拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ

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第一部:私だけの物語

47.青い鳥

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 遠くに控えていた使用人達を、アラン様が呼び戻す。

「キャロライン嬢を屋敷までお送りしてくれ」

 男爵家の馬車に乗る直前に、アラン様が問うてきた。
「まだ何か気になることがあるかい?」

 私は本当に分かりやすいらしい。思っていることがすぐに顔に出てしまう。

「あ、大したことではないのですが」

 ただ気になっていたのだ。

「アラン様がキット様でないのなら、あの方の正体は一体、誰なのでしょう」

「ふむ」
 アラン様は顎に手を当てた。

「不思議なものだね。人の目は見たいものしか見ないというのに、一番見たいものが眼前に現れたら、逆に目を逸らしてしまうことがある」

 そのまま少しの間彼は考え込んでいた。そして、何か思いついたような顔をするとおもむろに口を開いた。

「青い鳥の話は知っているかな?」

 有名な童話だ。兄妹は幸せを象徴するという青い鳥を探して、様々なところを旅する。けれど結局捕まえられずに自分達の家へと戻る。すると、家にいた白い鳥が青い鳥になっている、そんなお話。

 この話が意味するのは、幸せは自分の身近にあるというメッセージだったはずだ。

 そっと肩を叩かれる。今までの色恋じみた仕草と違って、それは親愛に近かった。

「みっともないことこの上ないが、男というのはとかく主導権を取りたがるものなんだ」

 それはアラン様にも当てはまるのだろうか。決してそんな風には見えないのに。

「だから、往々にして自分自身を現実より立派に見せようとする。世慣れした態度を取ってみたり、大人のフリをしてみたりね」

 見上げれば、またにこりと彼は微笑んだ。

「キャロル」
 愛称が耳元で囁かれる。

「あなたは聡明な人だ。その目を真に開けてみれば見えるはずだよ。虚飾を取り払った、彼の本当の姿が」

「本当の、すがた……」

「さて、私から言えるのはここまでだ。健闘を祈っているよ」

 ひらりと手を振って、アラン様は美しく礼をした。

「ありがとうございます」

 最後まで、本当にアラン様は紳士だった。私の夢見た理想のおじ様のままだった。
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