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第二章
とある村で
マーガレット達がケナード伯爵家を出てから一週間が経った。
まだクラレンス王国の外れ付近で、帝国に着くまでは二週間もかかる。
この一週間は馬車移動ばかりで観光はあまり出来なかったのだが、マーガレットはスザンヌとの時間を楽しんでいた。
(お父様には申し訳ないけれど、たまにはお母様と二人きりで過ごすのも良いものね)
お昼を過ぎた頃、マーガレットはそわそわとし始めた三匹に気が付いた。
(あらまぁ、この子達も疲れてしまったのかしら…?初めての長旅ですものね。それにしても、ずっとお利口さんで偉かったわね)
「お母様、この子達も疲れてしまったみたいですし、少し休憩をしても良いかしら?」
「そうね、そうしましょう。オリビア、お願いね?」
スザンヌに頼まれたオリビアはそっと内窓を開けて、御者席に座るセバスと御者兼護衛ハリーに告げた。
「もう少し走ると目的の村でございます。この一週間は殆ど移動と休憩だけでしたから、今日はこの村に泊まって羽を休めて、明日から移動を再開致しましょう」
ハリーの言葉通りに十分程走り続け、マーガレット達は村に辿り着いた。
「私は宿の手配をして参ります。マーガレット様、馬車の横に立つ分には構いませんが、決して歩き廻りませんように。ハリー、頼みましたよ」
セバスはそう言って、宿に向かって行った。
(まぁ、セバスったら相変わらずの心配性なのね…私は勝手に歩き回ったりしないのだけれど、おかしな事を言うのね)
マーガレットがそんな事を思いながら、ハリーの手を借りて馬車から降りた。
地面に立った時、何処からか怒鳴り声が聞こえてきた。
― またお前か!待て!悪ガキめ!
マーガレットが声のした方に視線を向けると、顔を真っ赤にして叫ぶ大きな男と、タタタッと走り去る少年の後ろ姿が見えた。
(あらまぁ…いたずらでもして怒られてしまったのかしら…?)
大きな声に驚いていたマーガレットだった。
暫くするとセバスが戻って来て、この村に一つしかないという宿屋へと皆で移動した。
「ねぇ、セバス。少しの時間だけでもいいの。この村を見て歩きたいわ。構わないかしら?」
「かしこまりました。マーガレット様、ここはケナード領ではありませんので、充分に気を付けてくださいませ。ハリーは腕の立つ護衛ですから、伴にお連れください」
マーガレットの村探索を想定していたセバスは、自身ではなく、腕の立つハリーを連れて行かせた。
スザンヌは疲れてしまい部屋で休む事となったので、マーガレットは「少しだけ」と言って、オリビアとハリーを連れて探索に出掛けたのだった。
洗濯物を干しながら世間話をする婦人達。
掛け回って遊ぶ子供達。
「安いよ!安いよ!」と、大きな声で村の人々に呼びかける野菜売りの店主。
大きな店はないが、小さな露店が立ち並ぶ賑やかな村だった。そんな村に、マーガレットは感激していた。
(とても素敵な村だわ。ケナード領の街とは違った良さがあるのね)
その時、苦しそうな声がすぐ側で聞こえた。
「離してくれ!腕が折れちまう!」
マーガレットが振り向くと、ハリーが少年の腕を掴んでいたのだ。
(あら…?この子は確か…)
先程大きな男に怒鳴られ走り去って行った少年が、ハリーに捕まっていたのだった。
まだクラレンス王国の外れ付近で、帝国に着くまでは二週間もかかる。
この一週間は馬車移動ばかりで観光はあまり出来なかったのだが、マーガレットはスザンヌとの時間を楽しんでいた。
(お父様には申し訳ないけれど、たまにはお母様と二人きりで過ごすのも良いものね)
お昼を過ぎた頃、マーガレットはそわそわとし始めた三匹に気が付いた。
(あらまぁ、この子達も疲れてしまったのかしら…?初めての長旅ですものね。それにしても、ずっとお利口さんで偉かったわね)
「お母様、この子達も疲れてしまったみたいですし、少し休憩をしても良いかしら?」
「そうね、そうしましょう。オリビア、お願いね?」
スザンヌに頼まれたオリビアはそっと内窓を開けて、御者席に座るセバスと御者兼護衛ハリーに告げた。
「もう少し走ると目的の村でございます。この一週間は殆ど移動と休憩だけでしたから、今日はこの村に泊まって羽を休めて、明日から移動を再開致しましょう」
ハリーの言葉通りに十分程走り続け、マーガレット達は村に辿り着いた。
「私は宿の手配をして参ります。マーガレット様、馬車の横に立つ分には構いませんが、決して歩き廻りませんように。ハリー、頼みましたよ」
セバスはそう言って、宿に向かって行った。
(まぁ、セバスったら相変わらずの心配性なのね…私は勝手に歩き回ったりしないのだけれど、おかしな事を言うのね)
マーガレットがそんな事を思いながら、ハリーの手を借りて馬車から降りた。
地面に立った時、何処からか怒鳴り声が聞こえてきた。
― またお前か!待て!悪ガキめ!
マーガレットが声のした方に視線を向けると、顔を真っ赤にして叫ぶ大きな男と、タタタッと走り去る少年の後ろ姿が見えた。
(あらまぁ…いたずらでもして怒られてしまったのかしら…?)
大きな声に驚いていたマーガレットだった。
暫くするとセバスが戻って来て、この村に一つしかないという宿屋へと皆で移動した。
「ねぇ、セバス。少しの時間だけでもいいの。この村を見て歩きたいわ。構わないかしら?」
「かしこまりました。マーガレット様、ここはケナード領ではありませんので、充分に気を付けてくださいませ。ハリーは腕の立つ護衛ですから、伴にお連れください」
マーガレットの村探索を想定していたセバスは、自身ではなく、腕の立つハリーを連れて行かせた。
スザンヌは疲れてしまい部屋で休む事となったので、マーガレットは「少しだけ」と言って、オリビアとハリーを連れて探索に出掛けたのだった。
洗濯物を干しながら世間話をする婦人達。
掛け回って遊ぶ子供達。
「安いよ!安いよ!」と、大きな声で村の人々に呼びかける野菜売りの店主。
大きな店はないが、小さな露店が立ち並ぶ賑やかな村だった。そんな村に、マーガレットは感激していた。
(とても素敵な村だわ。ケナード領の街とは違った良さがあるのね)
その時、苦しそうな声がすぐ側で聞こえた。
「離してくれ!腕が折れちまう!」
マーガレットが振り向くと、ハリーが少年の腕を掴んでいたのだ。
(あら…?この子は確か…)
先程大きな男に怒鳴られ走り去って行った少年が、ハリーに捕まっていたのだった。
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