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第五話
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ガリオンら専属騎士の部屋はゼルギウスの個室とさほど離れていない。何か異変が起きたら枕元の呼び鈴を鳴らしてもらい、護衛騎士たちがすぐに駆けつけられるようにするためだ。
今までガリオンはゼルギウスの居室とは隣接していない壁側にベッドを置いて、フランシスカの話し声が漏れ聞こえないようにしてきた。ゼルギウスはフランシスカに執着してないとはいえ、婚約の儀を行った間柄だ。本来なら一般庶民の彼が関係を持っていい女性ではないのだ。
これまでどんなにフランシスカが抱きついてこようと、自分の前でのみ涙を見せようと、血流が滾る下半身をぶつけようとしたことはなかった。倫理的に大罪に当たるほかに、男女の性行為では子供ができるリスクは避けようがないからだ。
この国には事前に避妊する方法はなく、事後に女性に対し浄化魔法で全身隅々まで綺麗にするのが一般的である。身体に入ってきたものを取り込ませず、すぐに洗い流して証拠も残さず消し去る方法だ。
しかし、浄化魔法を扱えるのは水属性の魔術師に限られており、土属性のガリオンには避妊する手立てがない。誰かに頼めばできないこともないだろうが、あいにく友人に水属性の術師はおらず、身近なところでいうと彼の主でありフランシスカの婚約者ゼルギウス・フォン・エルスラーのみだった。彼に頼むなど自らの不貞を公にするようなものだ。自殺行為である。
ゆえに、ガリオンはフランシスカを抱かない道を選んできた。抱擁や口付けで多少の匂いは移っている可能性もあるが、本番行為に及ばなければ、仮にバレても一時の気の迷いとして処理してくれるだろうと考えていた。
しかし、過去に戻ってきたことでその考えは一変した。
ガリオンが使用した【時戻し魔術】は、時間の流れに逆らい、そこにあったはずのものを消し去るという禁忌魔法だ。一度生まれたものを搔き消し、死んでしまったものを甦らせる。エルスラー王国王家に伝わる伝統的な詠唱魔法で、言葉さえ理解すれば属性に関わらず誰でも使うことができるが、詠唱の反動が大きく大変危険な魔法としても知られている。
“子供が使えば、子孫を残せなくなる”
“大人が使えば、死に至る”
いずれにせよ、簡単に飲み込める条件ではなかった。
だが、ガリオンは魔法を唱えた。
マリーを失くしたフランシスカが目標を見失い、自分と一緒に居てくれなくなることが恐ろしかったのだ。フランシスカと会えなくなるなら死んだほうがマシだと、彼は覚悟を決めて言葉を発した。フランシスカを悲しみの底に沈ませないため、意を決した。
視界が歪み、肌を削ぐような痛みと強烈な眠気が襲ってきた。目が覚めたらこの世ではないだろう、天国か、いや地獄か。一度でいいからフランを抱きたかった。素肌で触れ合って、どんなに愛しているか聞かせてやりたかった。君が聖女しか見てないとしても、俺は……
ガリオンは後悔を巡らせながら意識を手放した。
けれど、彼が死ぬことはなかった。
数ヶ月前のガリオンに新たに未来の記憶と怪我が付け加えられた状態で存在し続けることになった。成人した大人だから死ぬと思っていたガリオンは拍子抜けし、理由が分からずに呆然としたが、あるひとつの解釈に落ち着いた。
年齢的には大人だが、童貞だから子供とみなされ命は助かったのだ、と。子供と判定された人間が失うものは、「世継ぎ」。
すなわち、ガリオンが永遠に子供を残せない身体になったということを意味した。
血筋を大切にする王族なら大問題だろうが、ガリオンにはむしろ好都合だった。彼はフランシスカと結婚できないのなら一生独身でいると決めていたから縁談も断ってきたし、女性に余計な気を持たせるようなことを言わなかった。彼女以外を抱く気にならす、娼館さえ利用したことはない。
だが、とうとう本番行為ができるようになったのだ。妊娠の心配がないから好きなだけ彼女と繋がっていられる。思う存分触れて、自分の欲望を注ぎ込める。ついにフランシスカとひとつになれるのだと気付いて、ガリオンは胸が高鳴った。
ガリオンはあらかじめゼルギウスの部屋との隣接側に魔術で白色の土壁を形成し、分厚く調整した。向かい合うように設置した立て鏡にそれを映し出し、窓から入り込む日光で焼き付けて、本物そっくりに造成した。遮音性を高めるよう内側を石膏に変化させた。狭い部屋に細工をしたらさらに窮屈になったが、彼は満足だった。
「ガリオン……? 私……」
フランシスカは手を繋いで連れて来られたのち、すぐにベッドに横たえられた。ガリオンは湯浴みをする時間も惜しくて、半ば強引にシーツの上へ押し倒した。
「君は今夜はここに泊まる」
「泊まる? ……んっ」
聞き返そうとしたフランシスカの唇を唇で塞いで、膝を彼女の脚の間へ滑り込ませた。
「ガリオン? 淑女は男性のいる家に泊まっちゃだめなのよ?」
「……」
フランシスカは曲がりなりにもゼルギウスの婚約者なので、次期王妃として王妃教育を受けている。ガリオンが構い倒しているせいで貞操観念がおかしくなっているが、夜遊びして朝帰りしたことはこれまで一度もなかった。
「……ソレール様には、俺から言っておくよ。研究に没頭しすぎて朝になったとでも言えばいい」
「でも……それで信じてくれるかしら」
「フラン!」
彼の下半身はやっと到来した出番に興奮が収まらず一刻も早く繋がりたくて、ガリオンは声を張り上げた。
「聖女が死んだっていいのか? 君が今頑張らなければ聖女はいなくなってしまうんだよ!」
「それは嫌だけど……」
「嫌だろ、フラン。君にいま必要なのは艶っぽさだ。聖女を超える魅力的な女性になって、君の虜にさせよう。君しか見えなければ君に全ての愛情を注ぐだろうし、誰彼構わず愛想を振りまいて暴漢に襲われることはないんだよ」
「うん……」
「おいで、フラン」
ガリオンはフランシスカの背に手を回し、編み上げた紐を解いた。きつく締められた腰部が、空気を纏い一気に解放される。胸元の留め具を外せば、ふっくらとした双丘が彼の目の前に現れた。
「美しいな……」
そっと下から持ち上げると、柔らかくて重々しい肉感が彼の手のひらいっぱいに伝わった。桃色に尖った先端のちょっとわきを指でつつけばぷくっと弾き返され、自分にはない女性の象徴は、何度見ても惚れ惚れする。ガリオンは感嘆の息を吐いた。
ナニをどうしてどうするかについては、ゼルギウスの閨教育のときに扉の側で警護する傍ら聞き耳を立てていたから理解していた。娼館に出向いたことはないが、おおよその手順は頭の中でも何度もシミュレーションした。フランシスカを絶頂まで導いたあとひとりで自慰に浸ることもあるが、今日からは違う。ついに彼女を本当の意味で抱けるのだ。
ーーーーーーーーーーーー
「フラン……っ」
ガリオンはフランシスカの身体を力強く抱きしめた。腕の中にいる彼女は細くて華奢なのに、全身が蕩けそうなほどふわふわだ。
「フラン……フラン……っ」
「あ……っ」
興味の赴くままに胸の頂をつまんでこねると、フランシスカは小さな嬌声を漏らした。コルセットで押し潰され存在感を失っていた胸先は、ガリオンが与える刺激によってどんどん高さを増していく。ガリオンはうっとりと彼女の変化を見つめながら、堪えきれずに口に含んだ。小さな尖端を舌で舐め、もう一方の頂を指で引っぱりながら弄る。
「ん……ガリオン……」
「気持ちいい? 大事なお勉強だから、身体に覚えさせてマリーにも同じことしてあげるんだよ」
「ん……うん、わかった……」
本当は他の誰にも彼女の裸体など見られたくなかったが、本音を隠してガリオンはフランシスカに言い聞かせる。フランシスカの服を脱がせた時点で、彼の男の部分は大きく反り上がっていたが、突っ込みたい衝動を抑えて優しくキスの雨を降らせる。
胸に、臍に、臀部に。少し強く吸うと白い肌に簡単に赤い痣がついた、フランシスカがいつでも自分のことを思い出してくれるように、所有印の証を至るところに散らした。耳の後ろや首筋のみならず、胸元や手首、臍の近く。
「もっと奥まで見たい。フラン、四つん這いになって」
「よ……四つん這い……?」
「恥ずかしい? そんなんじゃ、聖女マリーは助けられないよ」
マリーの名を出すと、フランシスカはおずおずとガリオンにお尻を向けた。獣の交尾のような姿勢を晒したことなど、恐らく一度もないだろう。耳まで赤く染めた後ろ姿が、ますますガリオンの理性を破壊した。
ガリオンは両手でフランシスカの恥部を広げ、これから自分の欲望の受け皿となる部分を目に焼きつけた。ガリオンに見られているからなのか、
真っ赤な粘膜はすでにひくひく蠢いている。悦に浸りながらそっと秘部をまさぐって、フランシスカ自身も見えない彼女の内側へ指を入れる。彼女の中はすでに蕩けきっていて、ガリオンの指を難なく飲み込んだ。しっかり数本入れてみても良かったのだが、指と男のものの違いを刻みつけたくて、雑に中をほぐすのみにとどめた。
「ゆっくり息を吐いてね」
ガリオンは指を抜き、代わりに熱い肉棒をフランシスカの内部への入り口にあてがった。フランシスカは言われた通りに深く呼吸する。
「──っ!?」
直後、フランシスカの入り口には焼けるような熱い塊が触れ、グッと肉をこじ開けて侵入してきた。
「やぁっ、ガリオン!! い、痛──っ……!!」
身体の真ん中の繋がったところが、裂けるように痛んだ。大きくて太い欲望は容赦なくフランシスカの下半身を圧迫し、あまりの苦しさに涙が溢れた。だがガリオンは舌で舐め取ると休息することもなく挿入を試み続ける。
「きっ……つ……、きつくて、嬉しい……」
「……っ、いたい! ……痛いって……ば……っ!」
「キツいってことは……喜ばしいことなんだよ……っ、フランが今までちゃんと貞淑な女性だったっていう……証だからね」
ガリオンはフランシスカの訴えを無視し、ジリジリと腰を進めていく。
「……もうすぐ、もうすぐ全部……っ! よし……っ、挿った! ほら見て! 根元まで全部フランの中に挿入できたよ!」
ガリオンは嬉々として結合部を見下ろしたが、うつぶせになってお尻を上げているフランシスカには、何がなんだか分からない。ただ身体の真ん中が燃えるように熱くて、お腹の奥でガリオンのものと思われる何かがピクピク動いているのは感じた。
「この熱いのが、あなたの……性器?」
フランシスカが涙目で後ろを振り向くと、ガリオンは思い出したかのように彼女のお腹の辺りを弄って、肉杭との境目にある秘核を弾いた。
「ひぁっ!?」
「忘れてたよ、ごめんね。自分のことだけで精一杯で……痛かったよね。ここも可愛がってやらないとね」
「う……っ、あ、ああぁ……!」
指で芯芽をいたずらに責めながら、ガリオンは一度奥まで届いたモノをゆっくりと引き出しては押し込んでいく。濡れているとはいえ初めて異物を入れられた陰部は、彼が突く度に圧迫され、息苦しくてたまらない。
「いやぁ、あっ、あ……あぁっ!」
「……堪えて、フラン……っ」
ガリオンはフランシスカが苦痛に顔を歪めるのを不憫に思ったが、辛そうな姿も彼を高ぶらせた。
「痛いっ、ガリオン……まだ? あっ……まだ!?」
「まーだ。俺は……ずっと……この日を夢見てたんだから……」
「ゆ、夢? ああっ、は……あっ!」
「そう、夢……」
子どもが出来ることを危惧して、踏み込めなかった関係性。フランシスカとの合接を夜な夜な思い描いては、洗い場に欲望を吐き出していたのだ。ついに長年の想いが報われ、嬉しさで心が溢れそうだった。
ガリオンは興奮しながら自分の先端でフランシスカの内壁を抉り、二人の性器同士の摩擦を速めていく。
「君にずっと教えたかったんだ。大人の性的な遊びを。今は痛いだけかも知れないけど、何度も繰り返していればいずれ味わったことのない快楽に変わる……聖女だって同じだ。聖女を溺れさせようよ、この悦びに。君無しじゃ生きていけないくらいに……聖女と生きたいだろ……? フラン……フラン!」
「ガリオ……ンっ……」
フランシスカがガリオンの激しい抽送にたまらずシーツを握りしめるのと、彼女の中に彼が熱い飛沫を放ったのはほぼ同時だった。ひときわ強く腰を打ち付けたのち、大量の白粘液がどくどくとフランシスカへ注がれた。
溜まりに溜まった積年の思いは一度中に出しただけでは止まることはなく、フランシスカは一晩中彼の性の捌け口となった。
東の空に太陽が登り始める頃には肉体的にも精神的にもすっかり尽きてしまい、一睡もしていないフランシスカは城の執事にもたれかかるように帰宅した。ソレール公爵家の当主や長兄は彼女の姿に驚きはしたが、注意することはなかった。一夜を共にしたお相手は婚約者のゼルギウスしか考えられず、これで婚約破棄することはないと密かに安堵したくらいであった。
ただひとり、双子の兄ウィリーを除いては。
今までガリオンはゼルギウスの居室とは隣接していない壁側にベッドを置いて、フランシスカの話し声が漏れ聞こえないようにしてきた。ゼルギウスはフランシスカに執着してないとはいえ、婚約の儀を行った間柄だ。本来なら一般庶民の彼が関係を持っていい女性ではないのだ。
これまでどんなにフランシスカが抱きついてこようと、自分の前でのみ涙を見せようと、血流が滾る下半身をぶつけようとしたことはなかった。倫理的に大罪に当たるほかに、男女の性行為では子供ができるリスクは避けようがないからだ。
この国には事前に避妊する方法はなく、事後に女性に対し浄化魔法で全身隅々まで綺麗にするのが一般的である。身体に入ってきたものを取り込ませず、すぐに洗い流して証拠も残さず消し去る方法だ。
しかし、浄化魔法を扱えるのは水属性の魔術師に限られており、土属性のガリオンには避妊する手立てがない。誰かに頼めばできないこともないだろうが、あいにく友人に水属性の術師はおらず、身近なところでいうと彼の主でありフランシスカの婚約者ゼルギウス・フォン・エルスラーのみだった。彼に頼むなど自らの不貞を公にするようなものだ。自殺行為である。
ゆえに、ガリオンはフランシスカを抱かない道を選んできた。抱擁や口付けで多少の匂いは移っている可能性もあるが、本番行為に及ばなければ、仮にバレても一時の気の迷いとして処理してくれるだろうと考えていた。
しかし、過去に戻ってきたことでその考えは一変した。
ガリオンが使用した【時戻し魔術】は、時間の流れに逆らい、そこにあったはずのものを消し去るという禁忌魔法だ。一度生まれたものを搔き消し、死んでしまったものを甦らせる。エルスラー王国王家に伝わる伝統的な詠唱魔法で、言葉さえ理解すれば属性に関わらず誰でも使うことができるが、詠唱の反動が大きく大変危険な魔法としても知られている。
“子供が使えば、子孫を残せなくなる”
“大人が使えば、死に至る”
いずれにせよ、簡単に飲み込める条件ではなかった。
だが、ガリオンは魔法を唱えた。
マリーを失くしたフランシスカが目標を見失い、自分と一緒に居てくれなくなることが恐ろしかったのだ。フランシスカと会えなくなるなら死んだほうがマシだと、彼は覚悟を決めて言葉を発した。フランシスカを悲しみの底に沈ませないため、意を決した。
視界が歪み、肌を削ぐような痛みと強烈な眠気が襲ってきた。目が覚めたらこの世ではないだろう、天国か、いや地獄か。一度でいいからフランを抱きたかった。素肌で触れ合って、どんなに愛しているか聞かせてやりたかった。君が聖女しか見てないとしても、俺は……
ガリオンは後悔を巡らせながら意識を手放した。
けれど、彼が死ぬことはなかった。
数ヶ月前のガリオンに新たに未来の記憶と怪我が付け加えられた状態で存在し続けることになった。成人した大人だから死ぬと思っていたガリオンは拍子抜けし、理由が分からずに呆然としたが、あるひとつの解釈に落ち着いた。
年齢的には大人だが、童貞だから子供とみなされ命は助かったのだ、と。子供と判定された人間が失うものは、「世継ぎ」。
すなわち、ガリオンが永遠に子供を残せない身体になったということを意味した。
血筋を大切にする王族なら大問題だろうが、ガリオンにはむしろ好都合だった。彼はフランシスカと結婚できないのなら一生独身でいると決めていたから縁談も断ってきたし、女性に余計な気を持たせるようなことを言わなかった。彼女以外を抱く気にならす、娼館さえ利用したことはない。
だが、とうとう本番行為ができるようになったのだ。妊娠の心配がないから好きなだけ彼女と繋がっていられる。思う存分触れて、自分の欲望を注ぎ込める。ついにフランシスカとひとつになれるのだと気付いて、ガリオンは胸が高鳴った。
ガリオンはあらかじめゼルギウスの部屋との隣接側に魔術で白色の土壁を形成し、分厚く調整した。向かい合うように設置した立て鏡にそれを映し出し、窓から入り込む日光で焼き付けて、本物そっくりに造成した。遮音性を高めるよう内側を石膏に変化させた。狭い部屋に細工をしたらさらに窮屈になったが、彼は満足だった。
「ガリオン……? 私……」
フランシスカは手を繋いで連れて来られたのち、すぐにベッドに横たえられた。ガリオンは湯浴みをする時間も惜しくて、半ば強引にシーツの上へ押し倒した。
「君は今夜はここに泊まる」
「泊まる? ……んっ」
聞き返そうとしたフランシスカの唇を唇で塞いで、膝を彼女の脚の間へ滑り込ませた。
「ガリオン? 淑女は男性のいる家に泊まっちゃだめなのよ?」
「……」
フランシスカは曲がりなりにもゼルギウスの婚約者なので、次期王妃として王妃教育を受けている。ガリオンが構い倒しているせいで貞操観念がおかしくなっているが、夜遊びして朝帰りしたことはこれまで一度もなかった。
「……ソレール様には、俺から言っておくよ。研究に没頭しすぎて朝になったとでも言えばいい」
「でも……それで信じてくれるかしら」
「フラン!」
彼の下半身はやっと到来した出番に興奮が収まらず一刻も早く繋がりたくて、ガリオンは声を張り上げた。
「聖女が死んだっていいのか? 君が今頑張らなければ聖女はいなくなってしまうんだよ!」
「それは嫌だけど……」
「嫌だろ、フラン。君にいま必要なのは艶っぽさだ。聖女を超える魅力的な女性になって、君の虜にさせよう。君しか見えなければ君に全ての愛情を注ぐだろうし、誰彼構わず愛想を振りまいて暴漢に襲われることはないんだよ」
「うん……」
「おいで、フラン」
ガリオンはフランシスカの背に手を回し、編み上げた紐を解いた。きつく締められた腰部が、空気を纏い一気に解放される。胸元の留め具を外せば、ふっくらとした双丘が彼の目の前に現れた。
「美しいな……」
そっと下から持ち上げると、柔らかくて重々しい肉感が彼の手のひらいっぱいに伝わった。桃色に尖った先端のちょっとわきを指でつつけばぷくっと弾き返され、自分にはない女性の象徴は、何度見ても惚れ惚れする。ガリオンは感嘆の息を吐いた。
ナニをどうしてどうするかについては、ゼルギウスの閨教育のときに扉の側で警護する傍ら聞き耳を立てていたから理解していた。娼館に出向いたことはないが、おおよその手順は頭の中でも何度もシミュレーションした。フランシスカを絶頂まで導いたあとひとりで自慰に浸ることもあるが、今日からは違う。ついに彼女を本当の意味で抱けるのだ。
ーーーーーーーーーーーー
「フラン……っ」
ガリオンはフランシスカの身体を力強く抱きしめた。腕の中にいる彼女は細くて華奢なのに、全身が蕩けそうなほどふわふわだ。
「フラン……フラン……っ」
「あ……っ」
興味の赴くままに胸の頂をつまんでこねると、フランシスカは小さな嬌声を漏らした。コルセットで押し潰され存在感を失っていた胸先は、ガリオンが与える刺激によってどんどん高さを増していく。ガリオンはうっとりと彼女の変化を見つめながら、堪えきれずに口に含んだ。小さな尖端を舌で舐め、もう一方の頂を指で引っぱりながら弄る。
「ん……ガリオン……」
「気持ちいい? 大事なお勉強だから、身体に覚えさせてマリーにも同じことしてあげるんだよ」
「ん……うん、わかった……」
本当は他の誰にも彼女の裸体など見られたくなかったが、本音を隠してガリオンはフランシスカに言い聞かせる。フランシスカの服を脱がせた時点で、彼の男の部分は大きく反り上がっていたが、突っ込みたい衝動を抑えて優しくキスの雨を降らせる。
胸に、臍に、臀部に。少し強く吸うと白い肌に簡単に赤い痣がついた、フランシスカがいつでも自分のことを思い出してくれるように、所有印の証を至るところに散らした。耳の後ろや首筋のみならず、胸元や手首、臍の近く。
「もっと奥まで見たい。フラン、四つん這いになって」
「よ……四つん這い……?」
「恥ずかしい? そんなんじゃ、聖女マリーは助けられないよ」
マリーの名を出すと、フランシスカはおずおずとガリオンにお尻を向けた。獣の交尾のような姿勢を晒したことなど、恐らく一度もないだろう。耳まで赤く染めた後ろ姿が、ますますガリオンの理性を破壊した。
ガリオンは両手でフランシスカの恥部を広げ、これから自分の欲望の受け皿となる部分を目に焼きつけた。ガリオンに見られているからなのか、
真っ赤な粘膜はすでにひくひく蠢いている。悦に浸りながらそっと秘部をまさぐって、フランシスカ自身も見えない彼女の内側へ指を入れる。彼女の中はすでに蕩けきっていて、ガリオンの指を難なく飲み込んだ。しっかり数本入れてみても良かったのだが、指と男のものの違いを刻みつけたくて、雑に中をほぐすのみにとどめた。
「ゆっくり息を吐いてね」
ガリオンは指を抜き、代わりに熱い肉棒をフランシスカの内部への入り口にあてがった。フランシスカは言われた通りに深く呼吸する。
「──っ!?」
直後、フランシスカの入り口には焼けるような熱い塊が触れ、グッと肉をこじ開けて侵入してきた。
「やぁっ、ガリオン!! い、痛──っ……!!」
身体の真ん中の繋がったところが、裂けるように痛んだ。大きくて太い欲望は容赦なくフランシスカの下半身を圧迫し、あまりの苦しさに涙が溢れた。だがガリオンは舌で舐め取ると休息することもなく挿入を試み続ける。
「きっ……つ……、きつくて、嬉しい……」
「……っ、いたい! ……痛いって……ば……っ!」
「キツいってことは……喜ばしいことなんだよ……っ、フランが今までちゃんと貞淑な女性だったっていう……証だからね」
ガリオンはフランシスカの訴えを無視し、ジリジリと腰を進めていく。
「……もうすぐ、もうすぐ全部……っ! よし……っ、挿った! ほら見て! 根元まで全部フランの中に挿入できたよ!」
ガリオンは嬉々として結合部を見下ろしたが、うつぶせになってお尻を上げているフランシスカには、何がなんだか分からない。ただ身体の真ん中が燃えるように熱くて、お腹の奥でガリオンのものと思われる何かがピクピク動いているのは感じた。
「この熱いのが、あなたの……性器?」
フランシスカが涙目で後ろを振り向くと、ガリオンは思い出したかのように彼女のお腹の辺りを弄って、肉杭との境目にある秘核を弾いた。
「ひぁっ!?」
「忘れてたよ、ごめんね。自分のことだけで精一杯で……痛かったよね。ここも可愛がってやらないとね」
「う……っ、あ、ああぁ……!」
指で芯芽をいたずらに責めながら、ガリオンは一度奥まで届いたモノをゆっくりと引き出しては押し込んでいく。濡れているとはいえ初めて異物を入れられた陰部は、彼が突く度に圧迫され、息苦しくてたまらない。
「いやぁ、あっ、あ……あぁっ!」
「……堪えて、フラン……っ」
ガリオンはフランシスカが苦痛に顔を歪めるのを不憫に思ったが、辛そうな姿も彼を高ぶらせた。
「痛いっ、ガリオン……まだ? あっ……まだ!?」
「まーだ。俺は……ずっと……この日を夢見てたんだから……」
「ゆ、夢? ああっ、は……あっ!」
「そう、夢……」
子どもが出来ることを危惧して、踏み込めなかった関係性。フランシスカとの合接を夜な夜な思い描いては、洗い場に欲望を吐き出していたのだ。ついに長年の想いが報われ、嬉しさで心が溢れそうだった。
ガリオンは興奮しながら自分の先端でフランシスカの内壁を抉り、二人の性器同士の摩擦を速めていく。
「君にずっと教えたかったんだ。大人の性的な遊びを。今は痛いだけかも知れないけど、何度も繰り返していればいずれ味わったことのない快楽に変わる……聖女だって同じだ。聖女を溺れさせようよ、この悦びに。君無しじゃ生きていけないくらいに……聖女と生きたいだろ……? フラン……フラン!」
「ガリオ……ンっ……」
フランシスカがガリオンの激しい抽送にたまらずシーツを握りしめるのと、彼女の中に彼が熱い飛沫を放ったのはほぼ同時だった。ひときわ強く腰を打ち付けたのち、大量の白粘液がどくどくとフランシスカへ注がれた。
溜まりに溜まった積年の思いは一度中に出しただけでは止まることはなく、フランシスカは一晩中彼の性の捌け口となった。
東の空に太陽が登り始める頃には肉体的にも精神的にもすっかり尽きてしまい、一睡もしていないフランシスカは城の執事にもたれかかるように帰宅した。ソレール公爵家の当主や長兄は彼女の姿に驚きはしたが、注意することはなかった。一夜を共にしたお相手は婚約者のゼルギウスしか考えられず、これで婚約破棄することはないと密かに安堵したくらいであった。
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