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第二部:君の知らない物語
7.机の下の彼女
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そうこうしているうちに、僕が夢にまで見た十八歳を迎える日が来た。
ありとあらゆる準備をしてきたつもりだった。体も鍛えたし、侯爵たる父の仕事の手伝いだって十分にこなした。人付き合いは得意ではないけれど、社交にも手を抜かなかった。
今の僕にはもう、ひ弱な面影はどこにもない。
ちなみにこの歳になっても髭はほとんど生えなかった。体質らしい。もう少し貫禄が出るかと思ったのに、残念なことこの上ない。
これでやっと彼女に堂々と結婚を申し込むことができる、そう思っていたのに。
あろうことか、キャロラインは結婚相手を探して文通をはじめるという。まあ、事の発端は残念ながら我が母だったけれど。
長い付き合いだが、僕はキャロラインから手紙をもらったことはない。寮にいる間も、一度もだ。
『それを言うならキャロラインはもう、立派な行き遅れですよ』
なんだか無性にいらいらして、また心にもないことが口から出てきた。
家のことがあったからなのか、彼女が夜会に出席する回数は多くはなかった。キャロラインに誰も寄ってこないとしたら、夜会に出席している全ての男の目が節穴ということである。声を大にしてみんな気付けと言いたい。
けれど、そうやってキャロラインが見出されてしまったらどうだろう。僕は最愛の人が誰かの妻になるのを祝福しなければならない。だから、夜会の度に「誰にも見つかりませんように」と願わずにはいられなかった。
キャロラインはふわりと微笑むだけで、何も言い返してこなかった。
いつからだろう。こんな風になったのは。
あんなに明るかったキャロラインは、とてもおとなしくなった。
年相応に落ち着いたといえば、そうなのかもしれない。けれど、もう随分と笑った彼女を見ていない気がする。
いや、笑ってはいるのだ。でもそれは僕が好きなキャロラインの笑顔じゃない。何かを諦めて、手放した笑みだった。
明るい陽が差し込むはずの窓にはもうずっと、分厚いカーテンがかかっている。
その向こうで、小さなキャロラインは机の下に隠れて泣いている。
そんな気がしてならないのだ。
ありとあらゆる準備をしてきたつもりだった。体も鍛えたし、侯爵たる父の仕事の手伝いだって十分にこなした。人付き合いは得意ではないけれど、社交にも手を抜かなかった。
今の僕にはもう、ひ弱な面影はどこにもない。
ちなみにこの歳になっても髭はほとんど生えなかった。体質らしい。もう少し貫禄が出るかと思ったのに、残念なことこの上ない。
これでやっと彼女に堂々と結婚を申し込むことができる、そう思っていたのに。
あろうことか、キャロラインは結婚相手を探して文通をはじめるという。まあ、事の発端は残念ながら我が母だったけれど。
長い付き合いだが、僕はキャロラインから手紙をもらったことはない。寮にいる間も、一度もだ。
『それを言うならキャロラインはもう、立派な行き遅れですよ』
なんだか無性にいらいらして、また心にもないことが口から出てきた。
家のことがあったからなのか、彼女が夜会に出席する回数は多くはなかった。キャロラインに誰も寄ってこないとしたら、夜会に出席している全ての男の目が節穴ということである。声を大にしてみんな気付けと言いたい。
けれど、そうやってキャロラインが見出されてしまったらどうだろう。僕は最愛の人が誰かの妻になるのを祝福しなければならない。だから、夜会の度に「誰にも見つかりませんように」と願わずにはいられなかった。
キャロラインはふわりと微笑むだけで、何も言い返してこなかった。
いつからだろう。こんな風になったのは。
あんなに明るかったキャロラインは、とてもおとなしくなった。
年相応に落ち着いたといえば、そうなのかもしれない。けれど、もう随分と笑った彼女を見ていない気がする。
いや、笑ってはいるのだ。でもそれは僕が好きなキャロラインの笑顔じゃない。何かを諦めて、手放した笑みだった。
明るい陽が差し込むはずの窓にはもうずっと、分厚いカーテンがかかっている。
その向こうで、小さなキャロラインは机の下に隠れて泣いている。
そんな気がしてならないのだ。
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