王命なんてクソ喰らえ、ですわ。

こだま。

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後編

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 波乱の卒業パーティーが終わり、受付で記念品を受けとる卒業生たちの向こうに見知った姿があった。

「アランお兄様、いついらっしゃって?」

 お兄様の元に小走りで駆け寄る。

「ん~、実は最初から。面白い余興が見られて、腹がよじれたよ」

 くっくっくっ......と笑いながらワタクシを見る優しい大好きな笑顔。
この国の第三王子で本当のワタクシの婚約者のアランお兄様 。

「いやだわ、見ていらっしゃったんですか。
声をかけてくだされば良かったのに」

 ワタクシだって乙女ですもの。好きな人の前でアレは恥ずかしいわ。

 アランお兄様とは3歳違いで、子供の頃は妹のように可愛がってもらった。
 お兄様は、ワタクシの家、ブラックライト公爵家を継ぐために隣国へ6年間留学されていた。
 王家の四兄弟は第四王子を除き皆優秀で、特に文武に優れたアランお兄様が我が公爵家にと望まれた理由は、我が家の特殊さにあった。

 そう、代々影の頭領は降下した王族の我が家が引き継いでいる。王族のスキャンダル等を牽制するためでもあるけれど、情報も宝だと父上がいつもおっしゃっている。

 ワタクシは公爵令嬢ではあるけれど、お兄様が留学していた経済大国である隣国の王女であった母上と国王の弟である父上の娘。
 情報処理や危機管理の勉強のため父上が留学中に二人は出会い、父上が母上に一目惚れして大恋愛の末、ワタクシが生まれた。
 父上が子供の居なかった前王弟の大叔父様の養子となり、ブラックライト公爵家を継いだのだ。

 「今日のルミエラは一段と綺麗だね。
僕の送ったアクセサリーがよく似合う」

「ふふ、ありがとうございます。
今度は一緒のパーティーで、アランお兄様のくださったお兄様色のものを身に付けたいですわ」

 ワタクシ、冒頭でビビられておりますけれど、好きな殿方の前では、しっかり女子ですから。
 お兄様の笑顔にさっきのささくれた心も癒されて、お兄様の馬車で屋敷に帰った。

さて、ワタクシが何故、第四王子の婚約者(仮)になったのか。
面倒ですけれど、ご説明いたしますわ。陛下からのたってのお願いで父上が決めてしまったの。
 アランお兄様との正式な婚約の発表は、学園を卒業するまで待って欲しいと。
 第四王子の素行に不安があったのか、側近を付けるだけでは十分ではないと判断し、女避けの為に在学期間中、婚約者ということにしてくれと言うことだった。
もちろん、第四王子は知らない事だ。
 まあ、我が家は影の頭領家。王家を守るのは仕事であるので断ることもしなかった。

 しかし、表の防御努力もむなしく、第四王子という身分によってたかる虫のごとく湧く令嬢のステルス突破力にまんまとからめとられ、色恋スキャンダルを起こしてしまった。
 最初から男子校に入れて、男子にもまれてガチムチに鍛えれば良かったのに、陛下も王妃様も末っ子に甘い親バカであったのだろう。

 その第四王子は卒業から半年後、件の伯爵令嬢と結婚し、伯爵家に入った。
 もう、彼女しか嫁のなり手がないわよね。
王籍を離脱するときに、爵位が低いから嫌だと駄々をこねたらしい。
そして、伯爵令嬢が他にも恋人がいたのが明るみになり、夫婦仲は新婚早々よろしくないようだ。
 しかし、『真実の愛』を主張し迷惑をかけまくったお陰で離縁は許されなかった。
お互い様なので、案外気があっていると思うけれど。
真実の愛って似た者同士を引き寄せるのね。

ワタクシは本来の婚約者、アランお兄様と正式に婚約、1年後に結婚した。
アランお兄様はこの日を見越して、着々と準備をしていたようで、思っていたより早く結ばれることになった。

 周囲から祝福されて、お兄様から愛されて、娘と息子を授かりとても幸せだ。
あの婚約期間(仮)が何だったのかと思う。マジ、青春返せ。バカヤロウ。

 王命で......なんて、クソ喰らえ、ですわ。








おわり



***** 番外編 *****

パパン
「兄上が変な提案するから、私まで娘や妻に嫌われたじゃないか。どうしてくれるんだ」
陛下
「私とて、王妃に怒られ王子たちにシカトされて針のむしろだ......」
パパン
「兄上は自業自得だろ......」
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