グラジオラスの恋

ノクス

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食後は魔の時間である。
要するに眠気との戦いだ。タイガでも多少眠くなる時間帯なのだからユキオは更に辛いだろう。案の定、頭がグラグラと揺れる様子が後ろからよく見えた。
どうせ起こしたところで寝るのだからと起こすことはせずタイガは真面目に授業に取り組むことにした。

結局タイガは無事眠ることなく授業を終えたが、ユキオはしっかりばっちり眠っていた。最後の授業では感想文を書くよう指示されたのだが、ユキオは用紙が回ってくるまで起きなかったらしい。前の席の奴が困ったように小さく名前を呼んでいるのが聞こえていた。
さて、授業を終えればあとはホームルームだけである。
しかしその前にタイガにはやることが残されていた。さっきの感想文を集めて持ってくるよう頼まれているのだ。
ボーっと前を向いていたので教師とばっちり目があったせいだ。学校では割とよくある光景だろう。
まぁ、それが終われば今度こそ学校から解放される。
今日は部活もないのでタイガの部屋でユキオとゲームでもしようという事になっているのだ。
さっさと教師のところに提出してこようとタイガはプリントを持って立ち上がった。






「終わった終わった」
無事感想文を提出してきたタイガは荷物取りに教室へと戻ってきた。
「おー、オツカレ」
声をかけてきたのは同じ柔道部のヤツだった。
部活がないからか、同じ部活のメンバーで集まってなにやら話し込んでいたらしい。
「おう!……あれ?ユキオ知らね?」
教室内にいたのは数名だけでその中に当のユキオが見当たらない。
タイガの言葉でユキオの席を振り返った面々は首を傾げた。
「あれ?さっきまでいたぞ。多分トイレじゃね?」
「そっか」
なら少し待っていようと、タイガがメンバーの横を通り抜けようとするとその内の一人に阻まれた。
「なあなあ!」
「どしたー?」
「これ!タイガも読む?」
言われて初めて彼らが何か雑誌を回し読みしていたらしいことを知る。何を読んでいるのかと視線を向ければばっちりと肌色ばかりのページが目に入った。
所謂ちょっと過激なグラビア雑誌というヤツだった。教師達に見つかれば没収物だろうに堂々と広げる辺り肝が座っている。
タイガはというと、ついと眉をひそめながら首を横に振った。
「いらん。俺そーいうの興味ねー」
言った瞬間周りからはブーイングが飛んだ。
「はぁー!?」
「付き合い悪りぃぞタイガ!」
「しらん。稽古なら付き合うぞ!」
「出たー、柔道バカ」
それぞれが好き勝手に言う中、一人が小声で囁いた。
「ねー、マジでタイガそっちなの?」
なんだかワクワクしたような、落ち着かない様子に首をひねる。
「そっちってどっちよ?」
言っている意味がイマイチ分からない。純粋に理解出来ないタイガが聞き返すとそう返ってくるとは思わなかったのか、相手は言いにくそうにもごもごと言葉を濁す。
「だからぁー……」
それ自体は理解出来なかったが、ちらりとユキオの机がある方を見たことで何となく状況を察した。
要するに、ユキオとの仲を疑われているわけだ。
「違ぇーっての!」
「あー何、藤崎の話?」
「そ!」
それだけでユキオのことだと把握した面々が話に食いついてくる。
「あいつ顔だけは滅茶苦茶良いもんなぁ」
俺の彼女よか美人だもん、と付け足す。
わざわざ彼女を落として話すような内容じゃない。タイガはそこでまた顔をしかめた。
彼らは同じ部活仲間として勿論大事だと思っているがそれはそれ、これはこれである。
そういう態度はあまり好きじゃなかった。
しかし話は盛り上がったようでざわざわとユキオの話が続く。
「色白だしさぁ、まつげなげーじゃん?さっき用紙を後ろに回す時あいつ下向いてたから余計に長く見えてちょっとドキッとしたもん」
「分かるー。なーんか色っぽい時あるよなー。着替えの時とか後ろから見るとなんかクるよな」
前からだと完全男だけど、と付け足すと周りからどっと笑いが漏れた。
ゲラゲラと笑って周りが盛り上がれば盛り上がる程、タイガの気分は冷めていく。
何がおかしいのかさっぱり分からない。それよりも彼らの色めき立った声が不快だった。
「……だから?」
自分でも驚く程低い声が出た。
その声にビクリと肩を揺らした面々は恐る恐るという様子でタイガをふり仰ぐ。
元々タイガが高身長な上に相手は皆椅子に座っているので更に差が出来ていた。
それを冷めた目で見下ろす。体格差のせいか、それともいつもは穏やかなタイガが無表情だからか、彼らの空気は完全に萎縮していた。

タイガにとってユキオは大事な幼馴染みだ。
彼が幼い頃から、本人の意思とは関係なくトラブルに巻き込まれているのを見てきた。
だからこそタイガはユキオを守ろうと思ったし、今もそう思っている。ユキオのことを馬鹿にされるのは自分の事のように不快だ。
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