シンママの私と、元地味眼鏡くん

吉野葉月

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二十三話※

 相手の男はカーテンの裏に隠れていて姿が見えないし、風邪をひいていて声も発さない。見えるのは局部だけである。
 俯瞰して見ると大変けしからんと思う。
 
「ど……どのへんがお好きとかありますかー?」
 
「……」
 
 やはり声を出さない。可哀想に、唾を飲み込むのも痛いのだろう。

「ノーマルな感じで、攻めさせていただきますね」

 こんな感じでいいのだろうか。
 男性の両脚をまたぐように膝をついて立つと、男の大事なモノはわずかにビクッと震えて大きくなった。
 私はイヴァンとしかやったことがないから比べる人がいないのだが、この人も結構大きい気がする。生々しい異性の肉体は、おぞましいのに鼓動が速くなる。
 腕をまくって、そっと手を触れた。
 起立しているモノの棒と傘の部分との境目に指を添え、もみほぐすように上下に擦る。

「……っ」

 男はカーテンの向こうで声にならない声を上げた。真上から、ちょっぴり透明な液体が染み出ている。

「気持ちいいですか?」

 素人目から見れば充分おおきくなっているように見えるが、まだまだなのだと以前イヴァンが言っていた。

「我慢しなくて良いですからね」
 
 たぶん、何日か自慰を我慢していたのだろう。水色の髪の女性をご所望だと聞いたし、何らかの理由で水色髪の彼女と会えなくなったのかも知れない。早く解放してあげないと身体に悪そうだ。
 私はしごくスピードを速めた。
 てっぺんから漏れ出す液が増えてきて、指がぬるぬると滑る。絡め取りながら動かせば、男はさらにアソコを硬くした。

 ところが、しばらく欲求を抑えていたと踏んでいたのに、なかなか達することができない。
 
「……」
 
 次はどうすればいいのだろう。
 弧立する肉棒を前に、私はぼーっと思いにふけった。頭に蘇るのはイヴァンとの情事だ。
 思い出すたびに恥ずかしくて目を背けたくなってしまうけど、今日の色事はお金が絡んでいる。うだうだ悩んではいられない。
 
「確か、達するときはとても早く腰を打ち付けていたわよね……とすると、多分手も超高速で動かせばいいのかしら」

 独り言を呟けば、顔の見えない男が激しく咳き込んだ。
 
「……ゴホゴホッ」
 
「大丈夫ですか?」
 
 つらそうだ。ササッと終わしてスッキリさせてあげよう。欲望の詰まった男根を、ぺろりとひとなめした。卑猥な形なのに意外とつるつるしていている。
 
「早く出しちゃいましょうね」
 
 上下に擦る手に力を込めた。
 
「火打ち石で火をつける人はこんな気持ちなのかも知れないですね……」

 呟けば、笑いを堪えて吹き出す音が聞こえた。
 しまった、失礼だったのかも。

 触れ合うに溢れる、欲望の先走り。女の子の体内で注ぐために存在しているのに、挿れさせてもらえない可哀想なもの。

「本番、リクエストしても良いんですよ……? 水色の髪の毛がお好きなんでしょう?」

 背中に垂れている後ろ髪を前に持ってきた。
 髪色で指名したというのだから、せめて視界には入るべきである。
 
「どうして、お好きなんですか?」

 長い髪を耳にかけ、口を開けてソレを口に含んだ。こうすると良いと前世の記憶が言っている。

「悪目立ちしちゃって、私はあまり好きではありません。ん……」

 男の下半身は想定していたよりも大きかった。

「おおひいですね……」

 食事をするときのように、ただ開いただけでは収まりきらない。

「ごめんなさい、へたくそで……」

 いったん口を離し、今度は気合いを入れて大きく広げた。

「んあ……あふ……」

「……」

 男の反応は無い。
 怒られはしないかと、動悸が走る。


 前世の夫は口淫が好きだから角度や速さにもこだわりがあって、合わせるのは苦痛だった。

「使ってやるんだから感謝しろよな」
「歯を当てんじゃねぇ! 何回言ったら分かるんだよ!」

 要望に応えきれない私は、ごめんねと言ってただ笑うしかなかった。


 目の前にいる彼はそんな人じゃないと頭では理解しているのに、やはり今でも怖気づき、私はゆっくり息を吐く。
 口の中で、唾液と先走りとが混ざり合う。
 舌を動かし、手を上から下へ撫でつければ、男の先端はたくさんの透明な液を出して悦ぶ。

「……気持ち良いですか……?」

「……」

 男は息を荒くし始め、性の刺激に耐えている。
 あえて聞くのは野暮だったかも知れない。でも、聞かないと不安だ。

「気持ちいいですよね。気持ちいいって言ってください……!」

 なぜ、懇願しているのだろう。
 言葉にしなくたって男の態度で分かるのに、また責められるんじゃないか、けなされるんじゃないかと、ひっきりなしに不安が襲う。

「お客様……!」
 
「……はぁっ、はぁ……」

「……?」

 息を吐く声に聞き覚えがあり、私はふと動きを止めた。ここは風俗、相手がいなかったり性の我慢が効かない人がたどり着く場所だ。醜聞も悪く、普通は行っていることを公に口にはしない。
 若い男性に似た声の持ち主がいるような気がしたが、おそらく別人だ。私は思い浮かんだ人物を頭の隅から追いやって続けた。

「……私は、自分の髪があまり好きではなかったのです……傷みも汚れが目立ちやすいんです……」

 唾液と体液は境界を無くし、口に含んだ男根と私が徐々に一体になってくる。

「手入れも、大変です……絡まりやすくてほどけなくなって、切ってしまうことも何度も」

「……」

「でも、お友だち……褒めてくれたんです……こんな私でも……可愛いかって聞いたら“うん”って……」

 魔力の暴発を防ぐために言葉を発せないイヴァンに聞くのはズルだったかも知れない。相手が首を縦に振ると信じていたから、私は安心して質問できたのだから。

「嘘でも、社交辞令でも。褒めてくれる人は大好きなのよ」

「……!!」

「きゃっ!?」

 突然、男は私の頭を両手で抑えつけた。
 帆立は咄嗟に口から飛び出て、男は無理矢理口の中へ押し戻した。

「ん……んん……ん!!」

 男は私を股間に固定させたまま、腰を前後に動かし始めた。
 口腔に、なりふり構わず擦り付けている姿を見て、もうすぐ出ると自然に思った。

「~~~!」

 男がピタッと動きを止めた瞬間、口の中いっぱいに白い欲望が放たれた。ドクドクと脈をうちながら、喉奥に熱い液体が降りかかる。
 声を出すことは許されないまま、私はしばし余韻に浸った。独特の香りが鼻につく。

「……っはぁ、はぁっ……」

 精を放った男は肩で息をしている。
 やはりどこかで聞いたことがあるような気がして、吐息に耳を澄ませた。ハウスキーパーのお客さんの中に私に好意を持っている人がいるのかも知れない。
 一目でいいから顔を見てみたい。
 心の中が疼き出した。だめとは言われていないし、一度くらい見てもいいだろう。
 男がハンカチを差し出したので、ありがたく受け取って中に子種を吐き出した。ペッてしても口の中が粘つく。

「あの……」

「?」

「もしかして、私のこと以前からご存知でしたよね? あなたは誰ですか? どうして私が今日からここで働くと知っているんですか?」

「……」

 ヒノキのお香が空気中を漂う。
 男の息づかいが絶え間なく聞こえていた部屋は、しんと静まり返った。

「……それは……」

 蚊のなくような声で、男は言葉を発した。

「え? 何? 聞こえないーー」

「君が」

「おい! ローズ!! いるんだろ!!」

 男の声にかぶさるように、外から大声が聞こえてきた。

「この声、アンドレね……」

 私は留めていたクリップを外し、渋々とカーテンを下ろした。身体に飛び散った飛沫に気づき、溜めてあった水で手と口をゆすいだ。
 カーテンの向こうの男は何か言いかけたあと、続く言葉を発しなかった。

「ごめんなさい、ちょっと出てきますね。せっかく一晩買っていただいたのに、席を外してごめんなさい」

 カーテンの下部から出ている男の脚を撫でて、大きな声で人を呼んだ。

「すいません、少しお話したいのですが」

 ところが監視の人が応じる前に、扉はこちら側へ勢いよく押し開かれた。

「ローズ!! 何やってんだてめぇは!」
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