シンママの私と、元地味眼鏡くん

吉野葉月

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三話


「ローズ、試験結果張り出されてるの見たよ!」

「すごいねー、ローズは。毎回トップクラスだもんね」

 教室へと向かう廊下でクラスメイトに呼び止められ、廊下の先に目を向けた。人だかりの中心にあるのは、横に長い黒板にチョークで記された試験結果の順位だ。
 私は踵を返し、輪の中に割って入る。

『二位 ローズリーヌ・クラベル』

「……」

 前回と変わらぬ結果に、思わずため息が出る。

「なぁに? そんな顔して。二位なんて十分すごいじゃない」

「すごくないよ」

 私には立派なシンママになるという目標がある。
 だから一位を取って当然で、頑張れば取れると思っていた。

「またやられた……」

 ポツリとつぶやいて、教室の自分の席に腰を下ろした。
 私の後ろに座るのは、イヴァンというクラスメイト。この男だ。私の進路を阻むのは。
 見え辛そうなのに、伸ばしっぱなしの前髪は目を完全に隠している。クラスで発言はほとんどしない完全に陰キャのくせに、この私を差し置いて成績トップだ。いつもいつも、一位の座を奪えない。

「……勉強のコツがあるのかしら」

 魔法学の参考書を広げた。
 ほとんどの教科は大差ないが、魔法だけはイヴァンの圧勝だ。前世の記憶を持ってしても、遺伝子情報と数学を組み合わせたような魔法式の理解は難しく、頭がこんがらがってしまう。

 私は真剣に机に向かった。
 ところが、ヤンチャな男子たちが声を大にして噂話をし始めた。

「ヤベェ、オレまた赤点だわ。次学期クラス下げられる」

 自分のせいじゃん。
 ため息を吐きながら、心の中でひとりごちた。

「お前には運動神経があるからいいだろ」

「カノジョもいるしな」

「いいな、ヤリ放題だろ?」

 男子たちは指を絡ませながら、下品な話題で花を咲かせる。
 私は思わず眉間に皺が寄る。

「そこまでじゃねぇよ」

「そこまでって、ちょっとはヤッてんだろ?」

「なぁ、どんな感じ? やっぱり手でやんのと違うのか?」

 朝の教室というのを忘れないで欲しい。
 私は苛立ち、強制的に音をシャットダウンしようとした。参考書の文字を凝視し、勉強にのめり込もうとした。

「勉強だけできたって……ねぇ?」

 聞こえてきたのは、侮辱する声だった。
 私はハッとして顔を上げ、男子たちの方に目を向ける。視線の先は私ではなくその後ろ、イヴァン・フェリクスだった。
 彼らはイヴァンの方をチラチラ見ながら、ガハハハと笑い合っている。

 なんだか許せなくて、胸がモヤモヤした。
 低俗な話をしているあいつらより、勉強熱心な彼の方が何倍もまともなのに。

 私は後ろのイヴァンを振り返って、机をバンッと叩いた。

「一位おめでとう」
 
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