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第一章
皇太子殿下
王都観光を楽しんでいたマーガレットは、遂に夜会当日を迎えた。
マーガレットとスザンヌは、朝から湯浴みやマッサージ、化粧に着付けと、オリビア達使用人に拘束されていた。
あれよあれよと言う間に、美しく着飾った二人が出来上がった。
「まるで女神と天使のようだ!この世で一番美しい、自慢の二人だよ!」
夜会用のドレスを身に纏った二人に、ビクトールは感激していたのだった。
王城には階級の下の者達から順に入場するので、マーガレット達は時間を合わせて王城まで馬車で向かった。
王家が入場するまでは、この夜会でしか会えない者達と会話をして交流を深める。
滅多に王都に姿を現さないケナード伯爵家の者達に、貴族達は挙って挨拶をしに行った。ビクトールは話しかけて来る貴族に軽く挨拶を交わし、子息のいる貴族には軽く挨拶を躱した。
テイラー家には、一瞥もくれなかった。
ざわめきが静まり、王家の者達が入場する時間となった。
クラレンス王国の王家に続いて、夜会の為にクラレンス王国に訪れていたシルベスタ帝国の皇太子が入場した。
「シルベスタ帝国のギルバート様よ!」
「なんて素敵なお方なのかしら?この夜会にいらしているなんて知らなかったわ!」
「婚約者を探すために、各国を回っているそうよ!」
「まぁ!では、婚約者はいらっしゃらないのね?私を見初めて頂けないかしら…」
マーガレットはヒソヒソと話す令嬢達の会話をきいていた。
(ふふ。可愛らしいわね)
マーガレットはそんな会話も他人事のように聞いていた。
マーガレットはまだ十代の若さではあるが、出戻りのしがない伯爵令嬢だ。王族はマーガレットにとっては雲の上の存在で、関わりのない人達だった。
(でも、皇太子殿下は見目麗しいお方だわ。ご令嬢達が浮かれてしまうのも、仕方のないことね…)
マーガレットはそんな事を考えながら、ギルバートを観察していた。
その時、パッとマーガレット達のいる方向を見たギルバートが微笑んだ。
「きゃぁっ!こちらを見て微笑んでいらしたわ!」
「私を見て微笑んだのかしら?」
また令嬢達がヒソヒソと話していたのだった。
「夜会を楽しんでいってくれ」
クラレンス国王の長い挨拶が終わり、夜会が始まった。
「失礼」「すまない、通してくれ」
ギルバートは、マーガレット達のいる所に人混みをかき分けて向かっていった。
「マ…ご令嬢、もし宜しければ、ダンスに誘っても?」
ギルバートがマーガレットに手を差し出して尋ねたのだった。
(まぁ、私に聞いてくださったのかしら…?他にもご令嬢達はいらっしゃるのに、私で良いのかしら…?ご令嬢達も皇太子殿下のお誘いを待っている方は大勢いるわ…)
マーガレットはチラッとビクトールに視線を送ったが、ビクトールは嫌そうな顔をして目を瞑り、渋々と頷いた。
「私で宜しければ喜んでお願い致しますわ」
ギルバートの手を取り、マーガレットはダンスホールに行った。
音楽が流れ始め、踊り始めた二人。
(何処か見覚えのあるお顔だわ。皇太子殿下とお会いした事など無いのだけれど…誰かに似ているのかしら?)
マーガレットはギルバートの顔を見ながら、そんな事を考えていた。
「マ…ご令嬢、突然のお誘いに承諾をしていただいてありがとうございます。お名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」
踊りながらギルバートが言った。
「ケナード伯爵家が長女、マーガレットと申しますわ。皇太子殿下、どうぞ私めにそのようなお言葉遣いはお止めくださいませ。私はしがない伯爵令嬢にございます」
「す、すまない。つい、いつもの癖で話してしまったのだ。悪く思わないで欲しい…」
ギルバートが恥ずかしそうに顔を赤らめて謝った。
(あらまぁ。お顔を赤くして、可愛らしい人だわ。男性に可愛らしいと言ったら失礼かしら…?あら…?以前にも同じ様な事があった気がするわ…いつの事だったかしら?)
マーガレットは何かを思い出そうとしながらも、ギルバートに返事をした。
「恐れ多いことにございます。私にまでそのように丁寧にお話しくださるなんて、皇太子殿下はお優しくていらっしゃるのですね」
「ははは、いつもはそうではないのだ。気にしないでくれ。ところでマーガレット嬢…」
ギルバートが言葉を続けようとしたその時、会場内に一際大きな声が響き渡ったのだった。
マーガレットとスザンヌは、朝から湯浴みやマッサージ、化粧に着付けと、オリビア達使用人に拘束されていた。
あれよあれよと言う間に、美しく着飾った二人が出来上がった。
「まるで女神と天使のようだ!この世で一番美しい、自慢の二人だよ!」
夜会用のドレスを身に纏った二人に、ビクトールは感激していたのだった。
王城には階級の下の者達から順に入場するので、マーガレット達は時間を合わせて王城まで馬車で向かった。
王家が入場するまでは、この夜会でしか会えない者達と会話をして交流を深める。
滅多に王都に姿を現さないケナード伯爵家の者達に、貴族達は挙って挨拶をしに行った。ビクトールは話しかけて来る貴族に軽く挨拶を交わし、子息のいる貴族には軽く挨拶を躱した。
テイラー家には、一瞥もくれなかった。
ざわめきが静まり、王家の者達が入場する時間となった。
クラレンス王国の王家に続いて、夜会の為にクラレンス王国に訪れていたシルベスタ帝国の皇太子が入場した。
「シルベスタ帝国のギルバート様よ!」
「なんて素敵なお方なのかしら?この夜会にいらしているなんて知らなかったわ!」
「婚約者を探すために、各国を回っているそうよ!」
「まぁ!では、婚約者はいらっしゃらないのね?私を見初めて頂けないかしら…」
マーガレットはヒソヒソと話す令嬢達の会話をきいていた。
(ふふ。可愛らしいわね)
マーガレットはそんな会話も他人事のように聞いていた。
マーガレットはまだ十代の若さではあるが、出戻りのしがない伯爵令嬢だ。王族はマーガレットにとっては雲の上の存在で、関わりのない人達だった。
(でも、皇太子殿下は見目麗しいお方だわ。ご令嬢達が浮かれてしまうのも、仕方のないことね…)
マーガレットはそんな事を考えながら、ギルバートを観察していた。
その時、パッとマーガレット達のいる方向を見たギルバートが微笑んだ。
「きゃぁっ!こちらを見て微笑んでいらしたわ!」
「私を見て微笑んだのかしら?」
また令嬢達がヒソヒソと話していたのだった。
「夜会を楽しんでいってくれ」
クラレンス国王の長い挨拶が終わり、夜会が始まった。
「失礼」「すまない、通してくれ」
ギルバートは、マーガレット達のいる所に人混みをかき分けて向かっていった。
「マ…ご令嬢、もし宜しければ、ダンスに誘っても?」
ギルバートがマーガレットに手を差し出して尋ねたのだった。
(まぁ、私に聞いてくださったのかしら…?他にもご令嬢達はいらっしゃるのに、私で良いのかしら…?ご令嬢達も皇太子殿下のお誘いを待っている方は大勢いるわ…)
マーガレットはチラッとビクトールに視線を送ったが、ビクトールは嫌そうな顔をして目を瞑り、渋々と頷いた。
「私で宜しければ喜んでお願い致しますわ」
ギルバートの手を取り、マーガレットはダンスホールに行った。
音楽が流れ始め、踊り始めた二人。
(何処か見覚えのあるお顔だわ。皇太子殿下とお会いした事など無いのだけれど…誰かに似ているのかしら?)
マーガレットはギルバートの顔を見ながら、そんな事を考えていた。
「マ…ご令嬢、突然のお誘いに承諾をしていただいてありがとうございます。お名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」
踊りながらギルバートが言った。
「ケナード伯爵家が長女、マーガレットと申しますわ。皇太子殿下、どうぞ私めにそのようなお言葉遣いはお止めくださいませ。私はしがない伯爵令嬢にございます」
「す、すまない。つい、いつもの癖で話してしまったのだ。悪く思わないで欲しい…」
ギルバートが恥ずかしそうに顔を赤らめて謝った。
(あらまぁ。お顔を赤くして、可愛らしい人だわ。男性に可愛らしいと言ったら失礼かしら…?あら…?以前にも同じ様な事があった気がするわ…いつの事だったかしら?)
マーガレットは何かを思い出そうとしながらも、ギルバートに返事をした。
「恐れ多いことにございます。私にまでそのように丁寧にお話しくださるなんて、皇太子殿下はお優しくていらっしゃるのですね」
「ははは、いつもはそうではないのだ。気にしないでくれ。ところでマーガレット嬢…」
ギルバートが言葉を続けようとしたその時、会場内に一際大きな声が響き渡ったのだった。
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