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第二章

スザンヌは知っている

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マーガレット達はシルベスタ帝国の王城に来ていた。

オリビア達を馬車に残し、マーガレットはスザンヌと二人で城内に案内された。

「クラレンス王国のケナード伯爵家の皆様ですね。おや、伯爵はいらっしゃらないのですか?」

ビクトールの姿が見えないことを不思議に思い、案内の者が尋ねた。

「ケナード伯爵家のスザンヌにございます。夫は仕事の都合で遅れて参ります。ご報告が遅くなり申し訳ございません…」

スザンヌが案内の者に言った。

「ケナード伯爵家長女マーガレットにございます。どうぞ、お見知りおきください」

(あら…?お父様は来られないと仰っていたのだけれど…どうしてかしら?)

マーガレットは案内の者に挨拶をしながらも、スザンヌの言葉に疑問を持った。

「いえ、構いませんよ。どうぞ、こちらでございます」

マーガレット達は外にある庭園まで案内されることになった。


「お母様、お父様はお仕事で来られないのではなかったかしら…?」

マーガレットは小声でスザンヌに聞いた。

「そうね。けれど、あの人のことだもの。きっと無理にでも来るわよ」

スザンヌは笑っていた。


- その頃のケナード伯爵家 -

「クロード、もう急ぎの仕事はないだろう?」

「えぇ。この書類で最後でございます」

執務室で書類仕事をしていたビクトールは、クロードの言葉に顔を上げた。

「そうか。なら私もシルベスタへ行っても構わないよね?」

「ですが、シルベスタ帝国まで往復で六週間掛かります。滞在出来るお時間はございませんよ」

クロードはビクトールを嗜めるように言った。

「そこまで時間を掛けなければ良いんだね?わかったよ。クロード、一ヶ月分の仕事を持って来てくれ」

「……かしこまりました」

嫌な予感しかしないクロードだった。


三日後…

「よし、これで大丈夫だね。私が居なくても大丈夫なように、この用紙にいくつか指示を認めておいたよ。クロード、その他の事は君に一任する。信頼しているからね」

「ビクトール様…まさか…?」

ビクトールの言葉に、嫌な予感が的中したことを悟ったクロードだった。

「明日の朝にシルベスタに向けて発つよ。大丈夫。馬車を使わずに早駆けで行くからね。六週間も掛からないよ」

(まさかここまでなさるとは…だからここの所ずっと仕事に集中していたのですね…)

クロードは自分のあるじに少し呆れてしまったのだった。

「かしこまりました。伴は誰をお連れになりますか?」

「私だけで良いだろう…?」

「ビクトール様、御自身の御身をお考え下さい…」

「それなら一番馬の扱いが上手な者を頼むよ」


こうしてビクトールは馬の扱いに慣れた護衛を一人連れて、シルベスタ帝国まで馬を走らせた。

馬に必要な休息だけを取り、毎日走り続けた。

「ビクトール様、今の所は順調に来ております。もう少し休憩を取った方がよろしいのでは?」

「いや、このまま行こう。スザンヌとメグが待っているからね。私と一緒に観光をしたいらしいんだよ。メグの願いは叶えてあげないとね」

そう言ってビクトールは馬を走らせたのだった。
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