!
裂けるくらい、強く深く、激しく痛くして!
してくれたら、もう誰にも役を与えないし領地も与えない。
だからお願い、早く続きをして、気がおかしくなっちゃう!」
ぱーん!
「ひぃいいいいい!」
「約束していただけたので、続きをして差し上げます。
絶対に約束を忘れないように、上様の身体に刻み込んで差し上げます。
いいですか、覚えていてくださいよ。
上様が約束を破られるような事があれば、堀田と金森を斬り殺して切腹します。
拙者の仲間達も、役目を辞して上様の側からいなくなります。
もう誰も上様を護りませんよ。
もしその時、大御所様と御台所様が動いて、駿河大納言様を将軍に据えようとしても、誰も上様の味方をしないかもしれませんよ!」
「いや、いや、いや、余を見捨てないで、お願い!
もう絶対に約束は破らないから!
隙を突くような真似はしないから!
だから余の事を見捨てないで、お願い、左門!」
ぱーん!
「ひぃいいいいい、もっと、もっと強く叩いて!」
「本当にあなたという人は、寝所での約束すら守れないのですか?!」
ぱーん!
「ひぃいいいいい、きもちいい!」
「家臣に尻の穴を責められ、尻を叩かれて喜ぶとは!
それでも将軍ですか、上様!」
ぱーん!
「ごめんなさい、こんな出来損ないでごめんなさい!」
「悪いと思っているのなら、約束した事くらいは守ってください!」
ぱーん!
「ひぃいいいいい、まもります、まもりますから、もっと、もっとよ!」
「どこが守りますですか?!
ぜんぜん守っていないではありませんか!
金森殿を大名にするなど、全く聞いていませんよ!」
「それは……寝所で頼まれたから……」
ぱーん!
「ひぃいいいいい、痛い、気持ちい、もっと、もっとぶって!」
「無暗に加増しない、役職を与えない、皆の前で約束しましたよね?!」
「でも、それは、あの時集まった者達と堀田の事で、五郎八は別だし……」
「上様!」
ぱーん!
「ひぃいいいいい、ごめんなさい、ごめんなさい。
もっと、もっと強くぶって!」
参ったな、こんな言い訳をしてくるとは思わなかった。
それに、金森殿が抜け駆けをしてくるとも思わなかった。
上様の命令には唯々諾々と従う気弱な人間と思っていたのだが、意外と強かだ。
拙者達と堀田の間隙をついて一万石の領地を得て大名になる。
状況を見極める才覚もあれば、拙者達と堀田を出し抜く度胸もある。
金森殿への評価を変えなければいけない。
問題は、金森殿が第三の勢力となって漁夫の利を得る心算かどうかだ。
金森一族は本家が三万八千石の大名だし、大御所様の信頼も厚い。
他の兄弟も次兄四兄五兄は旗本だし、長兄は加賀前田家と昵懇だ。
金森一族は油断できるような軽い血縁ではない。
有能な譜代大名衆ほどではないが、無能な譜代大名よりは力がある。
問題は上様だけに忠誠心が有るか無いかだ。
拙者個人の忠誠は上様だけに捧げられている。
内心腹立たしく思っていても、忠誠を誓った以上しかたがない。
問題は父上や他の小姓達だ。
いったい何人が拙者と同じように上様だけに忠誠を誓っている?
徳川家に忠誠を誓い、大御所様や大御台所様の方を向いている小姓が何人いる?
上様と大御所様が争う事になった場合、幾人が最後まで上様に従う?
ぱーん!
「上様、もっとしっかりしていただかなければなりません!
このままでは何時寝首を掻かれるかわかりませんぞ?!
堀田が大御所様に寝返らないとは言い切れないのですぞ!」
ぱーん!
「ひぃいいいいい、わかっている、わかっているから、もっと、もっと痛くして!」
「何がもっと痛くしてですか!
心から忠誠を誓い、上様の事だけを考えている拙者達の願いも聞かず、立身出世だけが目的の者達の願いを聞くなど、愚かにも程がありますぞ!」
「違う、他の者達も余にだけ忠誠を誓ってくれているわ。
あ、いや、いや、いや、やめないで、やめちゃいや、つづけて!」
「何が他の者達も余にだけ忠誠を誓っているですか!
堀田や金森が上様にだけ忠誠を誓っている訳がないでしょう!
上様にはそのような事も分からないのですか?!」
「私には分かるの、二人とも私にだけ忠誠を誓ってくれているわ。
大丈夫、だから続けて、お願い、左門、おかしくなりそう!」
「そんな好い加減事を口にしないでください!
続けて欲しければ、ここで拙者に誓ってください。
拙者達や堀田だけでなく、他の者にも無暗に役を与えず領地も与えないと。
そう誓ってくださるのなら、続きをして差し上げます」
「やくそくする、約束するから、もっと強く深く激しくして!
裂けるくらい、強く深く、激しく痛くして!
してくれたら、もう誰にも役を与えないし領地も与えない。
だからお願い、早く続きをして、気がおかしくなっちゃう!」
ぱーん!
「ひぃいいいいい!」
「約束していただけたので、続きをして差し上げます。
絶対に約束を忘れないように、上様の身体に刻み込んで差し上げます。
いいですか、覚えていてくださいよ。
上様が約束を破られるような事があれば、堀田と金森を斬り殺して切腹します。
拙者の仲間達も、役目を辞して上様の側からいなくなります。
もう誰も上様を護りませんよ。
もしその時、大御所様と御台所様が動いて、駿河大納言様を将軍に据えようとしても、誰も上様の味方をしないかもしれませんよ!」
「いや、いや、いや、余を見捨てないで、お願い!
もう絶対に約束は破らないから!
隙を突くような真似はしないから!
だから余の事を見捨てないで、お願い、左門!」
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