48 / 111
第二章
47話
しおりを挟む
領地に戻ってからの旅は、王都から領地までの旅と違って安心快適でした。
代官や村長が手厚くもてなしてくれました。
特にありがたかったのは、ルーカス叔父上が贈って下さった魔獣肉です。
鮮度のいい魔獣肉は、ムク達の健康に欠かせないのはもちろん、銀狼達が魔獣化するのに必要不可欠です。
僅かではありますが、食事のたびに銀狼達に変化があるので、もう間違いないでしょう。
デビルイン城に着いてからの安心感は、領内に戻ってビルバイン城に入った時以上でした。
到着した時には、非常時に父上様が使用される領主の間と側近の間が掃き清められ、私達が何もしなくても直ぐに使える状態になっていました。
そして私達の外側を護ってくれる第二騎士団の練度と礼儀は、ビルバイン城の守備兵と比較するのが失礼な程、ずば抜けていました。
「ルーカス叔父上。
私が魔獣使いと精霊使いの技を学んでいるのは御存知だと思うのですが、その為にはここにいる魔犬達を側近くに置かねばなりません。
叔父上がここまで掃き清めてくれた場所に、この子達を入れるのは申し訳ないのですが、曲げて許してくださいませ」
本当に申し訳ない事ですが、御願いするのではなく、押し切るように言わねばなりません。
リリアンが教えてくれた、王太子殿下の婚約者候補復帰話は青天の霹靂で、心の動揺が激し過ぎて、ムク達を側から離すと、不安に圧し潰されそうになります。
もちろんうれしい気持ちが一番ではあるのです。
王太子殿下が本当に私の事を想って下さっているというのは、望外の喜びです。
ですが同時に、また刺客に狙われる日々になります。
以前のように、私を庇って多くの者が傷つき死んでいくことでしょう。
それを想うと、胸を剣で刺し貫かれるような痛みを感じます。
でも、側にムク達がいてくれれば、その不安も少しは和らぐのです。
まるで母上様の胸に抱かれているような安心感です。
ムクムクとした柔らかな毛並みも、絹糸のようなサラサラとした艶やかな毛並みも、高級毛織物のような何とも表現できない毛並みも。
一頭一頭手触りも違えば、頬擦りしたときの柔らかさも微妙に違うのです。
もちろん体臭も違います。
さすがにこれはリリアンにもコックスにも話せませんが、ムク達の体臭を嗅ぐ事も、心の平安に繋がっているようです。
私のベットに入って一緒に眠れるのは、序列の問題があって、ムクと魔豺に限られています。
銀狼達は、寝台の周辺やテラス、侍女達の部屋や通路を護ってくれています。
「分かっております、御嬢様。
魔犬や銀狼は御嬢様の新たな護りでございます。
戦闘侍女達には失礼な言い方になりますが、彼女達に準ずる待遇を御約束いたします。
何も気になされますな」
代官や村長が手厚くもてなしてくれました。
特にありがたかったのは、ルーカス叔父上が贈って下さった魔獣肉です。
鮮度のいい魔獣肉は、ムク達の健康に欠かせないのはもちろん、銀狼達が魔獣化するのに必要不可欠です。
僅かではありますが、食事のたびに銀狼達に変化があるので、もう間違いないでしょう。
デビルイン城に着いてからの安心感は、領内に戻ってビルバイン城に入った時以上でした。
到着した時には、非常時に父上様が使用される領主の間と側近の間が掃き清められ、私達が何もしなくても直ぐに使える状態になっていました。
そして私達の外側を護ってくれる第二騎士団の練度と礼儀は、ビルバイン城の守備兵と比較するのが失礼な程、ずば抜けていました。
「ルーカス叔父上。
私が魔獣使いと精霊使いの技を学んでいるのは御存知だと思うのですが、その為にはここにいる魔犬達を側近くに置かねばなりません。
叔父上がここまで掃き清めてくれた場所に、この子達を入れるのは申し訳ないのですが、曲げて許してくださいませ」
本当に申し訳ない事ですが、御願いするのではなく、押し切るように言わねばなりません。
リリアンが教えてくれた、王太子殿下の婚約者候補復帰話は青天の霹靂で、心の動揺が激し過ぎて、ムク達を側から離すと、不安に圧し潰されそうになります。
もちろんうれしい気持ちが一番ではあるのです。
王太子殿下が本当に私の事を想って下さっているというのは、望外の喜びです。
ですが同時に、また刺客に狙われる日々になります。
以前のように、私を庇って多くの者が傷つき死んでいくことでしょう。
それを想うと、胸を剣で刺し貫かれるような痛みを感じます。
でも、側にムク達がいてくれれば、その不安も少しは和らぐのです。
まるで母上様の胸に抱かれているような安心感です。
ムクムクとした柔らかな毛並みも、絹糸のようなサラサラとした艶やかな毛並みも、高級毛織物のような何とも表現できない毛並みも。
一頭一頭手触りも違えば、頬擦りしたときの柔らかさも微妙に違うのです。
もちろん体臭も違います。
さすがにこれはリリアンにもコックスにも話せませんが、ムク達の体臭を嗅ぐ事も、心の平安に繋がっているようです。
私のベットに入って一緒に眠れるのは、序列の問題があって、ムクと魔豺に限られています。
銀狼達は、寝台の周辺やテラス、侍女達の部屋や通路を護ってくれています。
「分かっております、御嬢様。
魔犬や銀狼は御嬢様の新たな護りでございます。
戦闘侍女達には失礼な言い方になりますが、彼女達に準ずる待遇を御約束いたします。
何も気になされますな」
0
あなたにおすすめの小説
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について
夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。
ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。
しかし、断罪劇は予想外の展開へ。
悪女と呼ばれた王妃
アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。
処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。
まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。
私一人処刑すれば済む話なのに。
それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。
目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。
私はただ、
貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。
貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、
ただ護りたかっただけ…。
だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。
❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。
結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。
王命により、婚約破棄されました。
緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます
鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────
私、この子と生きていきますっ!!
シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。
幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。
時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。
やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。
それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。
けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────
生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。
※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる