28 / 57
第二章:出世
第28話:松平丹後守
しおりを挟む
1626年4月6日:江戸松平丹後守上屋敷:柳生左門友矩13歳
「松平丹後守!
上様に対する謀叛の罪で捕らえる!」
三枝殿が、屋敷の奥深くに隠れていた松平丹後守を見つけ出して言い放たれた。
拙者が邪魔する者を悉く斬り捨ててここまできた。
屋敷の中は死屍累々だ。
「下がれ下郎!
大御所様の親任厚き余を謀叛人扱いしてただで済むと思っているのか?!」
「何の罪もない松平忠輝公を裏切り罠に嵌めた卑怯者が何を言う!
今回も私利私欲を満たすために上様を裏切り駿河大納言についたのであろう!
犬畜生にも劣る不忠者め!」
「お前達のような陰間に天下国家の何が分かる!
忠輝公の御蟄居を決められたのは大御所様だ。
大御所様に命じられて上使を務めたのは三弟だ。
忠輝公に仕えていたのは父と次弟だ
余は最初から最後まで大御所様に忠誠を誓っている」
「ほう、お前達親兄弟は、松平忠輝公を陥れた時は東照神君の意を借りたくせに、東照神君が後継者に定めた上様に謀叛するのか?
流石卑怯者は忠誠心を恥知らずに使う」
実際に忠輝公の流罪を決めたのは大御所様なのに、亡くなっておられた東照神君の遺命だと言って断行したのだな。
「黙れ陰間!
余は徳川家の忠臣として君側の奸を取り除こうとしただけだ」
「ほう、君側の奸ね。
大御所様が上様のために選ばれた小姓を君側の奸と言うか。
それは、大御所様を愚か者だと非難しているのだな」
「ち、違う、そんな事は申していない!
柳生の子倅が大御所様の目を欺くほどの妖童だっただけだ!」
「それが大御所様に人を見る目がないと非難しているのであろう。
これでよく分かった」
「何が分かったというのだ!?」
「今回の黒幕が大御所様ではないという事だ。
大御所様が黒幕なら、御自身が非難されるような事を理由にはされない。
大御所様を馬鹿にしている者、敬意を払っていない者が今回の黒幕だな。
お前はその方の力を得て、大御所様を蔑ろにしているのだ!」
「黙れ、黙れ、黙れ!
今回の件に黒幕などいない!
余が上様の事を想って君側の奸を取り除こうとしただけだ!」
「まあいい、今は好きに言っていろ。
上様に謀叛を企んだ者として、一族一門悉く捕らえ、老若男女を問わず地獄の拷問を繰り返して黒幕を白状させてくれる。
お前のような謀叛人を父に持った子供達が可哀想だ」
「おのれ卑怯者、女子供に手出しするなど、それでも武士か!」
「夜陰に乗じて、わずか五百石の旗本屋敷を四万石の大名が襲う。
宣戦布告もせずに騙し討ちにしようとする。
そのような卑怯下劣な者が、他人を非難するのか?
恥知らずにも程があるな」
「やかましい、陰間に礼を払う必要などないわ!」
「それは井伊家を馬鹿にしているのか?
藩祖井伊直政公が東照神君の寵童であられた事は有名だぞ?
この痴れ者が!
東照神君の御名をこれ以上貶めるなら、目の前で子供の指を斬り落とすぞ!」
「もはやこれまで、ぎゃ!」
拙者は素早く踏み込んで松平丹後守の右手を斬り飛ばした。
脇差に手をかけた右手の手首から先がぽろりと落ちた。
卑怯下劣な松平丹後守は自害して逃げようとした。
これから自分の所為で親兄弟、女房子供が拷問で苦しめられるというのにだ!
だがそう簡単に楽にさせたりはしない。
「ぎゃあああああ」
身分ある武士とは思えない、情けない悲鳴をあげて転げまわる。
このままでは血を流し過ぎて死んでしまう。
仕方がないので急いで押さえつけて右手を縛った。
「焼き鏝を用意しろ。
傷口を焼いて血を止めるのだ。
長生きさせる必要はない。
黒幕が誰なのか白状させられればいい」
「はっ!」
こういう事に慣れた裏柳生が素早く動いてくれる。
こんな時にも番士は全く役に立たない。
本来なら拙者ではなく番士が松平丹後守を捕らえなければいけないのにだ。
「三枝殿、これからどうされるのですか?」
「やりたくはないが、松平丹後守の妻妾と子供を捕らえなければならない。
その後の拷問を思うと胸が痛むよ」
「そうですね、できる事ならやりたくないですね。
どうしてもやらなければいけないのなら、手早く片付けたいですね」
「俺はこのような事に慣れていないのだ。
左門殿の手の者は色々と慣れているようだな。
申し訳ないが、任せてもいいだろうか?」
「いいですよ。
拙者も好きではありませんが、何事も経験ですから、教えてもらう事にします」
「そうか、そうだな、何事も経験だし、逃げる訳にはいかないな。
俺も同席させてもらって良いだろうか?」
「いいですよ、上様のために一緒に学びましょう」
「松平丹後守!
上様に対する謀叛の罪で捕らえる!」
三枝殿が、屋敷の奥深くに隠れていた松平丹後守を見つけ出して言い放たれた。
拙者が邪魔する者を悉く斬り捨ててここまできた。
屋敷の中は死屍累々だ。
「下がれ下郎!
大御所様の親任厚き余を謀叛人扱いしてただで済むと思っているのか?!」
「何の罪もない松平忠輝公を裏切り罠に嵌めた卑怯者が何を言う!
今回も私利私欲を満たすために上様を裏切り駿河大納言についたのであろう!
犬畜生にも劣る不忠者め!」
「お前達のような陰間に天下国家の何が分かる!
忠輝公の御蟄居を決められたのは大御所様だ。
大御所様に命じられて上使を務めたのは三弟だ。
忠輝公に仕えていたのは父と次弟だ
余は最初から最後まで大御所様に忠誠を誓っている」
「ほう、お前達親兄弟は、松平忠輝公を陥れた時は東照神君の意を借りたくせに、東照神君が後継者に定めた上様に謀叛するのか?
流石卑怯者は忠誠心を恥知らずに使う」
実際に忠輝公の流罪を決めたのは大御所様なのに、亡くなっておられた東照神君の遺命だと言って断行したのだな。
「黙れ陰間!
余は徳川家の忠臣として君側の奸を取り除こうとしただけだ」
「ほう、君側の奸ね。
大御所様が上様のために選ばれた小姓を君側の奸と言うか。
それは、大御所様を愚か者だと非難しているのだな」
「ち、違う、そんな事は申していない!
柳生の子倅が大御所様の目を欺くほどの妖童だっただけだ!」
「それが大御所様に人を見る目がないと非難しているのであろう。
これでよく分かった」
「何が分かったというのだ!?」
「今回の黒幕が大御所様ではないという事だ。
大御所様が黒幕なら、御自身が非難されるような事を理由にはされない。
大御所様を馬鹿にしている者、敬意を払っていない者が今回の黒幕だな。
お前はその方の力を得て、大御所様を蔑ろにしているのだ!」
「黙れ、黙れ、黙れ!
今回の件に黒幕などいない!
余が上様の事を想って君側の奸を取り除こうとしただけだ!」
「まあいい、今は好きに言っていろ。
上様に謀叛を企んだ者として、一族一門悉く捕らえ、老若男女を問わず地獄の拷問を繰り返して黒幕を白状させてくれる。
お前のような謀叛人を父に持った子供達が可哀想だ」
「おのれ卑怯者、女子供に手出しするなど、それでも武士か!」
「夜陰に乗じて、わずか五百石の旗本屋敷を四万石の大名が襲う。
宣戦布告もせずに騙し討ちにしようとする。
そのような卑怯下劣な者が、他人を非難するのか?
恥知らずにも程があるな」
「やかましい、陰間に礼を払う必要などないわ!」
「それは井伊家を馬鹿にしているのか?
藩祖井伊直政公が東照神君の寵童であられた事は有名だぞ?
この痴れ者が!
東照神君の御名をこれ以上貶めるなら、目の前で子供の指を斬り落とすぞ!」
「もはやこれまで、ぎゃ!」
拙者は素早く踏み込んで松平丹後守の右手を斬り飛ばした。
脇差に手をかけた右手の手首から先がぽろりと落ちた。
卑怯下劣な松平丹後守は自害して逃げようとした。
これから自分の所為で親兄弟、女房子供が拷問で苦しめられるというのにだ!
だがそう簡単に楽にさせたりはしない。
「ぎゃあああああ」
身分ある武士とは思えない、情けない悲鳴をあげて転げまわる。
このままでは血を流し過ぎて死んでしまう。
仕方がないので急いで押さえつけて右手を縛った。
「焼き鏝を用意しろ。
傷口を焼いて血を止めるのだ。
長生きさせる必要はない。
黒幕が誰なのか白状させられればいい」
「はっ!」
こういう事に慣れた裏柳生が素早く動いてくれる。
こんな時にも番士は全く役に立たない。
本来なら拙者ではなく番士が松平丹後守を捕らえなければいけないのにだ。
「三枝殿、これからどうされるのですか?」
「やりたくはないが、松平丹後守の妻妾と子供を捕らえなければならない。
その後の拷問を思うと胸が痛むよ」
「そうですね、できる事ならやりたくないですね。
どうしてもやらなければいけないのなら、手早く片付けたいですね」
「俺はこのような事に慣れていないのだ。
左門殿の手の者は色々と慣れているようだな。
申し訳ないが、任せてもいいだろうか?」
「いいですよ。
拙者も好きではありませんが、何事も経験ですから、教えてもらう事にします」
「そうか、そうだな、何事も経験だし、逃げる訳にはいかないな。
俺も同席させてもらって良いだろうか?」
「いいですよ、上様のために一緒に学びましょう」
0
あなたにおすすめの小説
悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る
桜城 寧
BL
【第1部完結しました。第2部更新予定です!】
処刑された記憶とともに、BLゲームの悪役会計に転生したことに気付いた主人公・カイル。
処刑されないために、チャラ男の仮面を被り、生徒会長に媚びを売り、能力を駆使して必死に立ち回る。
だが、愛された経験がない彼は、正しい人との距離感を知らない。
無意識の危うい言動は、生徒会長や攻略対象、さらには本来関わらないはずの人物たちまで惹きつけ、過剰な心配と執着、独占欲を向けられていく。
——ただ生き残りたいだけなのに。
気づけば彼は、逃げ場を失うほど深く、甘く囲われていた。
*カクヨム様でも同時掲載中です。
祖国に棄てられた少年は賢者に愛される
結衣可
BL
祖国に棄てられた少年――ユリアン。
彼は王家の反逆を疑われ、追放された身だと信じていた。
その真実は、前王の庶子。王位継承権を持ち、権力争いの渦中で邪魔者として葬られようとしていたのだった。
絶望の中、彼を救ったのは、森に隠棲する冷徹な賢者ヴァルター。
誰も寄せつけない彼が、なぜかユリアンを庇護し、結界に守られた森の家で共に過ごすことになるが、王都の陰謀は止まらず、幾度も追っ手が迫る。
棄てられた少年と、孤独な賢者。
陰謀に覆われた王国の中で二人が選ぶ道は――。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
とろけてまざる
ゆなな
BL
綾川雪也(ユキ)はオメガであるが発情抑制剤が良く効くタイプであったため上手に隠して帝都大学附属病院に小児科医として勤務していた。そこでアメリカからやってきた天才外科医だという永瀬和真と出会う。永瀬の前では今まで完全に効いていた抑制剤が全く効かなくて、ユキは初めてアルファを求めるオメガの熱を感じて狂おしく身を焦がす…一方どんなオメガにも心動かされることがなかった永瀬を狂わせるのもユキだけで──
表紙素材http://touch.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=55856941
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
青い炎
瑞原唯子
BL
今日、僕は同時にふたつの失恋をした——。
もともと叶うことのない想いだった。
にもかかわらず、胸の内で静かな激情の炎を燃やし続けてきた。
これからもこの想いを燻らせていくのだろう。
仲睦まじい二人を誰よりも近くで見守りながら。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる