シンママの私と、元地味眼鏡くん

吉野葉月

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七話

「私たちは多様な視点を持ちながら、共に競い合い、助け合いながら成長してきました。個々の生徒の長所を最大限に引き出すことができたのは、先生方や友人、これまで携わっていただいた皆さんのおかげです。心から感謝申し上げます」

 卒業の日、壇上で答辞を伸べるイヴァンを、卒業生席からぼんやり眺めた。
 陽の光に照らされて、灰色の髪が心なしか輝いて見えた。フォーマルな場だからか、目にかかる前髪もセンター分けで整えている。
 今日の彼はなんだか大人の男の人みたいで、不思議と胸が高鳴った。

「ねぇ、今日のイヴァンくんかっこよくない?」

「思った!」

 隣で女子生徒がヒソヒソ話している。
 やっぱり気のせいではなかったらしい。
 腰を押さえながらじっと見つめると、ふいにイヴァンがこちらに笑いかけたように見えた。

「きゃーーーっ」

 女の子たちは小声で黄色い声を上げる。
 こっちはそれどころじゃないわよ、とミシミシする身体に鞭打って姿勢を正す。

「ねぇ、ローズ、やっぱりローズたちって付き合ってたの?」

「え?」

「みんな言ってるよ。イヴァンくんはローズにだけ優しいって」

「いやいや、そんなこと。優しいというより無口なだけだよ」

 苦笑いしたが、頭の中に鮮明によみがえるのは昨夜の色っぽい彼の姿。
 想像していたより筋肉質で、余裕がなかった。
 異性との触れ合いがあんなに激しいものとは知らず、何度も醜態を晒してしまった。あんなところやこんなところ、彼に見せてしまったし、見てしまった。
 私はみるみるうちに赤くなったのが自分でも分かって、両頬を手で覆った。

「もー。素直に言いなよ。付き合ってんでしょ」

「ちがうよ」

 多分、きっと違う。
 かと言ってセフレでもない。あれは契約。

 よくわからなくなって、私はお腹に触れた。

 答辞を読み終えたイヴァンは静かに壇上を降り、講堂には聖歌隊の讃美歌が響き渡った。
 身体は疲労感でいっぱいなのに、心はふわふわとまだ夢心地だ。彼と、まだ繋がっているかのような錯覚になる。

「でも、大切な人」

 イヴァンにとっては厄介な女友達でも、私は気を許していた。どんな家族と、どんなふうに暮らしているんだろう。好きな食べ物は? 趣味は?
 今さらになって、質問が山のように湧いた。

「写真があれば良かったのにな」

 私は彼の後ろ姿を見ながら、ポツリと呟いた。
 やはり、灰色の髪が銀に煌めいているような気がした。
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