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第二章
57話コックス視点
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二匹の魔犴は、生来の暗殺者かと思うくらい見事に城に忍び込みます。
敵の城には警備の獣がいないようです。
貴族の中には、城の警備のための犬を飼っている方もいます。
ですがそれほど一般的ではありません。
犬を飼う者は畜産に携わる農民が多いので、身分差に拘る貴族は城内に入れたがらないのです。
次々と城壁や濠を突破した魔犴と監視役は、ついに本城の城壁前に辿り着きましたが、ここまで来ると、もう城門を破るか高い所にある鎧戸を破るしか、侵入する方法がありません。
魔犴の眼で全てを見ていた私は、大きな安堵と少しの失望を感じました。
ですが、監視役は諦めませんでした。
手に鉄爪を装備すると、城壁の石と石の間に爪先を喰い込ませ、見る見るうちに切り立った城壁をよじ登っていくのです。
更に音も立てずに鎧戸を開け、スルリと城内に進入してしまいました。
そして直ぐに魔犴に合図を送ってきました。
私は慌てて魔犴に跳んで入るように命じました。
後はトントン拍子に事は進みました。
城内の廊下や階段は真っ暗でしたが、魔犴の眼と鼻は全てを見通してくれます。
警備の騎士や兵がいる所は、遥か手前で存在が分かるので、十分な準備をして奇襲する事ができました。
立って居眠りしている不心得者が多くて、物音をたてずに暗殺する事ができました。
殺された相手は、自分が殺された事も理解できていないでしょう。
これでは天に向かう事も地に落ちる事もできないでしょう。
絶対にアンデットになってしまいます。
全く騒がれることなく、伯爵とその情婦を殺す事ができました。
シーモア公爵家の関与を疑われないように、盗賊や冒険者の仕業と思わせるように、部屋の金品を奪いました。
反吐が出るほど嫌な行為でした。
でもこれで終わりだと気が抜けた時に、監視役がとんでもないことを言い出したのです。
「いい機会です。
一族もできるだけ殺しておきましょう。
発見されるまで、殺せるだけ殺します。
聞こえていますか?」
耳にした言葉が信じられませんでした。
もう十分殺しました。
城内を警備していた騎士と兵だけで、もう二十二人も殺しました。
実際に私が手掛けたのは十二人だけですが、それでもその感触は今も生々しく残っていて、一生悪夢にうなされるでしょう。
魔犴の牙が人間の喉に喰い込む何とも言えない柔らかな感触と、喉を喰い千切る時の軽い抵抗感を、思い出しただけでも吐き気がします。
人間の喉を襲った魔犴の爪が、わずかに抵抗する喉を切り裂く感触にも怖気がして、全身が震え出しそうになります。
もう嫌なのです!
敵の城には警備の獣がいないようです。
貴族の中には、城の警備のための犬を飼っている方もいます。
ですがそれほど一般的ではありません。
犬を飼う者は畜産に携わる農民が多いので、身分差に拘る貴族は城内に入れたがらないのです。
次々と城壁や濠を突破した魔犴と監視役は、ついに本城の城壁前に辿り着きましたが、ここまで来ると、もう城門を破るか高い所にある鎧戸を破るしか、侵入する方法がありません。
魔犴の眼で全てを見ていた私は、大きな安堵と少しの失望を感じました。
ですが、監視役は諦めませんでした。
手に鉄爪を装備すると、城壁の石と石の間に爪先を喰い込ませ、見る見るうちに切り立った城壁をよじ登っていくのです。
更に音も立てずに鎧戸を開け、スルリと城内に進入してしまいました。
そして直ぐに魔犴に合図を送ってきました。
私は慌てて魔犴に跳んで入るように命じました。
後はトントン拍子に事は進みました。
城内の廊下や階段は真っ暗でしたが、魔犴の眼と鼻は全てを見通してくれます。
警備の騎士や兵がいる所は、遥か手前で存在が分かるので、十分な準備をして奇襲する事ができました。
立って居眠りしている不心得者が多くて、物音をたてずに暗殺する事ができました。
殺された相手は、自分が殺された事も理解できていないでしょう。
これでは天に向かう事も地に落ちる事もできないでしょう。
絶対にアンデットになってしまいます。
全く騒がれることなく、伯爵とその情婦を殺す事ができました。
シーモア公爵家の関与を疑われないように、盗賊や冒険者の仕業と思わせるように、部屋の金品を奪いました。
反吐が出るほど嫌な行為でした。
でもこれで終わりだと気が抜けた時に、監視役がとんでもないことを言い出したのです。
「いい機会です。
一族もできるだけ殺しておきましょう。
発見されるまで、殺せるだけ殺します。
聞こえていますか?」
耳にした言葉が信じられませんでした。
もう十分殺しました。
城内を警備していた騎士と兵だけで、もう二十二人も殺しました。
実際に私が手掛けたのは十二人だけですが、それでもその感触は今も生々しく残っていて、一生悪夢にうなされるでしょう。
魔犴の牙が人間の喉に喰い込む何とも言えない柔らかな感触と、喉を喰い千切る時の軽い抵抗感を、思い出しただけでも吐き気がします。
人間の喉を襲った魔犴の爪が、わずかに抵抗する喉を切り裂く感触にも怖気がして、全身が震え出しそうになります。
もう嫌なのです!
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