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73.真相
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シャルルはぞんざいに衛兵の制服を掴んだ。いつものいかにも貴族というような正装も似合っているけれど、これはこれでまた違った趣があっていい。彼は完璧に着こなしている。
「お前の話で“閣下”の正体がエミリアンだと分かった。だったら、処女に執着するあの人があのまま引くとは思えなかったからな」
「えっ」
きょとんとするアネットを尻目に、シャルルは話を続ける。
「公爵家にいるお前に手を出すことは、理論上不可能だ。いくらあの人でも、プランタン家に乗り込むことはしないだろうからな。けれど、舞踏会なら隙をついて攫うことも、できなくはない。お前から誘惑されたということにして既成事実を作ってしまえば、あとはもう婚姻させるしかなくなる」
令嬢の純潔は重んじられるものだと、マナー講習の際に習った。だから強引にもエミリアンは迫ってきたのだろう。
「ここを一番警戒すべきだとオリアンヌ様に進言したら、まあ、こうなった」
「オリアンヌ様はなんと仰ったのですが?」
「……『ご身内の恥はご身内で処理なさい』とのことだ」
なるほど、確かにあのオリアンヌらしい物言いである。
「待って」
返されたネックレス。約束よりも短い期限。用意されていた純白のドレス。
一見ばらばらに見える物事、その全てが繋がった気がした。
――そもそも信じたのか。この私の言うことを。
そうわざと突き放すように、言ったのだとしたら。
「もしかして、わたしをエミリアン様から守るために、あの家にやったんですか」
今の話を総合するとそうなる、気がする。カヴェニャックの屋敷ならエミリアンは自由に出入りが出来てしまうけれど、公爵家ならそうではないから。
「さあな」
さっと逸らされた紫の瞳が、もう答えだろう。
「だったら、なんでそう言ってくれなかったんですか!」
この人は、どうしてそう、いつも一番大事なことは言ってはくれないのか。
もっとほかに言い様があっただろうに。
「言って何になる」
俯いた金色の睫毛の影が、すべらかな頬に落ちる。
「さあ、もう行くぞ。僕はお前を、オリアンヌ様のところに無事に帰さないといけない」
促すように差し伸べられた手をぎゅっと掴む。そしてそのままぐっと自分の方へと引き込んだ。バランスを崩したシャルルが、カウチの上に倒れ込んでくる。
「なんのつもりだ」
しかめっ面がアネットを睨む。
そう、シャルルは悪魔のように美しく頭が回るが、その実不意打ちには結構弱いのである。前にキスした時もそうだった。
「いやです」
肩に手を突いて端整な顔を覗き込めば、まるでアネットが押し倒したような格好になる。どう考えても淑女の作法ではない。それぐらいは分かっている。
「お前の話で“閣下”の正体がエミリアンだと分かった。だったら、処女に執着するあの人があのまま引くとは思えなかったからな」
「えっ」
きょとんとするアネットを尻目に、シャルルは話を続ける。
「公爵家にいるお前に手を出すことは、理論上不可能だ。いくらあの人でも、プランタン家に乗り込むことはしないだろうからな。けれど、舞踏会なら隙をついて攫うことも、できなくはない。お前から誘惑されたということにして既成事実を作ってしまえば、あとはもう婚姻させるしかなくなる」
令嬢の純潔は重んじられるものだと、マナー講習の際に習った。だから強引にもエミリアンは迫ってきたのだろう。
「ここを一番警戒すべきだとオリアンヌ様に進言したら、まあ、こうなった」
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「……『ご身内の恥はご身内で処理なさい』とのことだ」
なるほど、確かにあのオリアンヌらしい物言いである。
「待って」
返されたネックレス。約束よりも短い期限。用意されていた純白のドレス。
一見ばらばらに見える物事、その全てが繋がった気がした。
――そもそも信じたのか。この私の言うことを。
そうわざと突き放すように、言ったのだとしたら。
「もしかして、わたしをエミリアン様から守るために、あの家にやったんですか」
今の話を総合するとそうなる、気がする。カヴェニャックの屋敷ならエミリアンは自由に出入りが出来てしまうけれど、公爵家ならそうではないから。
「さあな」
さっと逸らされた紫の瞳が、もう答えだろう。
「だったら、なんでそう言ってくれなかったんですか!」
この人は、どうしてそう、いつも一番大事なことは言ってはくれないのか。
もっとほかに言い様があっただろうに。
「言って何になる」
俯いた金色の睫毛の影が、すべらかな頬に落ちる。
「さあ、もう行くぞ。僕はお前を、オリアンヌ様のところに無事に帰さないといけない」
促すように差し伸べられた手をぎゅっと掴む。そしてそのままぐっと自分の方へと引き込んだ。バランスを崩したシャルルが、カウチの上に倒れ込んでくる。
「なんのつもりだ」
しかめっ面がアネットを睨む。
そう、シャルルは悪魔のように美しく頭が回るが、その実不意打ちには結構弱いのである。前にキスした時もそうだった。
「いやです」
肩に手を突いて端整な顔を覗き込めば、まるでアネットが押し倒したような格好になる。どう考えても淑女の作法ではない。それぐらいは分かっている。
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