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前編
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「ルミエラ、お前との婚約は破棄する!」
婚約者様に、卒業パーティーでありふれた物語のセリフをガチで言われたワタクシ......。
ワナワナと、自分の手や唇が震えるのがわかる。
婚約を破棄する!ーーザワつく空気をぶった斬る刃が炸裂した。
「バカだバカだと思っていたけれど、本物のバカなのね、おまえはっ」
刃の主は、ルミエラ本人である。
「......なっ、この俺に言っているのかっ!!」
腕に懇意の伯爵令嬢を絡ませて声をあらげる婚約者、もとい、元婚約者様。
こんなバカでも、王族、国王の第四王子。
末息子で甘やかされたのか、勉強はしないし、女遊びにうつつを抜かすアホなのだ。
アホの癖に権力を持っていて、悪知恵だけは働く始末に終えない輩である。
「おまえ以外にどこにバカがいるの?」
扇子で口元を隠し、ニヤリと笑いながら返答をする。
「くっ......、貴様がそのように可愛げもないから、俺に好かれなくても当然だろう。少しはこのカリアを見習ったらどうだっ」
バカに持ち上げられた伯爵令嬢は、顔をポッと赤く染めて、わざとらしく恥じらっている。
ああ、時間がもったいないので止めを刺しに行こう。
「あら、お名前を呼ばれているのですね。
仮にも婚約者だったワタクシには、おまえだの貴様だのなのに。
さすが勉学もせずに校舎で乳くりあっている間柄ですね。
あ、こういう勉強をしにこられたんです?
ならば、娼館にでも行かれれば宜しいのに」
「わ、私たちはそんなことしていませんっ、言いがかりですっ......。
そうやって、わたしを娼婦扱いして、恥をかかせて楽しいのですか」
目をうるうるさせて、伯爵令嬢が悲鳴に似た声をあげた。それに呼応してバカ王子がまくし立てる。
「俺たちは『真実の愛』で結ばれている。
おまえの言うようなことは一切ない。
王族を侮辱してただですむと思うな」
お金を払えばいいのね。ふんっ。金貨を顔に思いっきりぶつけてやろうかしら。
怒気をあらげるおバカさんに冷静に冷や水を、確実に浴びせていく。
「王族を侮辱ねぇ。
......王族に専用の影がいるのは知ってます?」
「影?」
きょとんとしている。
「そう、影」
「へっ?」
今はじめて知ったような、間抜けな声を出す二人。
まさか、年頃の王族なのに知らないのか......。
「影の仕事は極秘任務なので、一公爵家に情報を提供するようなことはないけれど、
ワタクシに関する事項であったので、陛下から我が家に報告を受けていたのですよ。
あ~んなことや、こ~んなことまで」
呆けた顔に吹き出しそうになるのをこらえて、ゆっくりと分かりやすく説明するのを心がける。
ほら、この人たち理解力ゼロじゃない?
「う......うそだっ、陛下からなんて、そんないいかげんな脅しは通用しないぞ!」
青い顔をして狼狽するバカ王子。疚しいことがないなら、堂々としていればいいのにね。
「あら、影の仕事は毎日王宮に報告されるんですのよ。
証拠と共に。そもそも、貴様と婚約しても我が家にはなんの得もないの。
陛下から頼まれて仕方なく引き受けた婚約であるのに、
ワタクシがバカな貴様に一目惚れして婚約をねじ込んだとか、
おめでたい妄想を炸裂させているんですもの。
ご自分が素でモテるとでも思った?」
そして、伯爵令嬢にもこう問いかけた。
「そこの、被害者ヅラしたバカ子さんも影の報告を全てバラされたい?」
黙ったまま、悔しそうに唇を噛んでバカ王子の腕をぎゅっと握りしめている。
お花畑の分際で、ワタクシを陥れようなんて100年早いですわ。
「学業を頑張った皆様のための卒業パーティーを私事で台無しにして、一生の嫌な思い出にするつもりなんですの?」
ここで、やっと二人は周囲を見る。
「あ......」
学園の最後の日、これから別々の道を歩んでいく友達と最後の思い出に楽しく語らうパーティーをぶち壊したことに、今更ながら気がついたのか、周囲の冷ややかな視線に二人は言葉を無くして立ちつくす。
「......陛下、ということで婚約は公式に破棄になりました。
ワタクシはこれ以上この王子とかかわり合いたくはありませんわ。
ホント、学園の3年間、ワタクシの青春が台無しだわ。
代償は高くつきましてよ。後は父上と協議していただいてよろしいでしょうか。ね、陛下」
騒ぎの間にこっそり入ってきて成り行きを見ていたのだろう。いつの間にか特別貴賓席に着席していた陛下に綺麗な礼をし、二人を回収してくれるよう促した。
だって、今日はみんなの別れの日、旅立ちの日。
こんなことで、ワタクシ達の学園最後の思い出にケチをつけられたくないわ。
騎士に身柄を拘束されどこかに消えていった二人。こっぴどく叱られるのかしら。おバカさんの事など今はどうでもいいわ。
「皆様、ワタクシのバカな元婚約者が大変ご迷惑をお掛け致しました。
パーティーを台無しにしたお詫びに、ささやかなプレゼントをご用意しました。
帰るときに受付で受け取ってくださいませ。
さあ、仕切り直して楽しみましょう」
この言葉が合図となり、再開された卒業パーティーは例年になく盛り上がった。きっと、ワタクシを見るたびに卒業式の話題になり面白おかしく語られるのだろう。
それも悪くないわね。くすっ。
婚約者様に、卒業パーティーでありふれた物語のセリフをガチで言われたワタクシ......。
ワナワナと、自分の手や唇が震えるのがわかる。
婚約を破棄する!ーーザワつく空気をぶった斬る刃が炸裂した。
「バカだバカだと思っていたけれど、本物のバカなのね、おまえはっ」
刃の主は、ルミエラ本人である。
「......なっ、この俺に言っているのかっ!!」
腕に懇意の伯爵令嬢を絡ませて声をあらげる婚約者、もとい、元婚約者様。
こんなバカでも、王族、国王の第四王子。
末息子で甘やかされたのか、勉強はしないし、女遊びにうつつを抜かすアホなのだ。
アホの癖に権力を持っていて、悪知恵だけは働く始末に終えない輩である。
「おまえ以外にどこにバカがいるの?」
扇子で口元を隠し、ニヤリと笑いながら返答をする。
「くっ......、貴様がそのように可愛げもないから、俺に好かれなくても当然だろう。少しはこのカリアを見習ったらどうだっ」
バカに持ち上げられた伯爵令嬢は、顔をポッと赤く染めて、わざとらしく恥じらっている。
ああ、時間がもったいないので止めを刺しに行こう。
「あら、お名前を呼ばれているのですね。
仮にも婚約者だったワタクシには、おまえだの貴様だのなのに。
さすが勉学もせずに校舎で乳くりあっている間柄ですね。
あ、こういう勉強をしにこられたんです?
ならば、娼館にでも行かれれば宜しいのに」
「わ、私たちはそんなことしていませんっ、言いがかりですっ......。
そうやって、わたしを娼婦扱いして、恥をかかせて楽しいのですか」
目をうるうるさせて、伯爵令嬢が悲鳴に似た声をあげた。それに呼応してバカ王子がまくし立てる。
「俺たちは『真実の愛』で結ばれている。
おまえの言うようなことは一切ない。
王族を侮辱してただですむと思うな」
お金を払えばいいのね。ふんっ。金貨を顔に思いっきりぶつけてやろうかしら。
怒気をあらげるおバカさんに冷静に冷や水を、確実に浴びせていく。
「王族を侮辱ねぇ。
......王族に専用の影がいるのは知ってます?」
「影?」
きょとんとしている。
「そう、影」
「へっ?」
今はじめて知ったような、間抜けな声を出す二人。
まさか、年頃の王族なのに知らないのか......。
「影の仕事は極秘任務なので、一公爵家に情報を提供するようなことはないけれど、
ワタクシに関する事項であったので、陛下から我が家に報告を受けていたのですよ。
あ~んなことや、こ~んなことまで」
呆けた顔に吹き出しそうになるのをこらえて、ゆっくりと分かりやすく説明するのを心がける。
ほら、この人たち理解力ゼロじゃない?
「う......うそだっ、陛下からなんて、そんないいかげんな脅しは通用しないぞ!」
青い顔をして狼狽するバカ王子。疚しいことがないなら、堂々としていればいいのにね。
「あら、影の仕事は毎日王宮に報告されるんですのよ。
証拠と共に。そもそも、貴様と婚約しても我が家にはなんの得もないの。
陛下から頼まれて仕方なく引き受けた婚約であるのに、
ワタクシがバカな貴様に一目惚れして婚約をねじ込んだとか、
おめでたい妄想を炸裂させているんですもの。
ご自分が素でモテるとでも思った?」
そして、伯爵令嬢にもこう問いかけた。
「そこの、被害者ヅラしたバカ子さんも影の報告を全てバラされたい?」
黙ったまま、悔しそうに唇を噛んでバカ王子の腕をぎゅっと握りしめている。
お花畑の分際で、ワタクシを陥れようなんて100年早いですわ。
「学業を頑張った皆様のための卒業パーティーを私事で台無しにして、一生の嫌な思い出にするつもりなんですの?」
ここで、やっと二人は周囲を見る。
「あ......」
学園の最後の日、これから別々の道を歩んでいく友達と最後の思い出に楽しく語らうパーティーをぶち壊したことに、今更ながら気がついたのか、周囲の冷ややかな視線に二人は言葉を無くして立ちつくす。
「......陛下、ということで婚約は公式に破棄になりました。
ワタクシはこれ以上この王子とかかわり合いたくはありませんわ。
ホント、学園の3年間、ワタクシの青春が台無しだわ。
代償は高くつきましてよ。後は父上と協議していただいてよろしいでしょうか。ね、陛下」
騒ぎの間にこっそり入ってきて成り行きを見ていたのだろう。いつの間にか特別貴賓席に着席していた陛下に綺麗な礼をし、二人を回収してくれるよう促した。
だって、今日はみんなの別れの日、旅立ちの日。
こんなことで、ワタクシ達の学園最後の思い出にケチをつけられたくないわ。
騎士に身柄を拘束されどこかに消えていった二人。こっぴどく叱られるのかしら。おバカさんの事など今はどうでもいいわ。
「皆様、ワタクシのバカな元婚約者が大変ご迷惑をお掛け致しました。
パーティーを台無しにしたお詫びに、ささやかなプレゼントをご用意しました。
帰るときに受付で受け取ってくださいませ。
さあ、仕切り直して楽しみましょう」
この言葉が合図となり、再開された卒業パーティーは例年になく盛り上がった。きっと、ワタクシを見るたびに卒業式の話題になり面白おかしく語られるのだろう。
それも悪くないわね。くすっ。
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