勇者パーティーを追放された魔法剣士は卑怯な手段でエッチに復讐する!

ヤラナイカー

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第一章「裏切られたガンプ」

第三話:近衛騎士団の消耗

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 なんとか生き延びたか。
 正面きっては戦えないものの、補助魔法を全力で研究したガンプは眠りの魔法や痺れ魔法などで魔獣の動きを止めて逃げるのは得意だ。

 その上で、用心深く魔界に何箇所もセーフハウスを用意しておいたのが功を奏した。
 ほうほうの体で魔界を脱出して、最前線の街カステルにたどり着いたガンプは、川で身体の汚れを落とすと宿をとる。

 金はあったが、選んだのはあえて最下層の冒険者が泊まる安宿だ。
 そうして、変装で人相を変えて場末の酒場で情報を集める。

 まあ、集めなくても盛んに魔導球から配信されているモニターで、相手の状況は筒抜けなのだが。

「ほんとにやりやがったのか、あのバカどもめ」

 評判の悪い卑劣漢の魔法剣士ガンプの戦死は報告されていたが、酒場の民衆にとってはどうでもよさそうだった。
 それよりも、エリザベート姫が近衛騎士団を連れて威勢よく魔王討伐に出たという話でもちきりだった。

 魔王との戦いなど、関係ない民衆にとっては単なる娯楽でしかないということだろう。
 軍が動けば、この最前線のカステルの街の景気も多少は良くなるのも、歓迎されている理由ではあるかもしれない。

 これから何が起こるのかも知らず。
 国も愚かなら、国民も愚かだ。

「誰が死のうが、この国がどうなろうが、もう俺には知ったこっちゃないがな」

 それよりも復讐だ。
 そう考えたら、やつらが傷ついてくれることはガンプにとっては好都合。

 そして、国民の関心がガンプに向いてないのも全て好都合だ。
 復讐のための準備を念入りにやることにしよう。

「邪魔したな」

 今も魔導球から配信されている、戦場に立って閃光魔法で悪鬼を討ち果たす金髪碧眼の超美少女。
 御年十六歳の可憐なエリザベート姫の姿を怒りに満ちた目で眺めながら、喉が焼けるような安酒を煽る。

 ガンプは、酒代を置いて静かに店を出ていった。

     ※※※

 最後の障害である魔王城の場所はわかっていたため、そこまで攻めるのは簡単だった。
 しかし、後がいけない。

「第三小隊全滅です! 魔王城の一階、突破できません!」

 とりあえず攻めたものの、強大なる魔物が待ち構えている魔王城の守りは硬い。

「何をやっている! あれしきの敵に根性が足りないぞ!」

 将軍気取りで、聖槍ゲイハルトを振り回す女騎士ヴァルキリアに、レベルマックスの槍聖と一緒にしてくれるなと、伝令は顔をしかめる。
 アークデーモンなんかが徘徊している魔王城の攻略は、いかに王国最強の近衛騎士団といっても難しい。

 もともと、近衛騎士団は巨大な悪鬼との戦いに慣れていない。
 馬に乗り、強固な甲冑に身を包んだ重騎士は守りにこそ本領を発揮する。

 攻城戦は得意ではないのだ。
 女勇者セイラが、エリザベート姫に進言する。

「やはり、私たちが攻めましょうか」

 セイラの言葉に、ヴァルキリアも賛同する。

「そうだ! このままでは埒が明かない。姫、私たちにやらせてください」

 しかし、エリザベート姫はいきり立つヴァルキリアを悠然と手で押さえる。

「お待ちなさい。私たち勇者パーティーは、魔王との戦いに全力を尽くすべきです。そこまでの攻略は、近衛騎士団にまかせておけばいいのです」

 エリザベート姫の言うことも一理ある。
 魔王との戦いは熾烈を極めることが予想されるため、ここで体力を温存できるのはセイラたちにもありがたかった。

 しかし、あまりに近衛騎士団の消耗が激しすぎるように感じた。
 セイラの心の何処かに、師匠であったガンプに言っていた近衛騎士団を使い潰すのはマズいという言葉が引っかかっている。

 女勇者セイラは、いまさらながら言う。

「姫様、近衛騎士団を使ったのは本当に大丈夫だったのですか」
「魔王軍との戦いで、近隣の国家とは今後十年間の不戦同盟を結んでおります。近衛騎士団をこの戦いに使っても問題ありません」

 エリザベート姫の言う理屈は、正しいように聞こえる。

「しかし何か、見落としが……」
「何が心配なのですか。このわたくし直々の出征なのですよ。近衛騎士団に加えて治療のための回復術師も、潤沢な補給部隊も揃っています」

 これでも帝王学として戦術論は一通り学んでいると、エリザベート姫は自信ありげに笑う。
 それに、女騎士ヴァルキリアも賛同する。

「セイラ、近衛騎士は強いんだ。みんな慣れない戦いに戸惑っているだけで、慣れれば根性で戦い抜けるさ」

 こんな戦いで負けるような根性のない騎士は、近衛騎士団にふさわしくないといつも通りの根性論を展開しだすヴァルキリア。
 それに満足げに微笑むと、エリザベートはティーセットを取り出して言う。

「それよりセイラ。新しいブランドの紅茶があるんですが、一緒にお茶にしませんか」
「お茶ですか?」

 戦場なのに、魔導球による撮影がない時は自分の防具は従者に持たせて、優雅なドレス姿でお茶を飲んでいる。
 末端の騎士は血だるまになって戦っているというのに、エリザベート姫は悪鬼を討ち果たす仕上げのカッコいいところでしか戦わない。

 国民のアイドルである姫様というのは、こういうものなのか。
 女勇者セイラは、見ていて少し疲れを感じる。

「ええ、同じ勇者パーティーの仲間でしょう。わたくしのことはエリザと読んでください。そうだ、閃光のエリザなんてどうかしら」
「えっと……」

「二つ名ですよ。皆さんも、そういうのがあるんでしょう?」

 冒険者ごっこができて嬉しいのか、そう言って楽しそうに笑う。
 この姫様は、本当に大丈夫なのだろうかと、女勇者セイラは少し恐ろしくなるのだった。
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