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第1章
第4話:幼い子
1年目の春
金猿娘が戻ってきた。
家族と来ると言っていたから、両親を連れて来ると思っていた。
それなのに、一緒に来たのは同年齢の少女と4人の幼い子供たちだった。
その少女と幼子たちが、モモとリンゴが鈴なりになった樹を見て驚いている。
モモを知っている金猿娘もリンゴを見て驚いている。
「なんだよ、1時間もたっていないのに、リンゴがなっている?!」
「いや、神様からギフトをもらったと言っただろう?」
「いや、いや、いや、たった1時間で、何もない所に実らせるなんてありえない!
それも、よく見たらモモの樹でもリンゴの樹でもないじゃないか!
実が生らないはずの別の樹にモモやリンゴを実らせるなんて!
こんな凄いギフトなんて聞いた事も無い!」
「そうか、神様が大盤振る舞いしてくださったんだな」
「大盤振る舞いのひと言で片付けるな!」
「神様に文句があるのか?」
「……この件に関してはないが、結構ある」
この子たち、何か事情がありそうだな。
「やめなさい、神様にもご都合があるのです」
ギリギリ少女と言える見た目のシスターが間に入ってくれる。
ひと目で神に仕えていると分かるシスター服だ。
この世界のシスターが、十字架ではなく鉄製のモーニングスターを使って祈るのには、もの凄く驚いた。
戦うのか、この世界のシスターはモーニングスターを振り回して戦うのか?
来訪神様、俺は殺伐とした世界は苦手なんだ、やり直しを強く願う!
「リねえちゃん、モモ取らないの?」
幼い子が物欲しそうに言った。
「そうだな、他人のもらったギフトをうらやんでも腹を立ててもしかたがない。
なあ、あんた、約束通りモモをとっても良いか?」
「ダメよ、サ・リ。
大人の人、それも食べ物を分けてくださる親切な方をあんた呼ばわりしたら。
失礼な事を言って申しわけありません。
私は戦いの神に仕えるセイント・ジャンヌと申します。
この子は金猿獣人族のサ・リと申します。
このたびは貴重な食べ物を分けてくださり、心から感謝いたします」
ただのシスターではなかったのか!
セイントを名乗ると言う事は、神々から聖女のギフトを授かっている。
……知らないはずの知識がある、これも神様のギフトか?
産業や商売の成功に必要だから下さったのか?
本当にとんでもない大盤振る舞いだな。
「いえ、いえ、どうせ私では取れませんでした。
それと、呼び方は何でもいいじゃないですか。
約束していたのはモモですが、リンゴも取ってもらえますか?
モモは痛むのが早いですが、リンゴなら長持ちします。
ああ、手間はかかりますが、クルミもどうですか?
俺は高い所が苦手なんで取れないんです。
取って頂けると助かるのです」
「そういう事でしたら、よろこんで取らせていただきます」
「話は決まったな、だったら取るぞ、お前たちも手伝え」
「「「「「はい」」」」」
サ・リと同じ金猿族だと思える小さい子たちが、スルスルと巨木に登る。
籠一杯にモモを取り、片手と足だけで下りてくる。
俺の足元にモモを置いては、また直ぐに樹に登ってモモをとる。
セイント・ジャンヌだけは樹に登らず俺の側にいる。
そのセイント・ジャンヌがモモを2つの山に分ける。
俺の渡す分と自分たちが持って帰る分だろう。
幼い金猿の子が食べたそうにしているのが気になる。
「先に食べてしまっていいぞ。
持って帰った分だけだと足らなかったのだろう?」
俺の言葉に、幼い子たちが近くにいるセイント・ジャンヌを見る。
サ・リに聞いたら先にモモとリンゴを取れと言うのだろう。
セイント・ジャンヌの方が食べて良いと言うのだな。
「お言葉に甘えて食べさせていただきなさい。
サ・リは先にお腹一杯食べさせてもらっていますから、だいじょうぶですよ」
セイント・ジャンヌの言葉を聞いて、何か言いかけていたサ・リが黙った。
幼い子たちがお腹を空かせているのに、自分だけ先に食べたからだろう。
だが、俺はサ・リに悪気がなかったのを知っている。
自分がここでお腹一杯食べたら、持ち帰ったモモは全部幼い子に食べさせられる。
そういう優しい気持ちで先にお腹一杯食べたのだ。
たぶんだが、セイント・ジャンヌがサ・リの言葉を疑ったのだ。
取ったモモの半分をもらえる話が信じられなくて、明日の為に全部食べさせなかったのだろう。
いや、それだと幼い子たちがセイント・ジャンヌを見るのはおかしい。
セイント・ジャンヌが食べる量を制限しているなら、いつも食べて良いと言ってくれているサ・リの方を見るはずだ。
そうか、サ・リが良いと言っても、セイント・ジャンヌがダメと言ったら食べさせてもらえないから、決定権のある方を見たのか。
この子たちの指導者はセイント・ジャンヌなのだな。
幼い子たちが皮のままモモを食べている。
サ・リもそうだったが、金猿獣人族はモモの皮を気にしないようだ。
美味しそうに、幸せそうに食べる幼い子を見ていると父性本能がくすぐられる。
幼い子たちが食べている間も、サ・リは果物を集め続けている。
1度モモの樹から下りたサ・リが、リンゴの樹に登って取ってきた。
何も言わずに、持ち帰ったリンゴの半分を幼い子の前に置いてモモの樹に登った。
ぶっきらぼうだが、とても優しい子だ。
こんな良い子は幸せに暮らして欲しい。
俺に手伝える事は何でもしてあげよう。
セイント・ジャンヌと幼い子たちだけでここに来たのだ。
何か事情があるのは間違いない。
俺には武力が無いから、やってあげられるのは美味しい果物を作る事だけだ。
猿が1番好きな食べ物は何だった?
バナナのイメージが強いが、本当はサツマイモが1番好きだったはずだ。
果物は個体で好みが違ったはずだ。
できればサツマイモを作ってやりたいが、無からサツマイモを作れるか?
これまでの事を考えれば、どんな無理でもやれそうだ。
よく考えると、受粉を無視して果物が実り急成長している。
こんな非常識な事が現実になっているから大丈夫だろう。
「サツマイモだ、とても甘くておいしいサツマイモを今直ぐ作れ」
俺は地面に生えている雑草に手をつけて命じた。
イモでも何でもない、ただの雑草だ。
モモでもリンゴでもクルミでもない巨木に、命じたモノが実ったのだ。
雑草だって根性でサツマイモを作るだろう。
金猿娘が戻ってきた。
家族と来ると言っていたから、両親を連れて来ると思っていた。
それなのに、一緒に来たのは同年齢の少女と4人の幼い子供たちだった。
その少女と幼子たちが、モモとリンゴが鈴なりになった樹を見て驚いている。
モモを知っている金猿娘もリンゴを見て驚いている。
「なんだよ、1時間もたっていないのに、リンゴがなっている?!」
「いや、神様からギフトをもらったと言っただろう?」
「いや、いや、いや、たった1時間で、何もない所に実らせるなんてありえない!
それも、よく見たらモモの樹でもリンゴの樹でもないじゃないか!
実が生らないはずの別の樹にモモやリンゴを実らせるなんて!
こんな凄いギフトなんて聞いた事も無い!」
「そうか、神様が大盤振る舞いしてくださったんだな」
「大盤振る舞いのひと言で片付けるな!」
「神様に文句があるのか?」
「……この件に関してはないが、結構ある」
この子たち、何か事情がありそうだな。
「やめなさい、神様にもご都合があるのです」
ギリギリ少女と言える見た目のシスターが間に入ってくれる。
ひと目で神に仕えていると分かるシスター服だ。
この世界のシスターが、十字架ではなく鉄製のモーニングスターを使って祈るのには、もの凄く驚いた。
戦うのか、この世界のシスターはモーニングスターを振り回して戦うのか?
来訪神様、俺は殺伐とした世界は苦手なんだ、やり直しを強く願う!
「リねえちゃん、モモ取らないの?」
幼い子が物欲しそうに言った。
「そうだな、他人のもらったギフトをうらやんでも腹を立ててもしかたがない。
なあ、あんた、約束通りモモをとっても良いか?」
「ダメよ、サ・リ。
大人の人、それも食べ物を分けてくださる親切な方をあんた呼ばわりしたら。
失礼な事を言って申しわけありません。
私は戦いの神に仕えるセイント・ジャンヌと申します。
この子は金猿獣人族のサ・リと申します。
このたびは貴重な食べ物を分けてくださり、心から感謝いたします」
ただのシスターではなかったのか!
セイントを名乗ると言う事は、神々から聖女のギフトを授かっている。
……知らないはずの知識がある、これも神様のギフトか?
産業や商売の成功に必要だから下さったのか?
本当にとんでもない大盤振る舞いだな。
「いえ、いえ、どうせ私では取れませんでした。
それと、呼び方は何でもいいじゃないですか。
約束していたのはモモですが、リンゴも取ってもらえますか?
モモは痛むのが早いですが、リンゴなら長持ちします。
ああ、手間はかかりますが、クルミもどうですか?
俺は高い所が苦手なんで取れないんです。
取って頂けると助かるのです」
「そういう事でしたら、よろこんで取らせていただきます」
「話は決まったな、だったら取るぞ、お前たちも手伝え」
「「「「「はい」」」」」
サ・リと同じ金猿族だと思える小さい子たちが、スルスルと巨木に登る。
籠一杯にモモを取り、片手と足だけで下りてくる。
俺の足元にモモを置いては、また直ぐに樹に登ってモモをとる。
セイント・ジャンヌだけは樹に登らず俺の側にいる。
そのセイント・ジャンヌがモモを2つの山に分ける。
俺の渡す分と自分たちが持って帰る分だろう。
幼い金猿の子が食べたそうにしているのが気になる。
「先に食べてしまっていいぞ。
持って帰った分だけだと足らなかったのだろう?」
俺の言葉に、幼い子たちが近くにいるセイント・ジャンヌを見る。
サ・リに聞いたら先にモモとリンゴを取れと言うのだろう。
セイント・ジャンヌの方が食べて良いと言うのだな。
「お言葉に甘えて食べさせていただきなさい。
サ・リは先にお腹一杯食べさせてもらっていますから、だいじょうぶですよ」
セイント・ジャンヌの言葉を聞いて、何か言いかけていたサ・リが黙った。
幼い子たちがお腹を空かせているのに、自分だけ先に食べたからだろう。
だが、俺はサ・リに悪気がなかったのを知っている。
自分がここでお腹一杯食べたら、持ち帰ったモモは全部幼い子に食べさせられる。
そういう優しい気持ちで先にお腹一杯食べたのだ。
たぶんだが、セイント・ジャンヌがサ・リの言葉を疑ったのだ。
取ったモモの半分をもらえる話が信じられなくて、明日の為に全部食べさせなかったのだろう。
いや、それだと幼い子たちがセイント・ジャンヌを見るのはおかしい。
セイント・ジャンヌが食べる量を制限しているなら、いつも食べて良いと言ってくれているサ・リの方を見るはずだ。
そうか、サ・リが良いと言っても、セイント・ジャンヌがダメと言ったら食べさせてもらえないから、決定権のある方を見たのか。
この子たちの指導者はセイント・ジャンヌなのだな。
幼い子たちが皮のままモモを食べている。
サ・リもそうだったが、金猿獣人族はモモの皮を気にしないようだ。
美味しそうに、幸せそうに食べる幼い子を見ていると父性本能がくすぐられる。
幼い子たちが食べている間も、サ・リは果物を集め続けている。
1度モモの樹から下りたサ・リが、リンゴの樹に登って取ってきた。
何も言わずに、持ち帰ったリンゴの半分を幼い子の前に置いてモモの樹に登った。
ぶっきらぼうだが、とても優しい子だ。
こんな良い子は幸せに暮らして欲しい。
俺に手伝える事は何でもしてあげよう。
セイント・ジャンヌと幼い子たちだけでここに来たのだ。
何か事情があるのは間違いない。
俺には武力が無いから、やってあげられるのは美味しい果物を作る事だけだ。
猿が1番好きな食べ物は何だった?
バナナのイメージが強いが、本当はサツマイモが1番好きだったはずだ。
果物は個体で好みが違ったはずだ。
できればサツマイモを作ってやりたいが、無からサツマイモを作れるか?
これまでの事を考えれば、どんな無理でもやれそうだ。
よく考えると、受粉を無視して果物が実り急成長している。
こんな非常識な事が現実になっているから大丈夫だろう。
「サツマイモだ、とても甘くておいしいサツマイモを今直ぐ作れ」
俺は地面に生えている雑草に手をつけて命じた。
イモでも何でもない、ただの雑草だ。
モモでもリンゴでもクルミでもない巨木に、命じたモノが実ったのだ。
雑草だって根性でサツマイモを作るだろう。
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