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第一章
三匹の動物
マーガレットは久しぶりに、ケナード家の裏庭に来ていた。
「みんな、暫く構ってやれなくてごめんね…」
― わんわん
― ニャーニャー
― ピーピー
マーガレットを見つけた三匹の動物達はマーガレットの周りを囲んだ。
大きい白い犬はスコッグ。マーガレットが抱き着くと木漏れ日の注ぐ森林のような匂いがするから、そう名付けられた。
黒くて小さな猫はハーヴ。透き通った青い目が海のように綺麗で、マーガレットが名付けた。
虹色に輝く鳥はユース。光に当たって羽が煌めく様がとても綺麗で、これもマーガレットが名付けた。
この三匹、ケナード家に何年も一緒に住んでいるが、仲が良くなく、いつもは別行動をしている。今も一定の距離を保ってマーガレットの近くにいた。
(まぁまぁ、みんな相変わらずなのね…でも、天敵同士ですもの。仕方のないことよね…)
ーーーーー
マーガレットはスコッグを連れて街を散歩していた。
スコッグは甘えん坊で、マーガレットの近くにいつも居たがる。
マーガレットを見つけると大きな尻尾をブンブン振って駆け寄り、マーガレットが遠出から帰って来る日は野生の勘でわかるのか、帰って来る前に門まで行って座って待っているのだ。
スコッグがクンクンと何かを嗅ぎながら前を歩いている様子を見て、マーガレットは微笑んでいた。
(何か美味しいものでも探しているのかしら?さっきご飯をあげたばかりなのに、食いしん坊さんね)
するとスコッグはある一点で立ち止まり、クンクンと辺りの匂いを嗅ぎ始めた。
(何かを見つけたのかしら…?あら?この植木は枯れてしまったのね…可哀想に。バラは育てるのが難しいものね。精一杯育てたのに、枯らしてしまったのね…)
― わん!
スコッグは一声鳴いて、再び歩きだした。そして、マーガレット達は屋敷へと戻って行った。
(今日はとても楽しいお散歩だったわ!)
マーガレットは久しぶりのスコッグとの散歩を思い返しながら、眠りについたのだった。
― 後日 ―
枯れてしまったバラが綺麗に咲き誇り、植木の数がどんどんと増えていった。このバラはケナード領の観光スポットの一つとなったのだった。
ーーーーー
ハーヴは一匹で、ケナード領にある湖に来ていた。
ハーヴは気まぐれで、ふらっと何処かへ出かけ、ふらっと屋敷に戻って来る。
話しかけても何処かに行ってしまうし、放っておくといつの間にかピタッと寄り添って寛いでいる。マーガレットがいてもいなくても、夜は必ずマーガレットのベッドで寝ているのだ。
「この間の大雨で、湖が濁ってしまった…もうすぐ感謝祭があるというのに…」
領民の男が湖を見つめて嘆いていた。
ケナード領では年に一度感謝祭が行われる。マーガレットの誕生日だった。
この感謝祭は数年前に出来た新しい祭りで、全領民がビクトールに懇願し、全ての街で執り行われるようになったものだ。
領民達はマーガレットの生誕を祝い、作物の収獲、技術の発展、技術の向上を願うのだった。
ハーヴがテテテと湖に近づき、そっと水の中を覗いた。
― ニャーン
そして、そのままふらっと何処かへ行ってしまった。
その年の感謝祭はいつもより綺麗な湖の周りに集まった領民達で賑わった。
皆豊作で喜び、今まで解決できなかった難問に学者達には閃きが起こった。
((マーガレット様に感謝を。ご生誕おめでとうございます!))
領民達は喜び、そしてマーガレットを祝福したのだった。
ーーーーー
今日のマーガレットはユースを肩に乗せてケナード領の街を歩いていた。
ユースはいつも落ち着いていて、じっとケナード家の裏庭にある大きな木の上にいる。
マーガレットを見つけると、パサッとマーガレットの肩に乗って頬擦りして、マーガレットに甘えていた。
「マーガレット様、こんにちは」
マーガレットは領民のおばあさんに声をかけられた。
「あら、おばあさん。ごきげんよう。腰の調子はいかがかしら?」
「心配してくだすってありがとうございます。なんせ歳なんでね…仕方のないことですよ」
おばあさんは腰を擦りながら言った。
― ピー
ユースが鳴くとおばあさんは驚いた顔をした。
「おやまぁ、今日はなんだか調子が良いみたいです。きっとマーガレット様のお顔を見れたからですね。ありがたや」
拝み始めたおばあさんを見て、マーガレットは笑いながら言った。
「まぁ、嬉しいことを言ってくれるのね。どうかお体を大事になさってね?」
そう言って去って行ったマーガレットを見送りながら、おばあさんは思った。
(マーガレット様はほんに優しいお方だ。それにしても、身体がいつもより軽い)
気持ち程度に背筋を伸ばしたおばあさんは、家に颯爽と歩いて帰って行ったのだった。
ーーーーー
(はぁ…みんなとても可愛いわ!ふわふわもふもふとして、とても気持ちの良い子達ね!)
屋敷の外にいるスコッグに頭を埋めたマーガレット。
「マーガレット様!普通のご令嬢は動物に頭を埋めませんよ!はしたない事はお止めください!」
そんなマーガレットを叱責するセバスだった。
(こんなに可愛らしくて、ふわふわもふもふとしているんですもの。止められないわ!)
今のケナード領にマーガレットを苦言を言える者達は、もうクロードとセバスしか残っていないのだった。
・・・・・
スコッグ = 森
ハーヴ = 海
ユース = 光
「みんな、暫く構ってやれなくてごめんね…」
― わんわん
― ニャーニャー
― ピーピー
マーガレットを見つけた三匹の動物達はマーガレットの周りを囲んだ。
大きい白い犬はスコッグ。マーガレットが抱き着くと木漏れ日の注ぐ森林のような匂いがするから、そう名付けられた。
黒くて小さな猫はハーヴ。透き通った青い目が海のように綺麗で、マーガレットが名付けた。
虹色に輝く鳥はユース。光に当たって羽が煌めく様がとても綺麗で、これもマーガレットが名付けた。
この三匹、ケナード家に何年も一緒に住んでいるが、仲が良くなく、いつもは別行動をしている。今も一定の距離を保ってマーガレットの近くにいた。
(まぁまぁ、みんな相変わらずなのね…でも、天敵同士ですもの。仕方のないことよね…)
ーーーーー
マーガレットはスコッグを連れて街を散歩していた。
スコッグは甘えん坊で、マーガレットの近くにいつも居たがる。
マーガレットを見つけると大きな尻尾をブンブン振って駆け寄り、マーガレットが遠出から帰って来る日は野生の勘でわかるのか、帰って来る前に門まで行って座って待っているのだ。
スコッグがクンクンと何かを嗅ぎながら前を歩いている様子を見て、マーガレットは微笑んでいた。
(何か美味しいものでも探しているのかしら?さっきご飯をあげたばかりなのに、食いしん坊さんね)
するとスコッグはある一点で立ち止まり、クンクンと辺りの匂いを嗅ぎ始めた。
(何かを見つけたのかしら…?あら?この植木は枯れてしまったのね…可哀想に。バラは育てるのが難しいものね。精一杯育てたのに、枯らしてしまったのね…)
― わん!
スコッグは一声鳴いて、再び歩きだした。そして、マーガレット達は屋敷へと戻って行った。
(今日はとても楽しいお散歩だったわ!)
マーガレットは久しぶりのスコッグとの散歩を思い返しながら、眠りについたのだった。
― 後日 ―
枯れてしまったバラが綺麗に咲き誇り、植木の数がどんどんと増えていった。このバラはケナード領の観光スポットの一つとなったのだった。
ーーーーー
ハーヴは一匹で、ケナード領にある湖に来ていた。
ハーヴは気まぐれで、ふらっと何処かへ出かけ、ふらっと屋敷に戻って来る。
話しかけても何処かに行ってしまうし、放っておくといつの間にかピタッと寄り添って寛いでいる。マーガレットがいてもいなくても、夜は必ずマーガレットのベッドで寝ているのだ。
「この間の大雨で、湖が濁ってしまった…もうすぐ感謝祭があるというのに…」
領民の男が湖を見つめて嘆いていた。
ケナード領では年に一度感謝祭が行われる。マーガレットの誕生日だった。
この感謝祭は数年前に出来た新しい祭りで、全領民がビクトールに懇願し、全ての街で執り行われるようになったものだ。
領民達はマーガレットの生誕を祝い、作物の収獲、技術の発展、技術の向上を願うのだった。
ハーヴがテテテと湖に近づき、そっと水の中を覗いた。
― ニャーン
そして、そのままふらっと何処かへ行ってしまった。
その年の感謝祭はいつもより綺麗な湖の周りに集まった領民達で賑わった。
皆豊作で喜び、今まで解決できなかった難問に学者達には閃きが起こった。
((マーガレット様に感謝を。ご生誕おめでとうございます!))
領民達は喜び、そしてマーガレットを祝福したのだった。
ーーーーー
今日のマーガレットはユースを肩に乗せてケナード領の街を歩いていた。
ユースはいつも落ち着いていて、じっとケナード家の裏庭にある大きな木の上にいる。
マーガレットを見つけると、パサッとマーガレットの肩に乗って頬擦りして、マーガレットに甘えていた。
「マーガレット様、こんにちは」
マーガレットは領民のおばあさんに声をかけられた。
「あら、おばあさん。ごきげんよう。腰の調子はいかがかしら?」
「心配してくだすってありがとうございます。なんせ歳なんでね…仕方のないことですよ」
おばあさんは腰を擦りながら言った。
― ピー
ユースが鳴くとおばあさんは驚いた顔をした。
「おやまぁ、今日はなんだか調子が良いみたいです。きっとマーガレット様のお顔を見れたからですね。ありがたや」
拝み始めたおばあさんを見て、マーガレットは笑いながら言った。
「まぁ、嬉しいことを言ってくれるのね。どうかお体を大事になさってね?」
そう言って去って行ったマーガレットを見送りながら、おばあさんは思った。
(マーガレット様はほんに優しいお方だ。それにしても、身体がいつもより軽い)
気持ち程度に背筋を伸ばしたおばあさんは、家に颯爽と歩いて帰って行ったのだった。
ーーーーー
(はぁ…みんなとても可愛いわ!ふわふわもふもふとして、とても気持ちの良い子達ね!)
屋敷の外にいるスコッグに頭を埋めたマーガレット。
「マーガレット様!普通のご令嬢は動物に頭を埋めませんよ!はしたない事はお止めください!」
そんなマーガレットを叱責するセバスだった。
(こんなに可愛らしくて、ふわふわもふもふとしているんですもの。止められないわ!)
今のケナード領にマーガレットを苦言を言える者達は、もうクロードとセバスしか残っていないのだった。
・・・・・
スコッグ = 森
ハーヴ = 海
ユース = 光
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