真紅の瞳と小さな灯

夜明けのハリネズミ

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「がんたん」

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 新しい年の朝。
 洞窟の中はまだ薄暗かったが、外の空気は冷たく澄んでいて、どこか神聖な雰囲気が漂っていた。

 リナは早起きして、焚き火を囲んで何かを準備しているようだった。
 その音に気づいたリューが、奥から顔をのぞかせる。

「リナ、朝から何をしている?」

「リュー! おはよう!」

 リナは振り返り、笑顔を浮かべた。

「今日は元旦だよ! 新しい年が始まったから、初日の出を見に行こうと思って。」

「初日の出……?」

 リューは首をかしげた。

「ただの太陽だろう。それを見るために寒い中を出るのか?」

「ただの太陽じゃないよ! 一年の始まりを祝う特別な日なんだから、太陽にお願い事をするの!」

「願い事か……。」

 リューはリナの熱意に渋々付き合うことにした。

 リナとリューは雪の中を歩きながら、洞窟の上にある高台を目指した。
 リナの足が雪に埋もれるたびに、リューが後ろから彼女を引き上げる。

「お前、本当にこれが楽しいのか?」

「もちろん!」

 息を切らしながらも笑顔のリナを見て、リューは小さく鼻を鳴らした。

「俺には理解できないな。」

「リュー、文句ばっかり言わないの!」

 高台に到着すると、東の空が少しずつ明るくなり始めていた。
 リナはその場に座り込み、両手を合わせて空を見つめた。

「きれい……。」

 冷たい空気の中、水平線から真っ赤な太陽がゆっくりと顔を出す。
 その光が雪に反射して、世界全体が金色に輝くようだった。

 リューは黙ってその光景を見つめていたが、ふと隣のリナが手を合わせて何かを呟いているのに気づいた。

「何をしているんだ?」

「願い事をしてるの。」

 リナは目を閉じ、静かに呟くように言った。

「今年もリューと一緒に、楽しい一年になりますように……って。」

 リューはその言葉を聞いて一瞬黙り込んだ。

「……そんな簡単に願いが叶うと思うのか?」

「うん、叶うと思うよ。」

 リナは目を開けてリューを見上げた。

「だってリューがいるもん。」

 その言葉に、リューは照れくさそうにそっぽを向いた。

「俺がいればどうにかなると思ってるのか……お前は甘いな。」

「そう思ってるよ!」

 リナは笑顔で答えた。その無邪気な笑顔に、リューは少しだけ心が温かくなるのを感じた。

 帰り道、リューはふと空を見上げながら言った。

「リナ。」

「なに?」

「今年も、お前を守る。それだけは約束する。」

 リナは少し驚いた顔をした後、満面の笑みを浮かべた。

「ありがとう、リュー! 私も、リューと一緒にずっと楽しい時間を作るよ!」

 リューは返事をせず、ただ前を向いて歩き続けた。

 新しい年の始まり。
 冷たい風が吹き抜ける中、二人の心には小さな温かさが宿っていた――。
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