よい異世界召喚に巻き込まれましたが、殺された後でした。

克全

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第二章

第70話:幕間12

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「なあ、一朗、もう俺達なんていらないんじゃねえか」

 槍の勇者本多勇星がうんざりしたような口調で話しかける。
 その気持ちは剣の勇者真田一朗も同じだった。
 いや、残る2人の勇者も同じ気持ちだった。
 召喚直後は無理矢理異世界に呼び出されて腹が立ったが、実際にこの国の苦境を知れば、勇者として戦わない訳にはいかなかった。
 
 覚悟を決めて戦いだせば、幼い頃から鍛錬させられてきた古武術が実戦でとても役に立つし、人助けをして感謝されるという遣り甲斐もあった。
 実際目に見えて強くなる実感もあり、張りのある日々だったのだが、今では竜が魔物を狩った後の雑魚を相手にするだけだ。
 遣り甲斐もなければ民から感謝される事も極端に減っている。
 王家や護衛隊の者達は、今までと同じように感謝して最上級のもてなしを続けてくれるが、無用の長物になっているのは明白だった。

「そうだな、竜がいてくれれば俺達がこの世界にいる必要はない。
 元の世界に戻してくれるように強く頼んでみよう」

「いや、こちらから頭を下げて頼む必要なんてねえよ。
 向こうが無理矢理こっちに連れてきたんだから、謝ってから帰すのは当然だろ」

「そうね、みなみも当然だと思うわ」

「私もそう思うは、一朗君。
 何も一朗君だけに交渉しろなんて言わないわ。
 私達4人揃って帰すように強く言えばいいのよ」

「待ってくれ、みんな。
 帰る方法を早く探せと言うのはいいよ。
 俺も早く帰りたいから同じ思いだよ。
 だけど俺達4人だけというのは賛成できないな。
 猫屋敷さんも一緒じゃないと帰れないよ」

「ああ、そうだったな、猫屋敷さんだけ残して帰るわけにはいかないな」

 本多勇星が猫屋敷を忘れていた事に、ばつの悪そうな表情をして答える。

「みなみもそう思う」

 霧隠みなみは平然とした表情で答える。

「そうね、忘れていたのは失礼ね。
 猫屋敷さんには食べ物の件でたくさんお世話になったものね」

 多少冷淡な所のある矢沢ゆりも心から反省していた。
 反省するくらい彼らは食事の面で苦しんでいたのだ。
 猫屋敷が贈って来てくれる食材とレシピにどれだけ助けられたことか。
 白米だけは再現できなかったが、パンや麺は再現してくれた。
 色んな味を楽しめる香草塩と香草味噌を開発してくれた。

 各種のパンと麺、香草塩と香草味噌を組み合わせる事で、料理の幅が無限に広がったのだ。
 ラーメンも塩と味噌を食べる事ができるようになった。
 贅沢にはなるが、味噌作りの時にできる少量の醤を集めれば、醤油ラーメンも再現できるのだが、少な過ぎて焼魚に全部使っていた。

 白飯は食べられないままだが、麦だけの麦飯は食べられるようになっていた。
 パンや麺だけではどうしても我慢できずに、白飯に比べればやや固めで粘りけも少なく独特の麦臭はあるものの、クジラのサエズリや魚によったら白飯よりも美味しく食べられる事もあった。
 魚介鍋の後に麦飯を入れて雑炊にしたらとても美味しかった。

「じゃあ今から4人で直談判に行くぞ」
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