召喚された異世界で美形の養子と暮らしてます【R18】

人面石発見器

文字の大きさ
5 / 5

EX 弁償はしてもらえませんでした……

しおりを挟む
「結婚式は、いつにしますか?」

 ティルクが、いつもの可愛い笑顔をわたしにむけた。
 その瞬間。

 どっがーんっ!

「なっ、なに!?」

 お店の方で爆音が響いた。
 戦時中は珍しくない音だったけど、今はなかなか聞かない音だ。
 探知の魔法を使ってみたけど、半径3km以内に魔族の気配はない。
 襲撃者が魔族じゃないなら、どうとでもなりそうだ。
 わたしこれでも、凄腕の〈魔女〉だからねっ!
 急いで店舗に移動するわたしとティルク。わたしはティルクを後ろにかばうようにして、家屋から店舗への扉を開けた。
 そこには……。
 そう、そこには、腕を組んで仁王立ちしているヴァニラ大公のお姿がっ!
 なにか、怒ってるみたいんですけど……?
 ヴァニラ公王の左右と後ろには、魔術師団の皆さんの姿。

「あなたっ! なにやらかしたのっ!?」

 わたしの姿を見るなり、大きな声で怒鳴るヴァニラさん。
 え?

「わ、わたし……ですか?」

「他に誰がいるっていうのっ!」

 いや、あなたがやらかしたのでは?
 お店の出入り口のドア、派手に壊れてるんですけど……。
 これ、なおせるのかな?

「えっと……ちょっと……」

 なにをいわれているのかわからない。
 わたし、なにもしてないよね?

「ちょっとなにっ! そのちょっとを聞いてるんですっ! な・に・し・た・のッ」

 どうしたものやらなわたしの前にティルクが移動して、

「ご来店、光栄の極みでございます。公王陛下」

 片膝をついてかしこまり、ヴァニラさんに頭を下げる。

「ティルクくん、今日は買い物に来たわけじゃないの。そもそも閉店してたじゃない」

 だからドアを壊したと?

「はい。ですが公王陛下を御前に開かない扉を、当店は有しておりませんので」

 そりゃ、ヴァニラさんが「開けてー」といってきたら、「いいよー」とお店を開けるだろうけど……そうだよっ! わざわざお店のドア壊さなくてもいいじゃないっ。
 このドア、結構奮発して家具職人の親方に作ってもらったんだからねっ! 高かったのっ。
 わたしが文句をいってやろうと決意した瞬間。 

「陛下」

 魔術師っぽいおじいさんが、ヴァニラさんに耳打ちを始める。
 この人知っている。宮廷魔術師団の団長さんだ。
 その団長さんのお話を、ふむふむと聞いるヴァニラさん。
 早く、帰ってくれないかなー。
 いま、わたしたちの将来にかかわる、大切な話をしてたんだけどなー。

「ねぇティルク。ヴァニラさんたち、なにしに来たんだろうね?」

 ティルクはちょっと驚いたような顔して、その次に「でもわかんないかー、この人は」、と顔に書いたあと、

「ご……おわかりになられませんか?」

 ご主人さまっていおうとしてガマンしたな。
 うん、えらい。あとでいい子いい子してやろう。

「わからないから聞いてるの」

「あなたが、魔力を解放したからだと思います」

 ……あー、あれか。
 確かに、ちょっとやらかしてたわー。
 魔力に敏感な人なら震え上がっちゃうようなプレッシャーを、だだ漏れにさせたしなー。 
 えー……でもあんなことで、店のドア壊すほど怒るかな?
 大したことないじゃん。
 なにも吹っ飛ばしてないんだし、魔族の死骸をぶちまけたわけでもないし……。

「はぁー」

 ため息をつくヴァニラさん。

「ねぇ、あなた」

「わたしですか?」

「そう、あなたです。なにがあったの? こんなこと、12年前から一度もなかったでしょ?」

 こんなことってどんなことか、わたしはわかってませんけど、ティルクがいう通りの理由なら、確かになかったと思う。

「さっきの、魔力的なアレですか?」

「それです」

「あぁ……アレはですね……」

 話しにくいな、他人には。
 なんというか、わたしとティルクの……「家族の問題」だから。
 わたしのためらいを察知してくれたのか、

「おそれながら公王陛下。よろしいでしょうか」

 ティルクが助けに出てくれる。

「良い、許す」

「ありがとうございます」

 ティルクは礼をいって深く頭を下げ、

「我が主、真珠の魔女さまのご慈愛をたまわり、わたくしは魔女さまを真珠と呼ぶことを許され、同時に我が一生を伴侶としての真珠とともに歩むことを許されました。その契約を先ほど」

 ティルクはわたしに微笑みを向けてから、ヴァニラさんに視線を戻し、

「真珠と、結んでおりました」

 深々と頭を下げだ。
 ヴァニラさんは、ちょっと困り顔だ。
 想像もしてなかった内容を聞かされた、そんな感じだろう。
 またまた、魔術師団長に話しかけるヴァニラさん。
 よくそんなに相談することあるなー。
 しばらくの間ふたりはゴニョゴニョ話し合い、彼女は、

「それは……ご愁傷さまですわ」

 本当にかわいそうなものを見る目で、ティルクを哀れんだ。

「なにいってるのよっ! おめでたいことでしょっ」

 反論するわたしに、ヴァニラさんは心底見下した視線をむけて、「ふっ」と鼻で笑う。

「息子として育てて、美味しそうに実ったら果実をもいで堪能しようと? そういうお話、昔ありましたわね」

 うぐぐぐっ。

「はい。美味しそうに育ちましたので、愛する人の手に落ちることができました。とても幸せで、言葉もございません」

 ほっ、ほら、そういうことですーっ。
 今さらっと、「愛する人」っていわれたんだけど……。
 ちょ……は、恥ずかしい……。
 初めて、なんだけど……あ、愛する人?
 やばい……嬉し恥ずかしいんですけどっ!

「ティ、ティルクを息子から、お、夫にするのに、魔術的な契約の更新が必要だったの。ほら、わたし魔女だから、そのへんは普通じゃないんですっ」

 嘘ですけどね! 別に「本当の名」をティルクに教える必要なんて、これっぽっちもなかった。
 ただわたしが、知っておいて欲しかっただけ。
 わたしの、わがままだ。
 魔術師団長に話しかける公王陛下。話を聞きながらうなずき、

「魔術師団長は、そのような話は聞いたことがないって」

 団長さん、空気よんでよー。

「でも、まぁよろしいわ。あなたの魔力の暴走は治まったみたいですし」

「暴走はしてませんけど?」

 ここで反論したのは、魔術師団の団長さんだった。

「あなたさまの魔力は、あなたさまには微少なうねりであろうと、我々常人には激しく感じられるのです。ご理解いただけるよう、お願いいたします」

 そういって頭を下げられると、文句もいえない。ずるいな。
 ヴァニラさんが冷たい声で、

「ここはわたくしが、心を捧げたあの人を待つための場所なの。あの人が帰るべき街なの。なにかしたら、絶対に許さない」

 すっごい顔で睨んでくる。
 やっべ……めっちゃキレられてる。

「もうしわけございません、公王陛下。これから先、真珠がこの街を守るため以外で、この街の中で魔力を解放することはございません。我が命をかけまして、お約束いたします」

 あー、立派になったな、ティルク。
 っていうか、これ、本当にティルクなの?
 もしかして学院では、こんな感じなの?
 わたしとふたりでいるときと違いすぎて、ちょいキモいな。

「真珠」

 ティルクが、彼だけが呼ぶことを許された名で、わたしを呼ぶ。

「真珠も、公王陛下にお約束してください」

 う、うん。そうだよね。
 わたしなにも悪いことしてないけど、ヴァニラさん怒ってるみたいだし、とりあえず謝っておくか。
 それが大人の対応ってもんだよね。
 どやっ!

「ごめんねっ、もーしません。てへっ♡」

 そしてわたしは、ヴァニラさんとティルクにめっちゃ怒られた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。

汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。 元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。 与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。 本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。 人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。 そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。 「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」 戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。 誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。 やわらかな人肌と、眠れない心。 静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。 [こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?

きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

騎士団長のアレは誰が手に入れるのか!?

うさぎくま
恋愛
黄金のようだと言われるほどに濁りがない金色の瞳。肩より少し短いくらいの、いい塩梅で切り揃えられた柔らかく靡く金色の髪。甘やかな声で、誰もが振り返る美男子であり、屈強な肉体美、魔力、剣技、男の象徴も立派、全てが完璧な騎士団長ギルバルドが、遅い初恋に落ち、男心を振り回される物語。 濃厚で甘やかな『性』やり取りを楽しんで頂けたら幸いです!

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

処理中です...