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月が降り立つ
第8話 孤独と涙の夜
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この日も、私は一日中引きこもるつもりでいた。アイが心配してくれた。
「湯浴みやお食事はどうなさいますか?」
「何もいらないから、今日は放っておいて」
すべて断り、ベッドに潜り込む。
昨日のことが頭から離れない。あの庭で見た二人の光景が、何度もまぶたの裏に浮かんでは消える。
あの二人は、とてもお似合いだった。カリュゥムもィレューネも、どこか現実離れした美しさで、まるで絵画の中の登場人物のようだった。二人とも背が高く、品格があり、髪も目も美しい光を放っていて、どこまでも輝いて見える。私なんて比べものにならない。
私が、あの二人の間に入れるはずがない。彼にとって、私はただの慰みなのかもしれない…そんな考えが頭を巡り、心が重く沈んでいく。
なぜか涙がぽろぽろと溢れてきた。頬を伝う涙を止めることができず、私はただ静かに泣いていた。
「なぜ泣いている」
突然声がして、驚きとともに私は跳ね起きた。思わず周囲を見回すと、そこにはカリュゥムが立っていた。
「えっ?!誰も入れないでってお願いしたのに…」
彼はバルコニーを指さし、にやりと微笑む。その姿を見て、私は妙に納得してしまった。さすが王様というか、そういえばバルコニーがあったことすら忘れていた。けれど、私は彼に会う心の準備ができていなくて、慌てて掛け布団を頭まで引き上げた。
「ご飯も食べてないと聞いた。侍女からも、お前が昨日俺とィレューネに会いに行こうとしていたが、様子がおかしかったと聞いたが…また嫌なことでもあったか?」
「私の心の問題です」
布団の中からそう答えたが、カリュゥムの気配がまったく動かない。彼の視線がしっかりとこちらを見据えているのが感じられる。
「この蜜を飲め。栄養価が高い」
彼が手にしていたカップをこちらに差し出すが、私は顔を背けて拒んだ。
「嫌です!」
力いっぱいに抵抗する私に、カリュゥムはわずかに苦笑しながら、飲み物を自ら口に含むと、突然私に顔を寄せてきた。あっという間に口移しで蜜を飲まされ、口の中に流れ込んでくる甘い液体が喉を通るたびに、体の奥からじんわりと熱くなっていく。私は涙を浮かべながら彼の胸を叩く。
「嫌って言ったのに!」
カリュゥムは少しも動じることなく、私の体を押さえつけると、そのまま布団の中に入ってきた。彼の指先が優しく太ももを撫でると、私の体は自分の意思に反して反応してしまう。ぬるりとした感覚が触れるたびに、私は身をよじって抗おうとするが、その後のことは次第に記憶がぼんやりと曖昧になっていく。
翌朝、目を覚ますと、カリュゥムが私の顔をじっと見つめていた。まるで何かいたずらが成功したような満足げな表情で、私が目を開けた瞬間、少し口元を緩めて微笑む。
「許しません」
私がそう言うと、彼はさらににやりと笑みを深める。
「初めてやったんだ」
「初めてなんですか?」
「君がしてくれたじゃないか。嬉しかったから俺もしてみたんだ。どうだった?」
その言葉に私は少し照れながら、つい素直に答えてしまう。
「…良かったです」
すると、彼は満足げに私を抱き寄せ、優しく額にキスを落とした。
「君以外にはしないよ」
「皇后様にも?」
私は何気なく尋ねたが、カリュゥムは首をかしげた。どうやら、彼にとって皇后とは今そういう関係にはないらしい。それどころか、彼の表情には少し戸惑いが浮かんでいる。
「あれとはもうしない。そもそも…できない」
「そうなんですか?」
「ィレューネは戦友だ」
その言葉を聞いたとき、胸の奥でほっとしたような気持ちが広がるのを感じた。
カリュゥムは私を見つめたまま、少し表情を曇らせ、低い声で囁いた。
「俺はお前に全てを与える。だから拒むな。俺はお前を愛している。1日でも会えないと寂しくて、胸が張り裂けそうだった。何度も扉の前で、君が開けてくれるのを待っていた」
そう言って、彼はゆっくりと私の胸に顔を埋め、まるで甘えるようにその体を寄せてきた。カリュゥムがこうして心をさらけ出すのは珍しいことで、私は少し驚いた。それと同時に、彼もまた孤独を抱えているのだと気づき、胸が温かくなる。
その瞬間、気持ちが抑えられなくなり、再び彼と熱い時を過ごすことになった。
そして、再び甘い蜜を口移しで口に注がれ、気がつくと、私は彼の手を握りながら上に乗っていた。突然扉が開かれる音がして、私は振り返る。そこには、驚いた表情のィレューネが立っていた。彼女の冷たい視線が私を射抜くように見つめ、顔から火が出そうになるほど恥ずかしくなる。
「あっ…え?…」
「…お、お取り込み中のようね」
ィレューネは冷静さを装いながらも、何かを悟った様子で扉を静かに閉じて出ていった。私はその場で赤面し、恥ずかしさで胸がいっぱいになってしまった。
「気にするな続けよう。」
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