2 / 30
第二話
しおりを挟む
小太りの30代くらいの先生は、彼女の姿を目にするとフィリックスに問いただした。
「ノルダール君、誰だねこの子は」
「俺も分かりません。授業を終えて、いったん部屋に戻ろうとしたら廊下に倒れていたのでこの部屋に運んだのです。言葉は通じるし、武器を所有している様子もありませんでした」
フィリックスは少女を庇うように答える。
先生は彼女を舐め回すように凝視した。
「ふむ……で、性検は? 済んだのか?」
「はい、一通りは。諸外国からの流入者であれば、挿入するのはもうすぐ奴隷落ちの自分が適任かと思いましてね」
「ハッハッハ、たまには役に立つじゃないか」
先生はフィリックスの肩を軽く叩いた。
「良い、戻れ。この女はこのままにしておけぬ。審議にかけるから暫く同行してもらわねばならない。どれ、一緒に来て貰おう。悪いことはせん、見たところ繁殖可能年齢のようだからクラスの振り分けをするだけだ」
先生は手を差しだした。
少女はビクッとして思わずフィリックスに目配せをした。
レイプしていたとは言え、それ以外は傷つけるようなことを一切言わない落ち着いた青年だ。
全くの未知の世界へ来てしまったような彼女にとって、彼は唯一の顔と名前が一致する人物だ。
悔しいが、彼に頼らざるを得ない。
彼女の視線に気づき、彼はその場に立ち上がるよう促した。
足に力を込めると、下着をつけていない足の間から先ほど彼が出した白い精液と彼女の赤い破瓜の血が混ざりあって滴り落ちた。
「ご覧の様に貫通したばかりですのでお手柔らかに」
「ハッ……美味しいところ持っていったって訳か。録に子を成せない出来損ないが」
「やだなぁ、冥土の土産ですよ。俺内定入ってるんですからね、資産家の男性から。卒業したら死ぬまで毎日掘られるんですからちょっとは優しくしてくださいよ」
「黙れ種無し。おい、こっちだ女。何ぼーっとしてんだ。性検が済んでんなら直で本部だ。さっさと行くぞ」
「あ、は、はい……」
シャツとワンピースに急いで袖を通した。
フィリックスも似たデザインの服を着ており、恐らくこれが制服なのだろう。
ワンピースは肩紐が細くキャミソール型になっていて、調節できるようにアジャスターがついている。
ウエストをマークするものは無く、制服にしては随分とゆったりした着心地である。
先生が扉を開けると、やはりホテルのような廊下が広がっていた。
先生がいるということは彼の言う通り学校の一部で間違いないのだろう。
だからこそ恐ろしいのだが。
生徒が真っ昼間から女の子を犯しておいて何のお咎めもなく、むしろ役に立つなどと認めているなど、どう考えてもあり得ない。
ミナミの心に薄気味悪い嫌な気持ちが広がった。
しかし、今はいう通りにするしか生きる道はない。
フェリックスに目を向けると、にっこり微笑んで手を振っていた。
先生や他の男子生徒皆ネクタイをつけていたが、彼にはなかった。
代わりに、第二ボタンまで開けたシャツから鎖骨が綺麗に浮き上がって見えた。
「またな、えーと……名前は」
「南。みなみです」
「ミナミちゃんか。ありがとう、凄く気持ち良かった」
「えっ……!?」
面と向かってそんなことを言われたのは初めてで、いや、向かわなくても初めてでミナミは閉口した。
少しも照れず、真っ直ぐに性行為の感想を伝えてくるとは想像しておらず、彼女も何か褒めなければと思った。
「それは良かったです、お役に立てて……! ミナミも光栄です! あなたみたいなかっこいい人とできて……! ミナミは良くわからないけど、絶対上手な人だと思います! 全然痛くなくてとても気持ち良かったです!!」
それは事実で、心から感じた気持ちだった。
もっと乱暴に、否応なしに抱かれるものだと思っていたからレイプだと気づくのに時間がかかったくらいだ。
何より性欲にまみれた獣のような目付きでは全くなく、現に心を許してしまいそうになっている。
しかしそんなことは、何度も経験がありそうな彼に取ってみれば試行錯誤を重ねた末の当然の結果なのだろう。
気持ちいいなんて言われ慣れているに違いない。
ミナミは自嘲しながらそう思った。
けれど、フェリックスの態度は予想を裏切るものだった。
「そんなこと言ってくれるのは……おまえだけだ……」
「フェリックスさん?」
彼は先生に見えないよう、手で顔を覆って静かに涙を流していた。
(あれ? 変なこと言ったかな? 実はまだ経験が浅い人なのかも知れないしい、身体の相性もあるって言うしね)
ミナミは大して気に止めず、先生の後に付いていった。
その涙の理由を知るのはもう少し後になる。
「ノルダール君、誰だねこの子は」
「俺も分かりません。授業を終えて、いったん部屋に戻ろうとしたら廊下に倒れていたのでこの部屋に運んだのです。言葉は通じるし、武器を所有している様子もありませんでした」
フィリックスは少女を庇うように答える。
先生は彼女を舐め回すように凝視した。
「ふむ……で、性検は? 済んだのか?」
「はい、一通りは。諸外国からの流入者であれば、挿入するのはもうすぐ奴隷落ちの自分が適任かと思いましてね」
「ハッハッハ、たまには役に立つじゃないか」
先生はフィリックスの肩を軽く叩いた。
「良い、戻れ。この女はこのままにしておけぬ。審議にかけるから暫く同行してもらわねばならない。どれ、一緒に来て貰おう。悪いことはせん、見たところ繁殖可能年齢のようだからクラスの振り分けをするだけだ」
先生は手を差しだした。
少女はビクッとして思わずフィリックスに目配せをした。
レイプしていたとは言え、それ以外は傷つけるようなことを一切言わない落ち着いた青年だ。
全くの未知の世界へ来てしまったような彼女にとって、彼は唯一の顔と名前が一致する人物だ。
悔しいが、彼に頼らざるを得ない。
彼女の視線に気づき、彼はその場に立ち上がるよう促した。
足に力を込めると、下着をつけていない足の間から先ほど彼が出した白い精液と彼女の赤い破瓜の血が混ざりあって滴り落ちた。
「ご覧の様に貫通したばかりですのでお手柔らかに」
「ハッ……美味しいところ持っていったって訳か。録に子を成せない出来損ないが」
「やだなぁ、冥土の土産ですよ。俺内定入ってるんですからね、資産家の男性から。卒業したら死ぬまで毎日掘られるんですからちょっとは優しくしてくださいよ」
「黙れ種無し。おい、こっちだ女。何ぼーっとしてんだ。性検が済んでんなら直で本部だ。さっさと行くぞ」
「あ、は、はい……」
シャツとワンピースに急いで袖を通した。
フィリックスも似たデザインの服を着ており、恐らくこれが制服なのだろう。
ワンピースは肩紐が細くキャミソール型になっていて、調節できるようにアジャスターがついている。
ウエストをマークするものは無く、制服にしては随分とゆったりした着心地である。
先生が扉を開けると、やはりホテルのような廊下が広がっていた。
先生がいるということは彼の言う通り学校の一部で間違いないのだろう。
だからこそ恐ろしいのだが。
生徒が真っ昼間から女の子を犯しておいて何のお咎めもなく、むしろ役に立つなどと認めているなど、どう考えてもあり得ない。
ミナミの心に薄気味悪い嫌な気持ちが広がった。
しかし、今はいう通りにするしか生きる道はない。
フェリックスに目を向けると、にっこり微笑んで手を振っていた。
先生や他の男子生徒皆ネクタイをつけていたが、彼にはなかった。
代わりに、第二ボタンまで開けたシャツから鎖骨が綺麗に浮き上がって見えた。
「またな、えーと……名前は」
「南。みなみです」
「ミナミちゃんか。ありがとう、凄く気持ち良かった」
「えっ……!?」
面と向かってそんなことを言われたのは初めてで、いや、向かわなくても初めてでミナミは閉口した。
少しも照れず、真っ直ぐに性行為の感想を伝えてくるとは想像しておらず、彼女も何か褒めなければと思った。
「それは良かったです、お役に立てて……! ミナミも光栄です! あなたみたいなかっこいい人とできて……! ミナミは良くわからないけど、絶対上手な人だと思います! 全然痛くなくてとても気持ち良かったです!!」
それは事実で、心から感じた気持ちだった。
もっと乱暴に、否応なしに抱かれるものだと思っていたからレイプだと気づくのに時間がかかったくらいだ。
何より性欲にまみれた獣のような目付きでは全くなく、現に心を許してしまいそうになっている。
しかしそんなことは、何度も経験がありそうな彼に取ってみれば試行錯誤を重ねた末の当然の結果なのだろう。
気持ちいいなんて言われ慣れているに違いない。
ミナミは自嘲しながらそう思った。
けれど、フェリックスの態度は予想を裏切るものだった。
「そんなこと言ってくれるのは……おまえだけだ……」
「フェリックスさん?」
彼は先生に見えないよう、手で顔を覆って静かに涙を流していた。
(あれ? 変なこと言ったかな? 実はまだ経験が浅い人なのかも知れないしい、身体の相性もあるって言うしね)
ミナミは大して気に止めず、先生の後に付いていった。
その涙の理由を知るのはもう少し後になる。
0
あなたにおすすめの小説
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
【美醜逆転】ポジティブおばけヒナの勘違い家政婦生活(住み込み)
猫田
恋愛
『ここ、どこよ』
突然始まった宿なし、職なし、戸籍なし!?の異世界迷子生活!!
無いものじゃなく、有るものに目を向けるポジティブ地味子が選んだ生き方はーーーーまさかの、娼婦!?
ひょんなことから知り合ったハイスペお兄さんに狙いを定め……なんだかんだで最終的に、家政婦として(夜のお世話アリという名目で)、ちゃっかり住み込む事に成功☆
ヤル気があれば何でもできる!!を地で行く前向き女子と文句無しのハイスペ醜男(異世界基準)との、思い込み、勘違い山盛りの異文化交流が今、始まる……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる