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第一章
今日はお祭り?
マーガレットは一年振りに王都に来ていた。
王城で開催される王家主催の夜会が執り行われるため、ケナード家が揃って必要最低限の使用人を連れて、王都に訪れていた。
王都にケナード家の屋敷はない。
愛する妻スザンヌと目に入れても痛くはない愛娘マーガレットとは片時も離れたくないビクトールが、領地経営を理由に王都に屋敷を持たなかったのだ。
初めの頃は気にも留めなかった王家だったが、今ではクラレンス王国を誇る人財を次々に生み出すケナード伯爵家に再三王都進出を頼んでいた。
「私はケナード領から一歩も出ませんよ」
そう言うビクトールに王命で従わせようとした王家だったが、
「それならば仕方がない。この国から出て行きましょう」
ビクトールの脅しとも取れる言葉に、出ていかれては困ると慌てて王命を撤回した。
何を言っても頑ななビクトールに、毎週のように王家から文官が派遣されるも
「また来たのか…家族と過ごす時間が無くなってしまうではないか…」
と、文官の度重なる訪問に嫌な顔をするビクトールは、全ての指示出しをクロードに一任した。
(我々も忙しいのに…ビクトール殿が王都にいれば、こんなに時間をかけることもないのに…)
文官達は毎回自分達を嫌そうな顔で見てくるビクトールに頭を抱えていた。
(何故いつも私なんでしょう…私もマーガレット様のお世話をしたいのに…どんどん仕事が増えていきますね…)
もう何度目かもわからない頭を抱えるクロードだった。
そんなケナード家の王都の滞在先は、王都の高級宿屋だった。
王都に屋敷を持つ貴族の知り合いはいたが、
「年頃の子息のいる屋敷は嫌だ!」
我儘なことを言うビクトールの独断により、宿屋に滞在する事となったのだ。
((まったくこのお方は…))
そう思ったケナード家の使用人達だった。
そんなこんなで王都の宿屋に、観光も兼ねて一月程滞在することになったマーガレットは、久しぶりに来る王都の城下町を探索していた。
(久しぶりに訪れる王都も楽しいわね。ケナード領とは違った賑やかさがあるわ!どんな面白いことが起こるのかしら?)
マーガレットはワクワクし、付いて歩くオリビア達はハラハラとしていた。
暫く歩いていると、マーガレットは賑やかな話声が聞こえてきた。
(あら…?何かしら?)
マーガレットがキョロキョロと辺りを見渡すと、女性を囲うようにたくさんの男性達が後を付いて歩いく団体を見つけた。
顔立ちの綺麗な女性を中心に、十人くらいの若い男性達が賑やかな雰囲気で歩いていたのだった。
(まぁ、とても賑やかね。パレードをやっているのかしら?王都ではこの様なお祭りもあるのね)
「ねぇ、セバス。今日はお祭りでもあるのかしら?あそこでパレードをしているわ!」
マーガレットは何か面白いことがあるのかと、セバスに聞いた。するとセバスは、少し冷たい声で答えたのだ。
「いえ、本日は至って普通の日でございます。あれは、マーガレット様の気にする必要の無いものにございます」
「そうなのね…」
マーガレットはもう一度団体に視線を寄越すと、女性がマーガレットを見て笑った。
(とても綺麗な女性ね…)
マーガレットはその場から立ち去った。
(特別な行事ではなかったのね…残念だわ。でもあのお方は男性には囲まれていたけれど、妖精さんは周りにいなかったわ…)
マーガレットはすぐに女性の事は忘れて、王都観光を楽しんだ。ビクトールとスザンヌ達と一緒に観光地を回り、とても楽しい思い出となったのだった。
夜会も間近のある日の午後、マーガレット達は最後の観光にと、皆で王都で人気の喫茶店に行くことにした。
案内された貴族用の個室は一階にあり、外からは覗けないが、内からは王都の街なかが覗えるように作られていた。
運ばれて来たお茶とケーキに舌鼓を打ち、マーガレットはそっと窓の外を眺めた。
(お父様が観光を提案してくださったお陰でとても楽しく過ごせたわ。夜会が終わったらこの街も見納めになってしまうのね…)
マーガレットが街なかを眺めていると、二人のカップルが外を歩いているのを見つけた。
(あの女性は確か…パレードのお方だわ!今日は男性に囲まれていないのね。一緒にいるのは恋人かしら?でも、男性は何処か見覚えのある気がするわ。誰だったかしら…?)
暫く二人を眺めていたマーガレットだったが、考えることを放棄した。
(見つめるのは止めましょう。無粋だったわね…)
視線を戻したマーガレットは、ビクトールやスザンヌと楽しいひと時を過ごしたのだった。
王城で開催される王家主催の夜会が執り行われるため、ケナード家が揃って必要最低限の使用人を連れて、王都に訪れていた。
王都にケナード家の屋敷はない。
愛する妻スザンヌと目に入れても痛くはない愛娘マーガレットとは片時も離れたくないビクトールが、領地経営を理由に王都に屋敷を持たなかったのだ。
初めの頃は気にも留めなかった王家だったが、今ではクラレンス王国を誇る人財を次々に生み出すケナード伯爵家に再三王都進出を頼んでいた。
「私はケナード領から一歩も出ませんよ」
そう言うビクトールに王命で従わせようとした王家だったが、
「それならば仕方がない。この国から出て行きましょう」
ビクトールの脅しとも取れる言葉に、出ていかれては困ると慌てて王命を撤回した。
何を言っても頑ななビクトールに、毎週のように王家から文官が派遣されるも
「また来たのか…家族と過ごす時間が無くなってしまうではないか…」
と、文官の度重なる訪問に嫌な顔をするビクトールは、全ての指示出しをクロードに一任した。
(我々も忙しいのに…ビクトール殿が王都にいれば、こんなに時間をかけることもないのに…)
文官達は毎回自分達を嫌そうな顔で見てくるビクトールに頭を抱えていた。
(何故いつも私なんでしょう…私もマーガレット様のお世話をしたいのに…どんどん仕事が増えていきますね…)
もう何度目かもわからない頭を抱えるクロードだった。
そんなケナード家の王都の滞在先は、王都の高級宿屋だった。
王都に屋敷を持つ貴族の知り合いはいたが、
「年頃の子息のいる屋敷は嫌だ!」
我儘なことを言うビクトールの独断により、宿屋に滞在する事となったのだ。
((まったくこのお方は…))
そう思ったケナード家の使用人達だった。
そんなこんなで王都の宿屋に、観光も兼ねて一月程滞在することになったマーガレットは、久しぶりに来る王都の城下町を探索していた。
(久しぶりに訪れる王都も楽しいわね。ケナード領とは違った賑やかさがあるわ!どんな面白いことが起こるのかしら?)
マーガレットはワクワクし、付いて歩くオリビア達はハラハラとしていた。
暫く歩いていると、マーガレットは賑やかな話声が聞こえてきた。
(あら…?何かしら?)
マーガレットがキョロキョロと辺りを見渡すと、女性を囲うようにたくさんの男性達が後を付いて歩いく団体を見つけた。
顔立ちの綺麗な女性を中心に、十人くらいの若い男性達が賑やかな雰囲気で歩いていたのだった。
(まぁ、とても賑やかね。パレードをやっているのかしら?王都ではこの様なお祭りもあるのね)
「ねぇ、セバス。今日はお祭りでもあるのかしら?あそこでパレードをしているわ!」
マーガレットは何か面白いことがあるのかと、セバスに聞いた。するとセバスは、少し冷たい声で答えたのだ。
「いえ、本日は至って普通の日でございます。あれは、マーガレット様の気にする必要の無いものにございます」
「そうなのね…」
マーガレットはもう一度団体に視線を寄越すと、女性がマーガレットを見て笑った。
(とても綺麗な女性ね…)
マーガレットはその場から立ち去った。
(特別な行事ではなかったのね…残念だわ。でもあのお方は男性には囲まれていたけれど、妖精さんは周りにいなかったわ…)
マーガレットはすぐに女性の事は忘れて、王都観光を楽しんだ。ビクトールとスザンヌ達と一緒に観光地を回り、とても楽しい思い出となったのだった。
夜会も間近のある日の午後、マーガレット達は最後の観光にと、皆で王都で人気の喫茶店に行くことにした。
案内された貴族用の個室は一階にあり、外からは覗けないが、内からは王都の街なかが覗えるように作られていた。
運ばれて来たお茶とケーキに舌鼓を打ち、マーガレットはそっと窓の外を眺めた。
(お父様が観光を提案してくださったお陰でとても楽しく過ごせたわ。夜会が終わったらこの街も見納めになってしまうのね…)
マーガレットが街なかを眺めていると、二人のカップルが外を歩いているのを見つけた。
(あの女性は確か…パレードのお方だわ!今日は男性に囲まれていないのね。一緒にいるのは恋人かしら?でも、男性は何処か見覚えのある気がするわ。誰だったかしら…?)
暫く二人を眺めていたマーガレットだったが、考えることを放棄した。
(見つめるのは止めましょう。無粋だったわね…)
視線を戻したマーガレットは、ビクトールやスザンヌと楽しいひと時を過ごしたのだった。
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