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第二章

第53話:嘆願状

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 真田君達から手紙が届いた。
 最初は俺が贈った食材と調味料に対するお礼が書いてあった。
 大豆と塩と麦麹で作る麦味噌が一緒に届けられたのには狂喜乱舞した。
 真田君達の田舎である信州の味噌は米麹で作ったはずだが、この国には米がないから麦麹で作ってくれたのだろう。
 俺は麹の作り方が分からなかったから、再現したくてもできなかったのだ。

 有難かったのは、真田君達が麹の作り方を手紙に書いてくれていた事だ。
 これで自分で味噌を創る事ができる。
 米があれば色んな味噌を作れるのだが、今手に入るのは麦と大豆だけだ。
 まあ、麦なら小麦、大麦、ライ麦、燕麦が手に入るので、それぞれで味噌を試作してみて、味の違う味噌が作れれば料理に幅ができる。

 豆に豆麹を使って八丁味噌が作れたら、名古屋飯を再現できるかもしれないが、熟成するのに2年前後かかったはずだから、直ぐに食べるのは無理だ。
 魔術で促成させる事も可能だが、失敗して腐らせるのはもったい。
 残念だが、ここは時間をかけて作ることにする。
 などと考えながら読んでいると、とんでもない事が書いてあった。

 隣国がこの国に魔物を追いやるために、領民を囮にして魔物誘導しているという。
 どうしても許せないので、隣国に攻め込んで実行している領主をぶちのめしたいのだが、その後で魔物と飢えに苦しむ民を見捨てる事もできない。
 だからアーサー王にびぶちのめして追い出した貴族地の統治を頼みたいのだが、アーサー王にも他国の民を養うほどの食糧がないので、俺にアリステアを説得して更なる食糧支援をしてもらいたいと書いてあった。

 虫がよすぎるお願いだが、真田君達なら領主に苦しめられている民を見捨てられないだろう事は分かる。
 それに、何も考えず準備もせずに助けに行くのではなく、助け合た後の事も考えて、事前に俺に頼んできてくれたのも妙にうれしく感じてしまう。
 これもアーサー王が事前に考えていた事なら腹が立つが、どうなのだろうか。

 まあ、真田君達には個人的に恩義を感じているし、サクラに恥ずかしい生き方をする気もないから、食糧支援をする事はいいだろう。
 だが、どれほど酷い事をやっているとはいえ、相手は他国の貴族が。
 何の事前交渉もせずに攻め込んだら、国対国の戦争になる可能性がある。
 もしかしたら、コンラディン王国は最初から戦争がしたくて、開戦の口実を作るために民を魔物の囮にして、国境を超えさせたのかもしれないのだ。

 直ぐにアーサー王に隣国と交渉してもらわないといけないのだが、俺が表にでるのは嫌だし、伝令を送るにしても早馬でも時間がかかり過ぎる。
 アリステアに行ってもらうしかないのだが、それでは事が大きくなり過ぎるし、アリステアに依存するような国にはさせないと決めている。
 しかたがない、あれを使うしかないか。
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