私が抱き続けた彼は~時を超えるアンドロイドは運命の博士を離さない~

藤原ライラ

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「んあああ……だめ……はかせ、やめっ……ああぁ!」
「やめてって言われても、もう止めてあげられないよ」

 律動は更に激しくなる。じゅぶじゅぶとした卑猥な水音を、私の鼓膜が確かに拾う。これは私の分泌液だけの音なのだろうか。

 博士の腰に足を絡める。汗ばんだ博士の肌と私の肌がぴたりと密着する。このまま境界がなくなって一つになれればいい。

「はかせ、はかせっ……ぁああん」
 官能に頭が支配されて、思考を塗りつぶしていく。珍しく眉根を寄せて博士が苦しそうな顔をする。

「オトハ、名前、呼んで。おねがい……っく」
「ソウ、イチロウ、んああっ」
「………ああ、オトハっ、オトハっ」

 箍が外れたように博士が腰を打ち付けてくる。抱き締める博士の腕も熱い。特殊軽量金属の体が、この腕の中で溶けていきそうになる。

 噛みつくように、博士が私の首筋に唇を押し付ける。その刺激で私はまた絶頂した。蠢く膣壁が収縮して、一段と圧迫感が強くなる。

「僕を受け止めて。オトハ」

 陰茎が脈打つようにどくんと大きくなって、博士が射精する。放たれる熱い奔流が私を満たす。
 力の抜けた博士の体が、私の上に倒れ込んでくる。肩で息をする博士を抱き締めたいのに、体が動かない。

 人間はみんなこんなことをしているのだろうか。
 私は、気持ちよくて、満たされて、でも苦しくてどうにかなりそうだった。

「博士は、よかった、ですか?」

「うん、とっても」
 何かを決めた目で、博士は私を真上から見下ろした。博士の額から散った玉のような汗が、私の頬を滑り落ちていく。

「これでもう、思い残すことはないや」
 名残を惜しむように、博士は癖の強い髪をかき上げて天井を仰いだ。

 博士は大きく一つ息を吐く。それはこの部屋に満ちた淫靡な雰囲気を吹き消してしまう。

「一度も言われた通りに片付けしなかったよね、ごめん」

「博士、一体何の話を……」

 そういえば、ずっと博士が研究していたもの。それはなんだったんだろう。

「シャツもいつも皺だらけにしてごめんね」
 博士が私をぎゅっと抱き締める。

「君の律儀なところも、一生懸命なところも、いっぱい叱ってくれるところも、大好きだった」

「はかせ……?」
 これではまるで、遺言じゃないか。

「ありがとう。僕の、僕だけの、HF-0108」

「博士、私は……」
 ずるりと、私の中から博士が出て行く。放たれた精の幾ばくかが流れ落ちる感覚がある。それさえ、体が打ち震えるほどの快楽だった。

 博士の手が私の項に伸びる。

「いやです。どうしてっ!!」
 アンドロイドには緊急停止用のスイッチがある。誤作動を起こした時に主人が止めるためのものだ。そして、HFタイプのそれは首の後ろにある。

 博士は私を止めようとしている。

「いや……はかせっ、ソウイチロウっ!!」
 長い指が、名残を惜しむように首筋を撫でる。

「そう、僕はソウイチロウ。君は、オトハ」
 額を合わせて博士が私の顔を見つめる。深くて澄んだ、青い瞳。

「……ぁ……やめ、てっ」
 抗いたいのに、絶頂したばかりの体は私の言うことを聞いてはくれない。うまく手足に力が入らない。こんなところまで人間を模倣しなくてもいいのに。

「おやすみなさい」

 何度も何度も、私に触れた指。

 抵抗虚しくスイッチは押される。ぼんやりと私の意識が泥に沈むようになる。博士の顔が霞の中に消えてしまう。

「いつかまた、会いに行くから」

 博士はやさしい目をしていたのに、なぜか泣き出しそうに見えた。

 そんな顔をするなら、私を最期まで一緒にいさせてくれればよかったのに。私はずっとあなたといたかったのに。

 けれど、私がそれを博士に伝えることはなかった。
 そうして私は長い長い眠りについた。
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