来訪神に転生させてもらえました。石長姫には不老長寿、宇迦之御魂神には豊穣を授かりました。

克全

文字の大きさ
11 / 53
第1章

第11話:エンシェントドワーフ

しおりを挟む
 たっぷり塩を利かせたイノシシ肉はとても美味しかった!
 5日間サツマイモとナッツ、果物だけの食事だった。
 それだけに脂の乗ったイノシシ肉は美味しかった!

 ロースはもちろん、バラ肉やヘレ肉、モモ肉やウデ肉も美味しかった。
 だが、感動するくらい美味しかったのはホルモンだ。
 聖女ジャンヌが浄化魔術を使ったホルモンは、臭みが全く無く絶品だった!
 
 転生前には飲めなかったお酒が飲めるようになった。
 美味しい肉やナッツをお酒と一緒に食べる。
 憧れていた食生活が現実になった。

 300kgを超えるイノシシは1日では食べ切れない。
 食べるのが俺と聖女ジャンヌの2人だけだから特にそうだ。
 金猿獣人たちと妖精たちは、肉よりも果物やナッツの方が好きだ。

 300kgの7割が食べられるとして210kg
 1日2kg食べても100日かかる。

 聖女ジャンヌが氷魔術でイノシシ肉を保存してくれている。
 妖精たちが塩漬けしたイノシシ肉を燻製にしてくれた。
 熟成されたイノシシバラベーコンが待ち遠しい!

 各種のワイン、イノシシ肉、ナッツ、果物の3食を10日楽しんだ。
 食事を与えるだけでは、家事妖精を満足させられない。

 日本基準の果物だけでもよろこんでくれているが、約束したのは酒だ。
 よろこばせるだけでなく、満足してもらわないといけない。
 魔境で豊かな生活をするには、家事妖精の手助けが必要だから。

 俺はせっせと酒の原料になる果物を実らせた。
 ガサツな俺は、果物をそのまま酒樽に入れて発酵させていた。
 家事に高いプライドを持っている家事妖精たちは、余計な物をていねいに取る。

 彼らは酒の邪魔になる余計な物を全て取ってから酒樽に入れて発酵させた。
 新酒を試飲したが、これまでも美味かったが、比較にならない美味さだった!
 至高の酒、そう言っても過言ではない美味さだった!
 
 原料を発酵させる酵母は、アルコール度数が12パーセントまでは良く働く。
 12パーセントあたりから働きが悪くなる。
 18パーセントになると活動を停止する。

 俺は他ではなかなか造れない18パーセントの酒を造った。
 それがまたサ・リ、ジャンヌ、家事妖精たちによろこばれた。

「美味しい、美味しいうえに酒精も強い。
 もう二度と他のお酒では満足できないわ」

 サ・リがクルミやアーモンドを肴にワインを飲んでいる。
 果物を肴にするよりもナッツを肴にする方が好きなようだ。

「私もよ、このままここで暮らしても好い気がしているわ」

 ジャンヌは、俺と同じようにバラベーコンを肴にワインを飲んでいる。
 転生前の知識だと、バラベーコンにはビールの方が合うのかもしれない。
 でもサ・リとジャンヌはワインがあれば良いようだ。

 2人の中ではワインが高級品でエールが低級品なのだろうか?
 お酒が欲しくて家事をしている妖精たちもエールが欲しいとは言わない。

「誰か近づいてくる、凄く強い」

 昼食を楽しんでいると、家事妖精の1人が教えてくれた。

「食べられる獣なら私がお肉にしてあげる」

 ほろ酔いのジャンヌがモーニングスターを手につぶやく。
 どんな時にもモーニングスターを手放さないジャンヌは血の気が多いのか?
 いつの間にか俺の中では、聖女ではなく酒好きの戦士のイメージになっている。

「私のワインに手出しする奴は許さないわよ!」

「私も手を貸すわ、奇襲は得意なの」

 ジャンヌに続いてサ・リも戦うと言う。
 無言だが家事精霊たちも戦う気満々だ。

「俺はエンシェントドワーフのヴァルタルだ
 ここに美味しい酒があると聞いた、飲ませてくれるなら武具を造ってやる」

 見間違えようのない、ひと目でドワーフと分かる男が言った。
 戦いを挑むと思ったジャンヌが動かない。
 エンシェントドワーフが怖いのかな?

「エンシェントドワーフ、酒のためなら命も賭ける猛者。
 このお酒を飲んでみなさい」

 再起動したジャンヌが挑戦的だ!
 そんなに酒が大事なのか、もう絶対に聖女扱いしないからな!

 だが、酒好きなのは急に現れたエンシェントドワーフも同じだ。
 それにしても、酒のために命を賭けるなんて、転生前のドワーフ情報と同じだ。

 もしかして、スコットランドにも来訪神様が行っていたのか?
 この世界のドワーフをスコットランドに連れて行ったのか?
 それとも、スコットランドの人間をこの世界に連れて来た?

「うまい、とんでもなく美味い!
 2000年生きてきたが、こんな美味しい酒は初めて飲んだ。
 礼は言い値で払うから、ここにある酒を全部くれ」

「全部寄こせ、寝言は寝て言って!
 ここにいる精霊たちは、お酒が欲しくて住み込みで働いているの。
 1番安いお酒でも盃1杯金貨20枚よ。
 それでも全部払えるの?!」

「その気になれば永遠に生きられる、エンシェントドワーフをなめるな。
 酒樽100個でも200個でも……」

 エンシェントドワーフが壁一面に並ぶ酒樽を見て絶句した。

「分かったようね、酒樽100個200個なんて数じゃないのよ。
 1万個を超える酒樽があるの、それでも1杯金貨20枚で買えるの?」

「買えない訳ではないが、さっきから大量の酒が造られている気配がする」

「よく分かったわね、ここでは毎日新酒が造られているの。
 今あるお酒を全部買ったとしても、明日には同じだけの新酒ができるわ」

 ジャンヌ、それはいくら何でも言い過ぎた。
 確かに、もう100以上の巨木に名前がついている。
 中にはモモワイン1号とか、モモワインスーパーワンなんて名前の巨木もある。

 だがそれは、15日の間、朝から晩まで酒造りをがんばったからだ。
 酒を造る樽が足らなくなって、酒造り専門の巨木を何十も造ったからだ。

 それを全部売ってしまったら、さすがに1日では戻らない。
 収穫も酒造りも慣れたけれど、それでも7日はかかるだろう。

「……住み込みか、住み込みで働けば酒を飲ませてくれるのか?」

「エンシェントドワーフが全力で造った武具を対価に払うのでしたら、食事の時に好きなだけ飲んでもいいわ。
 試しにこのお酒を飲んでごらんなさい」

 聖女ジャンヌがそう言いながら差し出した酒は、モモワインだった。
 初めて飲んだ時に魅了されてしまったようだ。
 だが、モモワインは個性的過ぎると思う。

「造り手として1種の酒で評価されるのは嫌だ。
 ブドウで造ったワインの方が、他のワインと比べやすい。
 この赤ワインと白ワインも飲み比べてくれ」

 俺は、家事精霊に無理を言って皮を全部とり除いてもらった白ワインも勧めた。
 元になるブドウも、白ワイン用と念じて実らせた自信作だ。
 家事精霊も試飲してからよろこんで皮むきしてくれている。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~

夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力! 絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。 最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り! 追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...