ゴーレム使いの成り上がり

喰寝丸太

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第一部 ハンター初心者編

第4話 ハンター生活

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 皮鎧を着込み背負い鞄を持った。
 気分だけは一人前のハンターだ。
 他に必要な物はえーと弁当がいる。
 それと獲った獲物を積む荷車だ。
 弁当を適当な屋台で買い込み、ギルドでハンターに貸し出している荷車があったのでそれを借りる。
 荷車をゴーレムに引かせ南門から草原に向かう。



 草原には幾人かのハンター見習いの子供がホーンラビットを狩っていた。
 子供の仕事から早く卒業したい。



「そろそろホーンラビットが出てくるはずだ警戒を頼む」

「あそこに巣穴から顔を覗かせたホーンラビットがいます」

 ホーンラビットは中型犬ぐらいの角の生えた兎で魔獣ではない魔石が無いからだ。
 自分より弱いと見た相手には体当たりをしてくる。



 ゴーレムをホーンラビットに近づけるとホーンラビットがゴーレムに体当たりを仕掛けてきた。
 突進をゴーレムで受け止め押さえ込む。
 振りほどかれた。
 こっちに向かってくる。

 ホーンラビットは凄い勢いで駆けると飛び上がった。
 強烈な体当たりを腹に食らう。

 急いでゴーレムを呼び戻す。
 再びゴーレムに体当たりする。
 今度はゴーレムの両手で押さえ込めた。

 どうだ、いけそうか。
 駄目だ、押し退けられた。

 五度ほど体当たりを俺とフィオレラは受ける。
 今度は成功した。

 がっちり押さえ込んだ。
 急いで駆け寄る。

 ナイフを首にふかぶかと刺す。
 ホーンラビットは一声悲しげに上げ、しだいに足の力が抜けていく。
 生き物を殺すのは中々くるものがある。



 この世界はフィオレラに聞いたところレベルアップという物はないらしい。
 HPの概念もステータスもない。
 スキルの熟練度はあるらしく消費魔力が減ったり威力やスピードが上がったりはあるらしい。



「血抜きを頼む。俺がその間警戒するから」

 フィオレラが作業する間、辺りを警戒する。
 この辺で怖いのは草原ウルフだ。
 ただ、草原ウルフは夜行性で昼間はお腹を空かせた一匹狼しか出てこない。
 もしもの場合は撃退用の手投げ玉を投げゴーレムを囮にして逃げよう。



 一日で十七匹のホーンラビットを狩った。
 フィオレラはだいぶ草臥くたびれた動きをしている。
 無理をさせたかな。

「解体する時間もあるからそろそろ町に向かおう」
「はい、お師匠様」



 来た時と同じ様に荷車をゴーレムに引かせて、門の近くのハンターギルドの買取所に向かう。
 買取所には解体場と酒場が併設されている。
 ギルドに酒場はないが実はここにあった。
 解体場でフィオレラに教わりながら解体する。

 ハンターギルドで報酬をもらう。
 買取価格は一匹、大銅貨三枚で合計は銀貨五枚と大銅貨一枚になった。
 日本円換算で一万五千。
 儲からない。
 仕方ない、まだハンター初日だ。



「なあ、今度からフィオレラの分の宿代と食費を自分で払ってもらえるか。そのかわりハンターをやっている間の報酬は山分けにする」
「いいですけど、何でですか。お金に苦しいのですか?」

 意外な事を言ったという口調だ。

「フィオレラを対等なパーティメンバーとしてみたいんだよ」
「弟子卒業はいやですからね」
「ああ、まだフィオレラは俺の弟子だ」

 フィオレラは嬉しそうに微笑んだ。
 解体場で井戸水を貰い鎧を洗う。
 流れていく血をボーッと眺める。
 ナイフの血を拭い油を黙々と塗り、二人してポーションを仰ぐ。
 体のあちこちが痛い、今夜は眠れるかな。



 宿に帰り疲れていたのか爆睡した。
 朝になり若さのお陰かポーションが効いたのか痛みはほとんど無い。
 次の日は慣れたのか体当たりを前ほど食らわなくなった。



 十日ほど経ちほとんど体当たりを食らわなくなる。
 その頃にはホーンラビットがゴーレムから逃げるようになった。
 ゴーレムは個々の癖に慣れてくると出力が上がる。
 たぶんホーンラビットは体格と魔力的な何かで強さを判別しているのだろう。
 ホーンラビットを狩るが、思ったより稼げなかった。

 一番稼いだ日でも初日から銀貨一枚アップぐらいだ。
 ゴーレムの戦闘の練習だからしょうがない。



「明日は一日休み。明後日からハグレゴブリン狩だ」
「はい分かりました。明日は久しぶりに休みを楽しみたいです。何しようか。決めた買い物がいいな」
「俺も明日は買い物だ。ゴーレム用に武器が要る」




「予定どおり今日は西の森でゴブリン狩だ。初めてのゴブリンだ気を引き締めていくぞ」
「はい、お師匠様。がんばります」

 フィオレラは今日もパワー全開だ。
 その様子に俺も元気づけられる。
 森の中は暗く不気味で、静まり返っている。
 西の森は魔境の森と呼ばれていて魔力が濃いのではないかと言われている。



「ハグレのゴブリンを探そう。二匹以上いた場合や武器持ちは気づかれないように逃げるぞ」

 森の周辺を探すとゴブリンがいた仲間はいないようだ。
 ゴブリンは緑色の肌をした腰蓑を着けた醜い顔の子供ぐらいの身長の魔獣だ。
 ゴーレムに槍を持たせ、ゴブリンに向かわせる。

「ゴブリンを攻撃する。周囲の警戒を頼む」

 ゴブリンはゴーレムを見つけると一気に距離を詰めて来た。
 武器を持ってないゴブリンは短い手で懸命に殴り掛かる。
 ゴーレムは良いパンチを頭に貰った。

 痛覚も脳みそも無いゴーレムにダメージは無い。
 硬い物を殴った事でゴブリンは痛みに呻いた。
 今度はこっちの番だ。

 ゴーレムが槍を頭に向かって振り下ろす。
 槍はかわされ肩口に落ちた。
 槍の振り下ろしが効いたのかゴブリンは飛び退く。

 突きの間合いだ。
 体の中心に向かって槍を突き出す。
 やった、みごとゴブリンの胸辺りを突いた。
 うずくまったゴブリンにとどめに喉を槍で突く。



 初めて人型の魔獣を殺したがゴーレムでやったせいか実感がない。
 魔獣と人との関係は食うか食われるかだ。
 要するに生存競争って事になる。
 この理由では強引だ。
 しかし、心を納得させる事にした。



「魔石を取り出してくれ」

 魔石はゴブリンの胸の位置に露出している。
 学説によると魔獣は空気中の魔力を集める為に体の表面に魔石が出ていると言われていた。
 うまく取り出せたみたいだ。
 一センチぐらいの赤い半透明の魔石をフィオレラが小さな皮袋に入れる。
 ゴブリンの死体はそのままにする利用価値がないからだ。
 ゴーレムに傷が無いかチェックした。
 目立つような傷はない。

「次に行こう」
「はい」



 この後、ゴーレムにゴブリンを押さえ込ませて俺が槍で突いたり色々試行錯誤しながら七匹のゴブリンを狩った。
 俺がこの手でゴブリンを殺したわけだ。
 しかし、ゴーレムで散々殺した後だから特に動揺することなくできた。
 嫌な慣れだけど、この世界で暮らすには慣れなくちゃいけないんだろう。



「むっやばい五匹の団体だ隠れるぞ」

 木の陰に急いで隠れる。
 ゴブリンは盛んに辺りの臭いを嗅いでいる。
 まずい見つかるか、更に息を潜める。
 グギャグギャ鳴き声がうるさいくて、冷や汗が流れる。
 ゴブリン達は何を思ったか、近くの草を毟ると食べ始めた。

 この辺はゴブリンの領域と呼ばれている。
 弱い毒の物も含めてゴブリンが食料を食い漁ってしまう為、木意外に生えている物は少ない。
 虫も蛇なんかもゴブリンの胃に収まってしまう為、動物もほとんど居ないとの事。
 腹が膨れたら、臭いの事はすっかり忘れたらしい。
 五匹は去って行った。

 同じく隠れているフィオレラに出てきても大丈夫だと声をかける。
 なんとかやりすごせたな。
 もうこんなのは勘弁してほしい心臓に悪い。
 今日はもう帰ろう。



 ハンターギルドは狩から帰って来たハンターでごった返していた。
 魔石を窓口でトレイに置く。
 魔石の値段は重さで決まる。
 全部で銀貨七枚と大銅貨二枚で売れた。

 二万千六百円だ。
 魔道具の無いこの世界で魔石を何に使うかと言うと魔力を充填しておき必要な時に吸収する為だ。
 マナポーションの代わりだ。
 そして数百回つかうと砂状になり使えなくなる。
 俺は魔力切れになった事がないので使ったことはない。

 ホーンラビットよりは儲かった。
 まだ建築ギルドの仕事の一日の収入には及ばない。



 数日掛けて色々なことを試すことにする。

「今日は武器持ちのゴブリン1匹の場合戦おう」

「はい。何か注意点はあります?」
「万が一ゴーレムが破壊された時は一目散に逃げるぞ」

 上手く三匹目狩ったところで棍棒を持ったゴブリンに出会った。

「武器持ちだいつもより慎重にな」



 戦闘開始だ。

 ゴーレムが槍を軽く二回、ゴブリンの頭、目掛けて突く。
 ゴブリンはフェイントを無視して棍棒を振り回す。

 ゴーレムの頭に棍棒が当たり鈍い音がした。
 ゴブリンは手が痺れたのか追撃してこない。
 チャンスだ。

 棍棒が邪魔にならない足を槍で払う。
 ゴブリンは転がる。
 とても足が痛そうだ。

 すかさず頭に槍の柄を振り下ろす。
 ボコッという音と共にゴブリンは仰向けに倒れた。
 喉を慎重に突く。
 勝ったみたいだ。

 いそいでゴーレムの傷を調べる。
 良かった問題ない。
 うまくいきそうだ。
 この調子でドンドン行こう。



 ゴブリンの武器だけど、ハンターがゴブリンに倒されるということは滅多にない。
 だから剣などを装備しているゴブリンは滅多にいない。
 丸太を削った棍棒が精々だ。

 三日同じように狩りをした。
 一日の収入は大銀貨一枚。
 三万円を超えた。



「今日は二匹一緒のゴブリンも狩る。それで森に行く前に武装を強化する」
「私、武器はちょっと」

 フィオレラは戦うのは嫌だと言っていた。無理強いはしない。

「心配するなフィオレラには小型の盾を使ってもらう」

 武器屋に行って小さな腕に付けるタイプの皮の盾と槍を買った。



 森に行き狩りを始める。

 何匹かハグレを仕留めたところで、二匹連れのゴブリンを見つけた。
 一匹は棍棒をもう一匹は何も持っていない。

 戦闘が始まる。
 二匹をゴーレムで受け持とうとした。
 一匹が俺達を攻撃しようと隙を窺っている。
 棍棒持ちが振り下ろしてきた。
 ゴーレムはかわし俺達の方に駆けようとしているゴブリンの進路を塞ぐ。
 ゴーレムとゴブリンは互いに隙を窺って対峙する。

 まずいな膠着状態に入った。
 ミスが出るとゴブリンのどちらかが俺達を襲いそうだ。

 そうだゴーレムに槍で加勢しよう。
 操作しながらバラバラに攻撃は無理だ。しかし、同じタイミングで同じ動作ならできる。

 まずは棍棒持ちだ。
 ゴーレムの隣に陣取り槍を構え一緒のタイミングで同時に突き出す。
 俺の槍は棍棒に当たって外れた。ゴーレムの槍はわき腹を貫く。

 ゴブリンは腹から血を流し棍棒を落とした。
 あっけにとられている無手のゴブリンにゴーレムと同時に槍の柄で殴り掛かる。
 攻撃は見事に当たりゴブリンは脳震盪を起こしたのか。

 フラフラしている。
 喉を突いてとどめを刺す。
 腹から血を流していたゴブリンも仕留める。
 我ながら上手くいった。
 積極的に二匹一緒のゴブリンを狩って行こう。



 一日狩りをして収入は大銀貨一枚半。
 四万五千円を超えた。
 しかし、まだ三匹以上いる場合の対処は思いつかない。
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