15 / 111
第一章
14話王太子ウィリアム視点
しおりを挟む
うんざりだ!
どいつもこいつも下劣極まりない!
人の不幸を喜び、自分達の利益にしようとする。
その浅ましい姿に反吐がでる。
このような腐った者共を臣下として、天下万民のための政を行わないといけないと思うと、暗澹たる思いになる。
「殿下。
よくぞ我慢なされました。
誰も殿下の本心に気がついておりません」
オーウェンが話しかけてくる。
宮廷魔導士長を務めるキャヴェンディッシュ宮中伯家の跡取り息子だ。
本人も導師級の魔法が使える俊英だ。
眼が先ほどまで群がっていた貴族達を馬鹿にしている。
この辺は阿吽の呼吸だ。
幼少より遊び相手として配されていたオーウェンだ。
俺の気持ちをよく理解してくれている。
だが、だからこそ、オーウェンが堕落する可能性を忘れてはいけない。
「しかし彼らも現金なモノですね。
マナーズ男爵家がやってきて、一人が話しかければ、先を争うように群がる。
それまでは殿下に群がっていたのに!
あんな奴らは皆爵位を剥奪してやればいいのだ!
それにマナーズ男爵もマナーズ男爵だ。
確かに入って来て直ぐにヒックス子爵に話しかけられていた。
かけられてはいたが、早々に話を切り上げて殿下に挨拶に来るべきなのだ。
それを何時までも長々と話しているから、他の者が集まって来て……」
「まあ、まてボルトン」
ボルトンも憤ってくれる。
ボルトンも幼少からの遊び相手の一人だ。
近衛騎士団長を務めるレノックス伯爵家の跡取りだ。
代々武門の家だけあって、既に騎士隊長級の戦闘力がある。
皆と一緒になって憤ってくれるのは嬉しいのだが、こいつは話し始めると長い。
誰かが遮らないと何時までも話を止めない。
余と同じ歳で一九〇センチメートルを超え、巌のような筋肉塊の姿形だけ見ていれば、寡黙な騎士に見えるのだから、初めて話した者は度肝を抜かれる。
話を止めてくれたのはアイザックだ。
アイザックも幼少からの遊び相手の一人だ。
代々王家侍医長を務めるボークラーク宮中伯家の跡取りだ。
アイザックが常に余や側近達の健康にも配慮してくれている。
アイザックがボルトンの話を中断させてくれるから、余はボルトンを嫌いにならないでいられるのかもしれない。
「マナーズ男爵家は王国一の大富豪と噂されている男です。
しかも昔は冒険者として名を馳せたとも聞いています。
陛下が、ロビンソン王国との国境紛争で財政難となった国庫を、何とかなされようとされたのは御存知ですね。
陛下が苦渋の決断で売り出された准男爵位を、仲間と共に大量に購入したのがマナーズ男爵です。
更に準男爵位を買った仲間達と国境紛争に加わり、大功を立てて男爵の位を手に入れたほどの勇者です」
何時ものアイザックにない雄弁だ。
だがその通りだ。
マナーズ男爵達の御陰で、ロビンソン王国の国境紛争は完全勝利となった。
広大な領地も切り取る事ができた。
元が平民のマナーズ准男爵でなかったら、子爵、いや伯爵に陞爵されていただろう。
こちらを見ているな。
何か話したいことがあるようだ。
どいつもこいつも下劣極まりない!
人の不幸を喜び、自分達の利益にしようとする。
その浅ましい姿に反吐がでる。
このような腐った者共を臣下として、天下万民のための政を行わないといけないと思うと、暗澹たる思いになる。
「殿下。
よくぞ我慢なされました。
誰も殿下の本心に気がついておりません」
オーウェンが話しかけてくる。
宮廷魔導士長を務めるキャヴェンディッシュ宮中伯家の跡取り息子だ。
本人も導師級の魔法が使える俊英だ。
眼が先ほどまで群がっていた貴族達を馬鹿にしている。
この辺は阿吽の呼吸だ。
幼少より遊び相手として配されていたオーウェンだ。
俺の気持ちをよく理解してくれている。
だが、だからこそ、オーウェンが堕落する可能性を忘れてはいけない。
「しかし彼らも現金なモノですね。
マナーズ男爵家がやってきて、一人が話しかければ、先を争うように群がる。
それまでは殿下に群がっていたのに!
あんな奴らは皆爵位を剥奪してやればいいのだ!
それにマナーズ男爵もマナーズ男爵だ。
確かに入って来て直ぐにヒックス子爵に話しかけられていた。
かけられてはいたが、早々に話を切り上げて殿下に挨拶に来るべきなのだ。
それを何時までも長々と話しているから、他の者が集まって来て……」
「まあ、まてボルトン」
ボルトンも憤ってくれる。
ボルトンも幼少からの遊び相手の一人だ。
近衛騎士団長を務めるレノックス伯爵家の跡取りだ。
代々武門の家だけあって、既に騎士隊長級の戦闘力がある。
皆と一緒になって憤ってくれるのは嬉しいのだが、こいつは話し始めると長い。
誰かが遮らないと何時までも話を止めない。
余と同じ歳で一九〇センチメートルを超え、巌のような筋肉塊の姿形だけ見ていれば、寡黙な騎士に見えるのだから、初めて話した者は度肝を抜かれる。
話を止めてくれたのはアイザックだ。
アイザックも幼少からの遊び相手の一人だ。
代々王家侍医長を務めるボークラーク宮中伯家の跡取りだ。
アイザックが常に余や側近達の健康にも配慮してくれている。
アイザックがボルトンの話を中断させてくれるから、余はボルトンを嫌いにならないでいられるのかもしれない。
「マナーズ男爵家は王国一の大富豪と噂されている男です。
しかも昔は冒険者として名を馳せたとも聞いています。
陛下が、ロビンソン王国との国境紛争で財政難となった国庫を、何とかなされようとされたのは御存知ですね。
陛下が苦渋の決断で売り出された准男爵位を、仲間と共に大量に購入したのがマナーズ男爵です。
更に準男爵位を買った仲間達と国境紛争に加わり、大功を立てて男爵の位を手に入れたほどの勇者です」
何時ものアイザックにない雄弁だ。
だがその通りだ。
マナーズ男爵達の御陰で、ロビンソン王国の国境紛争は完全勝利となった。
広大な領地も切り取る事ができた。
元が平民のマナーズ准男爵でなかったら、子爵、いや伯爵に陞爵されていただろう。
こちらを見ているな。
何か話したいことがあるようだ。
2
あなたにおすすめの小説
〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?
詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
私の家は子爵家だった。
高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。
泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。
私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。
八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。
*文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。
ぱんだ
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は、公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。
「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」
ある日、ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる