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第三章
噂をすればマティアス
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外出禁止令が明けたマーガレットは、ギルバートと二人で街を歩いていた。
オリビアも一緒に行く予定だったのだが、屋敷を出ようとしたマーガレット達をスザンヌが呼び止めたのだ。
「オリビア、少し頼まれごとをしてくれないかしら?」
辺りをキョロキョロと見渡したスザンヌがオリビアに呼びかけた。
「マーガレット様のお伴にと思ったのですが…」
「ギジルがいるから大丈夫よ。マーガレット達は気を付けて街に行くのよ?」
マーガレット達が馬車に乗ったのを見送ってから、スザンヌはオリビアにお金を渡した。
「これで何か美味しいものでも買ってきてくれないかしら?新しいお茶菓子が欲しいのよ。お願いね」
「かしこまりました」
オリビアは歩いて街までお茶菓子を買いに行き、見送りながらスザンヌは微笑んでいた。
「セバス、あなたも今日はお留守番よ。あの人に見つからないようにうまく隠れていてね?」
「かしこまりました…」
不安しかないセバスだったが、雇い主には逆らえなかった。
ーーーーー
そういうわけで、街に着いたマーガレットは御者を馬車に残し、ギルバートと二人で歩いていたのだった。
「ギルと二人だなんて新鮮ね?」
「あぁ、嬉しく思うよ」
(ギルったら話し方まで変わってしまったわ。名前だけでこんなに変わるだなんて、面白いのね)
そんな事を思いながら歩いていたマーガレットだったが、重要な事を思い出した。
「そうだわ!ギル、街に出る狼について知っているかしら?スコッグのお友達になれると思って、探したいのだけれど…」
「狼…」
「お父様は狼みたいなものと仰っていたわね」
ギルバートがなんと答えようかと迷っていると、あの男が現れた。
「お嬢さん、やっと会えたね。私からの贈り物は気に入ってくれたかい?」
マティアスだった。
「マティアス、綺麗なお花をありがとう。とても嬉しかったわ」
「いつも君のことを思っているからね。喜んで貰えて何よりだよ」
マティアスはそう言ってマーガレットの手を取り、手の甲に口づけをした。
「なっ!」
ギルバートは急いでハンカチを取ってマーガレットの手を拭いた。
(ギルったらお父様みたいね。そうだわ!)
ビクトールと同じ行動をするギルバートを見て、マーガレットはそんなことを思った。そして、街にいるマティアスなら狼について知っているかと思って聞いてみた。
「マティアス、あなたはこの街にいる狼みたいなものって見たことあるかしら?」
「狼みたいなもの?聞いたことないな…探しているのかい?」
「そうなの。スコッグのお友達になれたらと思っているのよ」
「そうか…じゃぁ、一緒に探そうか?一人でも多いと見つかるかも知れないよ。」
「まぁ、良いのかしら?マティアスは優しいのね」
こうしてマティアスを加えた三人で探すことになった。
(狼はこの男だというのに…)
ギルバートはマーガレットとマティアスの間に入って歩いていたのだった。
暫く歩いても、街の人に聞いても、狼の証言も噂さえも見つからなかった。
「お父様の勘違いだったのかしら…?」
落ち込むマーガレットに、マティアスは優しく言った。
「お嬢さん、悲しい顔をしないで?私が探してあげるよ。この街には毎日来るからね。すぐに見つかるさ」
「でも…そんなことを頼んでしまうのは申し訳ないわ…」
「それなら、こうして偶に会ってくれないかい?それだけで充分だよ」
「そんな事で良いのなら」
「それは良くない事だ」
ギルバートは我慢できずにマーガレットを制止した。
「ギル…でも、マティアスは私のために探してくれるのよ?」
答えようとしたギルバートをマティアスは遮った。まだ大丈夫だと思っていたギルバートに、先を越されたと思ったのだ。
「ちょっと待って、お嬢さんはギジル君の事をギルって呼んでいるのかい?」
「えぇ、本当はギルバートっていうのですって。だからギルと呼ぶことにしたの」
「へぇ、偽名だったんだね。え…?ちょっと待って…」
(ギルバート…ギジル…ギ、ジル…ジル…ギルにジル…!?まさか…?)
マティアスは何かに思い当たったのか、ギルバートをマジマジと見つめた。
「ギ、ギルバート君…?ジルというのはもしかして爺やとかの名前なのかな…?」
「あぁ、そうだが…?」
「そ、そうなんだね!あぁ、私は用事があったんだ。お嬢さん、悪いけどここで帰らせて貰うよ」
マティアスは焦ったようにそそくさと帰って行った。
「急にどうしたのかしら…?」
「さぁ…?」
走っていくマティアスを不思議そうに見送るマーガレット達だった。
その後も二人で歩いていたが、結局狼みたいなものは見つからなかった。
「やっぱりお父様の勘違いだったのね」
マーガレットは少し落ち込んだ。
そしてこの日以降、スザンヌの協力の下、マーガレットとギルバートは二人で行動することが増えていき、ギルバートは喜んでいたのだった。
マーガレット達から離れたマティアスは慌てていた。
(ギルにジルといえば、隣国の皇太子殿下と爺やの名前で有名じゃないか…髪色は違うが、前に見た絵姿に似ている気がする…人を見る目には自信があったというのに、どうしてもっと早く気が付かなかったんだ…)
完璧な皇太子ギルバートと、ギルバートを支える鬼のように厳しい爺やと呼ばれるジルヴィウス。クラレンス王国でも有名な話だった。
マティアスは気付いてしまったのだ。
(相手が皇太子殿下では勝ち目がない。私も命は惜しいからな…)
ギルバートの知らない間にマティアスというライバルは一線を引いたのだった。
(このまま引くのも悔しいから、少しからかうくらいなら許してくれるだろう)
懲りないマティアスは、以前のようにマーガレット達にちょっかいを出し続け、焦るギルバートを見て笑うのだった。
オリビアも一緒に行く予定だったのだが、屋敷を出ようとしたマーガレット達をスザンヌが呼び止めたのだ。
「オリビア、少し頼まれごとをしてくれないかしら?」
辺りをキョロキョロと見渡したスザンヌがオリビアに呼びかけた。
「マーガレット様のお伴にと思ったのですが…」
「ギジルがいるから大丈夫よ。マーガレット達は気を付けて街に行くのよ?」
マーガレット達が馬車に乗ったのを見送ってから、スザンヌはオリビアにお金を渡した。
「これで何か美味しいものでも買ってきてくれないかしら?新しいお茶菓子が欲しいのよ。お願いね」
「かしこまりました」
オリビアは歩いて街までお茶菓子を買いに行き、見送りながらスザンヌは微笑んでいた。
「セバス、あなたも今日はお留守番よ。あの人に見つからないようにうまく隠れていてね?」
「かしこまりました…」
不安しかないセバスだったが、雇い主には逆らえなかった。
ーーーーー
そういうわけで、街に着いたマーガレットは御者を馬車に残し、ギルバートと二人で歩いていたのだった。
「ギルと二人だなんて新鮮ね?」
「あぁ、嬉しく思うよ」
(ギルったら話し方まで変わってしまったわ。名前だけでこんなに変わるだなんて、面白いのね)
そんな事を思いながら歩いていたマーガレットだったが、重要な事を思い出した。
「そうだわ!ギル、街に出る狼について知っているかしら?スコッグのお友達になれると思って、探したいのだけれど…」
「狼…」
「お父様は狼みたいなものと仰っていたわね」
ギルバートがなんと答えようかと迷っていると、あの男が現れた。
「お嬢さん、やっと会えたね。私からの贈り物は気に入ってくれたかい?」
マティアスだった。
「マティアス、綺麗なお花をありがとう。とても嬉しかったわ」
「いつも君のことを思っているからね。喜んで貰えて何よりだよ」
マティアスはそう言ってマーガレットの手を取り、手の甲に口づけをした。
「なっ!」
ギルバートは急いでハンカチを取ってマーガレットの手を拭いた。
(ギルったらお父様みたいね。そうだわ!)
ビクトールと同じ行動をするギルバートを見て、マーガレットはそんなことを思った。そして、街にいるマティアスなら狼について知っているかと思って聞いてみた。
「マティアス、あなたはこの街にいる狼みたいなものって見たことあるかしら?」
「狼みたいなもの?聞いたことないな…探しているのかい?」
「そうなの。スコッグのお友達になれたらと思っているのよ」
「そうか…じゃぁ、一緒に探そうか?一人でも多いと見つかるかも知れないよ。」
「まぁ、良いのかしら?マティアスは優しいのね」
こうしてマティアスを加えた三人で探すことになった。
(狼はこの男だというのに…)
ギルバートはマーガレットとマティアスの間に入って歩いていたのだった。
暫く歩いても、街の人に聞いても、狼の証言も噂さえも見つからなかった。
「お父様の勘違いだったのかしら…?」
落ち込むマーガレットに、マティアスは優しく言った。
「お嬢さん、悲しい顔をしないで?私が探してあげるよ。この街には毎日来るからね。すぐに見つかるさ」
「でも…そんなことを頼んでしまうのは申し訳ないわ…」
「それなら、こうして偶に会ってくれないかい?それだけで充分だよ」
「そんな事で良いのなら」
「それは良くない事だ」
ギルバートは我慢できずにマーガレットを制止した。
「ギル…でも、マティアスは私のために探してくれるのよ?」
答えようとしたギルバートをマティアスは遮った。まだ大丈夫だと思っていたギルバートに、先を越されたと思ったのだ。
「ちょっと待って、お嬢さんはギジル君の事をギルって呼んでいるのかい?」
「えぇ、本当はギルバートっていうのですって。だからギルと呼ぶことにしたの」
「へぇ、偽名だったんだね。え…?ちょっと待って…」
(ギルバート…ギジル…ギ、ジル…ジル…ギルにジル…!?まさか…?)
マティアスは何かに思い当たったのか、ギルバートをマジマジと見つめた。
「ギ、ギルバート君…?ジルというのはもしかして爺やとかの名前なのかな…?」
「あぁ、そうだが…?」
「そ、そうなんだね!あぁ、私は用事があったんだ。お嬢さん、悪いけどここで帰らせて貰うよ」
マティアスは焦ったようにそそくさと帰って行った。
「急にどうしたのかしら…?」
「さぁ…?」
走っていくマティアスを不思議そうに見送るマーガレット達だった。
その後も二人で歩いていたが、結局狼みたいなものは見つからなかった。
「やっぱりお父様の勘違いだったのね」
マーガレットは少し落ち込んだ。
そしてこの日以降、スザンヌの協力の下、マーガレットとギルバートは二人で行動することが増えていき、ギルバートは喜んでいたのだった。
マーガレット達から離れたマティアスは慌てていた。
(ギルにジルといえば、隣国の皇太子殿下と爺やの名前で有名じゃないか…髪色は違うが、前に見た絵姿に似ている気がする…人を見る目には自信があったというのに、どうしてもっと早く気が付かなかったんだ…)
完璧な皇太子ギルバートと、ギルバートを支える鬼のように厳しい爺やと呼ばれるジルヴィウス。クラレンス王国でも有名な話だった。
マティアスは気付いてしまったのだ。
(相手が皇太子殿下では勝ち目がない。私も命は惜しいからな…)
ギルバートの知らない間にマティアスというライバルは一線を引いたのだった。
(このまま引くのも悔しいから、少しからかうくらいなら許してくれるだろう)
懲りないマティアスは、以前のようにマーガレット達にちょっかいを出し続け、焦るギルバートを見て笑うのだった。
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