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第一部:私だけの物語
4.理想の相手―②
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結局何回かやって来たエステル様の誘いを断ることができなくて、私は文通を始めることにした。その時にはもう、私自身結構な興味が湧いていたせいもある。自分で払うと言ったけれど、聞き入れてもらえず料金はエステル様が出してくれた。
店を訪ねて手続きをしていると、真っ白い紙を一枚手渡された。いくつかの項目が書かれている。これが例の要望書か。
エステル様の言葉が蘇る。
――運命の相手を手に入れるのよ!!
一瞬、そう書いてしまいそうになった。さすがにこれはちょっと夢見がちがすぎている。私が十代の女の子なら、まだ許されたかもしれないけれど。
その後まったく手が進まずにいたら、店員の方が気遣うように私を見た。
「他の方は、どんな風に書かれていますか?」
ギンガムチェックの制服を着た彼女がにっこりと笑って答えてくれる。
「年齢や性別、ご趣味などを細かくご希望される方もおられますし、特にご希望がなければこちらで適当な方をお選びすることもできます」
完全にお任せもできるのか。だったらそれでいい。まるでサイコロを転がすようで、しっくりとくるような気がする。私は要望書に『お任せ』と書いた。
「お名前はどうされますか?」
本名でもいいが、文通用の名前を名乗る人も多くいるという。やんごとなきご身分の方なら、本名を名乗れない場合も当然多くあるだろう。
考えた末に、“キャロル”と書いた。愛称のキャロでも本名のキャロラインでもない、その間ぐらいの名前。
「こちらが文通用の封筒になります」
そうして渡されたのは真っ白な分厚い封筒だった。三通分あって、どれもAのエンブレムが刻印されている。この文通屋を象徴するようなものなのかもしれない。
「こちらの封筒にお相手にお渡ししたい便箋を入れてください。当店の封筒に入ったもの以外はお引き受けできません」
「三通以上出したい時は?」
「追加で封筒をご購入頂けます」
店先で同じ色の封筒が売られている。何の変哲もない封筒にしてはなかなか強気の値段設定だ。そこで、私はこの商売の構造を理解した。
文通屋の料金自体はそこまで高くない。けれど、気が合った相手と交わす手紙の数としてはひと月三通は少し少ない。相手が理想の相手であればあるほど、手紙の数は増えるだろう。よくできているなと思った。
「一週間以内に、お相手の方から手紙が届きます。お気に召さなければ違うお相手をお選びすることも可能です」
私も、そんな風に頻繁にやり取りをしたいと思えるような人と出会えるだろうか。
もし本当に運命なんてものがあって、それが当然のようにこの身にも与えられるのだとすれば、どれだけいいだろう。
そんなことを考えながら、私は文通屋を後にした。
店を訪ねて手続きをしていると、真っ白い紙を一枚手渡された。いくつかの項目が書かれている。これが例の要望書か。
エステル様の言葉が蘇る。
――運命の相手を手に入れるのよ!!
一瞬、そう書いてしまいそうになった。さすがにこれはちょっと夢見がちがすぎている。私が十代の女の子なら、まだ許されたかもしれないけれど。
その後まったく手が進まずにいたら、店員の方が気遣うように私を見た。
「他の方は、どんな風に書かれていますか?」
ギンガムチェックの制服を着た彼女がにっこりと笑って答えてくれる。
「年齢や性別、ご趣味などを細かくご希望される方もおられますし、特にご希望がなければこちらで適当な方をお選びすることもできます」
完全にお任せもできるのか。だったらそれでいい。まるでサイコロを転がすようで、しっくりとくるような気がする。私は要望書に『お任せ』と書いた。
「お名前はどうされますか?」
本名でもいいが、文通用の名前を名乗る人も多くいるという。やんごとなきご身分の方なら、本名を名乗れない場合も当然多くあるだろう。
考えた末に、“キャロル”と書いた。愛称のキャロでも本名のキャロラインでもない、その間ぐらいの名前。
「こちらが文通用の封筒になります」
そうして渡されたのは真っ白な分厚い封筒だった。三通分あって、どれもAのエンブレムが刻印されている。この文通屋を象徴するようなものなのかもしれない。
「こちらの封筒にお相手にお渡ししたい便箋を入れてください。当店の封筒に入ったもの以外はお引き受けできません」
「三通以上出したい時は?」
「追加で封筒をご購入頂けます」
店先で同じ色の封筒が売られている。何の変哲もない封筒にしてはなかなか強気の値段設定だ。そこで、私はこの商売の構造を理解した。
文通屋の料金自体はそこまで高くない。けれど、気が合った相手と交わす手紙の数としてはひと月三通は少し少ない。相手が理想の相手であればあるほど、手紙の数は増えるだろう。よくできているなと思った。
「一週間以内に、お相手の方から手紙が届きます。お気に召さなければ違うお相手をお選びすることも可能です」
私も、そんな風に頻繁にやり取りをしたいと思えるような人と出会えるだろうか。
もし本当に運命なんてものがあって、それが当然のようにこの身にも与えられるのだとすれば、どれだけいいだろう。
そんなことを考えながら、私は文通屋を後にした。
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