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第1章
第12話:大魔境
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「大地よ、巨木が必要とする豊かな地となれ!」
俺が地面に手をついて命じると、凄まじい気配がやってきた。
空気から大地に何かが入っていくのが分かる。
地の底から力が湧き上がってくるのが分かる。
エンシェントドワーフのヴァルタルが来てから10日経った。
ヴァルタルはとんでもない速さで地下室を造った。
その時の騒動は思い出したくない。
「ばかやろう!
果物も穀物も、美味しく育てるには土が大切なんだ!
地表近く、巨木の根の有る場所を掘るな!
美味しい酒が飲みたいのなら2度とやるな!」
俺が激怒したからだろう、俺よりはるかに強いヴァルタルが謝った。
形だけの謝罪ではなく、心から謝ってくれた。
「約束通り武具を造りたいのだが、鍛冶場はもの凄く熱くなる。
地上の方が果樹や人の負担になると思って地下室を造ったのだが……」
ヴァルタルと2人で話し合った。
サ・リと聖女ジャンヌも加わって話し合った。
200人以上いる家事妖精も加わって真剣に話し合った。
エンシェントドワーフが造る伝説級の武具や道具は、全員欲しいらしい。
だが、大切な果樹や作物に負担がかかるのは困る
結果、巨木の根が届かない地下深くに鍛冶場を造る事になった。
エンシェントドワーフの力はとんでもなかった。
あっという間に地下深くに鍛冶場を完成させてしまった。
聖女ジャンヌが教えてくれたが、エンシェント種は神に近い存在のようだ。
エンシェントクラスどころか、エルダークラスでもハイクラスでもない普通のドワーフが相手も、ギフトなしの人間では全く歯が立たないそうだ。
ドワーフ族は人間を襲う存在ではないので、人間から攻撃する事はないそうだ。
この世界でも、人間は自分よりも弱いモノだけ襲って利益を得ようとする……
無差別に人間を襲わない種族は、その寿命と能力から、普通種のコモンクラス、ハイクラス、エルダークラス、エンシェントクラスに分けているそうだ。
俺もだが、ジャンヌ、そんな存在にケンカを売るな!
俺も気をつけるから、ジャンヌも気をつけてくれ。
酒の勢いというのが恐ろしいのは、失恋して反社に絡んだ友人から学んだ。
ヴァルタルが造った鍛冶場は地下20メートルにある。
なぜそんな深くに造ったのか、それは巨木が普通の樹ではなかったから。
普通の樹は、根の90%が地表から60センチ以内の所にある。
地上と地下のバランスを取るために、逆三角形に広がる。
どんなに深く根を張る木でも、木の直下で3メートル以内だ。
ところが俺を助けてくれる巨木は、根が地下20メートルまである。
横にも広がっていて、隣近所の巨木の根と絡み合っている。
もしかしたら巨木同士で助け合っているのか?
そう言う理由で、地下20メートルまでは、最初に造った地表近くの地下室があるだけで、それ以外はらせん階段になっている。
エンシェントドワーフのヴァルタルはとても力強い。
とんでもない量と重さの鉱物と炭を持って、地上と地下を往復できる。
ヴァルタルはどこからか鉱物と炭を手に入れてきた。
「ヴァルタル、鉱物と炭は魔境の外から手に入れたのか?」
「いや、魔境の中にあるエンシェントドワーフの国からだ」
「魔境の中にエンシェントドワーフの国があるのか?」
「ある、ただ、国とは言っても住んでいる者は少ない。
そもそもエンシェントドワーフを名乗れる者が少ない。
大魔境の中で生活できるほど強い者も少ない。
エルダードワーフはもう少し住みやすい魔境にいる」
「魔境が複数あるのか?!」
「あるぞ、人間は弱いから、遠くに行けなくて知らないのだ。
この世界には無数の魔境があり、そこに合う者が住んでいる。
無数の魔境の中でも、特に魔素が濃く、住み難いのがここ、大魔境だ」
来訪神様、なんでこんな所に転生させたの?
ギフトの御陰で困ってはいないけど、もっと楽な場所があったでしょう?!
「俺たちがエンシェントドワーフの国に行く事はできるか?
エンシェントドワーフの国に住む事はできるか?」
「それは無理だ、大魔境に住むようなエンシェント種は偏屈な者が多い。
他種族と暮らすくらいなら、大魔境には住まない。
エンシェント種の中には、同族と暮らすのも嫌がる者がいる」
「まさか、大魔境で独り暮らししているのですか?!」
これまで黙って聞いていた聖女ジャンヌが聞いて来た。
「そうだ、別にどうという事も無い。
人間のジャンヌでも、ギフトの力で大魔境の魔獣を狩れるのだ。
エンシェント種なら簡単な事だ。
それに、困ったら種族の国に戻れば良いだけだ」
「そうですか、そうですね、エンシェント種ですものね……」
「話を戻すが、エンシェントドワーフの国には何人いるんだ?」
「正確な人数は分からないが、2000人くらいではないか?」
「何か必要な物があったら、そこで買う事はできるか?」
「お前たち人間はもちろん、妖精もエンシェントドワーフの国には入れない。
俺が買いに行く事はできるが、造った方が早いだろう」
「ヴァルタルが何でも造ってくれるのか?」
「儂の専門は鉄器だが、石器も革製品も人間以上の物が作れる。
日曜的な物なら、家事妖精たちが作れる。
前もって作っておけば困る事はないだろう。
材料もたいていのモノはイチロウが育てられるのだろう?」
この10日で、ヴァルタルも俺が草木を促成栽培できるのを知った。
日用品の食器は、家事精霊が巨木の枯れ枝から作ってくれた。
巨木の枯れ枝には、転生前の建築材よりも太くて長い物がある。
家具どころか立派な屋敷を枯れ枝で建てられる。
日曜の細々とした物ならいくらでも作れる。
家事妖精もヴァルタルも色んな物を作ってくれた。
ヴァルタルは酒を飲む盃にこだわりがあるのだろう。
芸術作品と呼べるような彫刻と施した酒杯を作ってくれた。
俺の頼みを聞いて、日本風の酒盃に漆を塗って絵まで描いてくれた。
色のついたワインを飲むのが無粋に思えるくらい見事な漆塗りだった。
まだ造ってはいないが、透き通った清酒を造ろうか?
その為には、大量の酒米が必要になる。
これまでのような果樹の作業ではなく、田畑の農作業になる。
金猿獣人族たちが食べる程度のサツマイモを掘り出すのとは訳が違う。
家事精霊たちが完全な農作業をやってくれるだろうか?
俺が地面に手をついて命じると、凄まじい気配がやってきた。
空気から大地に何かが入っていくのが分かる。
地の底から力が湧き上がってくるのが分かる。
エンシェントドワーフのヴァルタルが来てから10日経った。
ヴァルタルはとんでもない速さで地下室を造った。
その時の騒動は思い出したくない。
「ばかやろう!
果物も穀物も、美味しく育てるには土が大切なんだ!
地表近く、巨木の根の有る場所を掘るな!
美味しい酒が飲みたいのなら2度とやるな!」
俺が激怒したからだろう、俺よりはるかに強いヴァルタルが謝った。
形だけの謝罪ではなく、心から謝ってくれた。
「約束通り武具を造りたいのだが、鍛冶場はもの凄く熱くなる。
地上の方が果樹や人の負担になると思って地下室を造ったのだが……」
ヴァルタルと2人で話し合った。
サ・リと聖女ジャンヌも加わって話し合った。
200人以上いる家事妖精も加わって真剣に話し合った。
エンシェントドワーフが造る伝説級の武具や道具は、全員欲しいらしい。
だが、大切な果樹や作物に負担がかかるのは困る
結果、巨木の根が届かない地下深くに鍛冶場を造る事になった。
エンシェントドワーフの力はとんでもなかった。
あっという間に地下深くに鍛冶場を完成させてしまった。
聖女ジャンヌが教えてくれたが、エンシェント種は神に近い存在のようだ。
エンシェントクラスどころか、エルダークラスでもハイクラスでもない普通のドワーフが相手も、ギフトなしの人間では全く歯が立たないそうだ。
ドワーフ族は人間を襲う存在ではないので、人間から攻撃する事はないそうだ。
この世界でも、人間は自分よりも弱いモノだけ襲って利益を得ようとする……
無差別に人間を襲わない種族は、その寿命と能力から、普通種のコモンクラス、ハイクラス、エルダークラス、エンシェントクラスに分けているそうだ。
俺もだが、ジャンヌ、そんな存在にケンカを売るな!
俺も気をつけるから、ジャンヌも気をつけてくれ。
酒の勢いというのが恐ろしいのは、失恋して反社に絡んだ友人から学んだ。
ヴァルタルが造った鍛冶場は地下20メートルにある。
なぜそんな深くに造ったのか、それは巨木が普通の樹ではなかったから。
普通の樹は、根の90%が地表から60センチ以内の所にある。
地上と地下のバランスを取るために、逆三角形に広がる。
どんなに深く根を張る木でも、木の直下で3メートル以内だ。
ところが俺を助けてくれる巨木は、根が地下20メートルまである。
横にも広がっていて、隣近所の巨木の根と絡み合っている。
もしかしたら巨木同士で助け合っているのか?
そう言う理由で、地下20メートルまでは、最初に造った地表近くの地下室があるだけで、それ以外はらせん階段になっている。
エンシェントドワーフのヴァルタルはとても力強い。
とんでもない量と重さの鉱物と炭を持って、地上と地下を往復できる。
ヴァルタルはどこからか鉱物と炭を手に入れてきた。
「ヴァルタル、鉱物と炭は魔境の外から手に入れたのか?」
「いや、魔境の中にあるエンシェントドワーフの国からだ」
「魔境の中にエンシェントドワーフの国があるのか?」
「ある、ただ、国とは言っても住んでいる者は少ない。
そもそもエンシェントドワーフを名乗れる者が少ない。
大魔境の中で生活できるほど強い者も少ない。
エルダードワーフはもう少し住みやすい魔境にいる」
「魔境が複数あるのか?!」
「あるぞ、人間は弱いから、遠くに行けなくて知らないのだ。
この世界には無数の魔境があり、そこに合う者が住んでいる。
無数の魔境の中でも、特に魔素が濃く、住み難いのがここ、大魔境だ」
来訪神様、なんでこんな所に転生させたの?
ギフトの御陰で困ってはいないけど、もっと楽な場所があったでしょう?!
「俺たちがエンシェントドワーフの国に行く事はできるか?
エンシェントドワーフの国に住む事はできるか?」
「それは無理だ、大魔境に住むようなエンシェント種は偏屈な者が多い。
他種族と暮らすくらいなら、大魔境には住まない。
エンシェント種の中には、同族と暮らすのも嫌がる者がいる」
「まさか、大魔境で独り暮らししているのですか?!」
これまで黙って聞いていた聖女ジャンヌが聞いて来た。
「そうだ、別にどうという事も無い。
人間のジャンヌでも、ギフトの力で大魔境の魔獣を狩れるのだ。
エンシェント種なら簡単な事だ。
それに、困ったら種族の国に戻れば良いだけだ」
「そうですか、そうですね、エンシェント種ですものね……」
「話を戻すが、エンシェントドワーフの国には何人いるんだ?」
「正確な人数は分からないが、2000人くらいではないか?」
「何か必要な物があったら、そこで買う事はできるか?」
「お前たち人間はもちろん、妖精もエンシェントドワーフの国には入れない。
俺が買いに行く事はできるが、造った方が早いだろう」
「ヴァルタルが何でも造ってくれるのか?」
「儂の専門は鉄器だが、石器も革製品も人間以上の物が作れる。
日曜的な物なら、家事妖精たちが作れる。
前もって作っておけば困る事はないだろう。
材料もたいていのモノはイチロウが育てられるのだろう?」
この10日で、ヴァルタルも俺が草木を促成栽培できるのを知った。
日用品の食器は、家事精霊が巨木の枯れ枝から作ってくれた。
巨木の枯れ枝には、転生前の建築材よりも太くて長い物がある。
家具どころか立派な屋敷を枯れ枝で建てられる。
日曜の細々とした物ならいくらでも作れる。
家事妖精もヴァルタルも色んな物を作ってくれた。
ヴァルタルは酒を飲む盃にこだわりがあるのだろう。
芸術作品と呼べるような彫刻と施した酒杯を作ってくれた。
俺の頼みを聞いて、日本風の酒盃に漆を塗って絵まで描いてくれた。
色のついたワインを飲むのが無粋に思えるくらい見事な漆塗りだった。
まだ造ってはいないが、透き通った清酒を造ろうか?
その為には、大量の酒米が必要になる。
これまでのような果樹の作業ではなく、田畑の農作業になる。
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