ゴーレム使いの成り上がり

喰寝丸太

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第二部 成り上がり編

第39話 芝居見物

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「二人共準備はいいか出かけるぞ」
「あっちょっと待って師匠、襟が乱れてます」

 フィオレラに襟を直してもらう。少し気恥ずかしい。

「見せつけてぐれちゃてもう」

 ローレッタに言われて更に恥ずかしさが増す。

 鏡を見たら、きっと真っ赤になっているのだろう。
 恥ずかしさを隠す為に少し早く歩く。



 目当ての芝居小屋は歓楽街の一角にあった。
 木の板に俳優の絵が書いてありそれが幾つも立て掛けられている。

「いらっしゃい。いらっしゃい。開演までまだだよ。どんどん寄ってくれ」

 景気良い掛け声が当たりに響く。
 それでも、行列などになっておらずチラホラ人がいる具合だ。
 お金を入り口で払い、中に入る。

「薄暗い。最近家では魔道具で灯りを点けているから、よけいに暗く感じるのか?」
「そうですね。魔道具を売り込めそうですね」
「あそこの席が三人分空いでらった」

 ローレッタ指し示す方向を目を凝らして見る。
 前列に近い所が空いていた。
 あそこなら分析できそうだ。

「ローレッタこの明るさでも良く見えるのかさすがだ。そこに座ろう」

 二人に挟まれて座る。
 回りにはハーレム野郎に見えるんだろう。
 売り子から飲み物と軽い食べ物を買って開演を待つ。
 だいぶ目が暗さに慣れてきた頃に幕が上がった。
 歓声と掛け声がかかる。
 劇はミュージカル風で台詞の合間に歌があった。

 舞台袖で小さく発声と声が聞こえ、俳優が幾人か出てくる。
 目当ての歌手はすぐ分かった。
 一人でアカペラのデュエットをしている。
 発声スキルは魔力で空気に振動を起こしている。
 イメージは音を出したいだ。

 劇の内容は悲恋物だった。
 なんか今ひとつだ。
 何が足りないのだろう。
 うーんスポットライトとか伴奏があればもっと楽しめるのに。
 魔道具でなんとかならないか。
 作れたら、売り込んでみよう。

「二人とも劇はどうだった」
「初めてみました。感動しました」
「次は冒険物とか見でみてだ」

 発声のスキルを見るために来たけど、二人共気晴らしになったようで良かった。
 こういうのも偶にはいい。

「そうだな、また行こうな」



 今日は午後からは色々廻る予定だ。
 その前に。

「フィオレラ、魔道具にしたいスキルがある。念動と風魔法と貫通を覚えてくれ。発声のアビリティは今から教える。優先させるのは発声、貫通、念動、風魔法の順だ」
「はい、魔道具を作るのは楽しいのでスキルは幾つでも欲しいです」

 楽しそうなフィオレラに発声のアビリティを教えた。
 フィオレラは裏方として非常に重宝する。
 居なくなったらと考えたら、恐ろしい。
 見捨てられないように努力しなければいけない。



 変形を見せてもらった工房は人の出入りが激しい。
 何かあったのかな。
 中に入ると幾人かが親方らしき人と話し合っている。
 俺は弟子の少年に話しかけた。

「こんにちは、シロクです。またお願いがあってきました」
「ちはっす。できる事なら聞きます。クリフォードさんには大変世話になっているっす」
「クリフォードさんがどうかしました」
「なんでも古代の遺跡から青い魔石が出たとか。ガワを作る仕事を沢山もらったっす」

 魔道具を誤魔化すのに発掘品に偽装したのか。
 注文を受け付けない。
 製造方法も分からない。
 量も不明な品だからな。

「なるほど、忙しいのに申し訳ない。精錬のスキルが見たいのです」
「おいらの兄弟子ができるっす」

 弟子の後をついて工房に入る。

 作業台の上で工具で物を作ってる職人が三人いる。
 兄弟子に精錬のスキルを見せてくれるよう頼む。
 兄弟子は木箱から二センチ程の鉱石を取り出す。
 そして、精錬のスキルを掛ける。
 鉱石が柔らかくなったと思ったら、二つの塊に分離していく。

 材料を魔力で溶かして分離するのか。
 やり方は分かった。
 お礼を言い工房を後にする。



 商業ギルドのクリフォードさんは何時に無く機嫌が良い。
 挨拶を終え本題に入る。

「納品としばらく不定期になるので挨拶に来ました」
「シロクさん商品は順調です。ではハンター業に精を出すのですな残念です」
「六日ハンターをやって三日休む予定です。それで、まったく納品できなくないですけど」
「分かりました仕方ないですな」

「魔道具の事聞きました。遺跡の発掘品に偽装するのですね」
「ああその事ですか。根掘り葉掘り聞いてくる輩が多いのでその様にしています。不味かったですか?」
「発明者を隠すのにも都合がいいです。持って来た男を自分と違う人相の説明をして下さい」
「そうします」

「そうだ。今日芝居を見に行ったのですが芝居用の照明とか売れませんかね」
 スポットライトとか色付きの照明の説明をする。

「数は出ないと思います。良いパトロンの付いている劇団は金持ちですから買うかもしれません」
「そうですか。商品が出来たら、また来る事にします」



 家に帰り魔石に精錬を試そう。
 魔石は半透明だから、この透明な部分が不純物なのかな。
 アビリティで魔石を精錬する。
 魔力があっと言う間に尽き。
 手元にはビー玉ぐらいの透明な物と幾分色が濃くなった魔石が残る。
 魔石の精錬はとても魔力がいるみたいだ。
 透明な方が不純物でいいんだよな。
 フィオレラに試してもらうか。

「フィオレラ、この透明な玉に魔力込めたり魔道具化を試してくれない?」
「いいですよ……だめですね魔石ではない感じがします」

 やはり透明な方は魔力を蓄えないみたいだ。

「精錬を教えるから、魔石を精錬してもらえない?」

 精錬を教える。
 フィオレラは魔石を手に取り精錬を開始した。
 ビー玉ぐらいの赤い石と五センチ弱の透明な玉が出来上がる。
 さすがの魔力量だ。
 俺にはとても真似出来ない。
 赤い石に魔力を込めて魔道具化して貰う。



 スキルを使って真剣な表情で魔道具を作るフィオレラ。
 魔道具を受け取りながら何の魔道具を作ったか尋ねる。
 照明の魔道具を作りましたと言った。
 灯りを点けてみる。
 赤い石はまばゆい光を発した。
 これで魔道具の弾丸ができる。
 魔力回復の休みを取ってフィオレラに爆発の弾丸を作ってもらう。

「やった更なる戦力だ。この魔道具の弾丸は魔弾と呼ぼう」

 ついでに雷魔法の弾丸も作ってもらう。
 それと俺の魔石銃用にレーザーサイトを作ってもらった。

「この透明な玉どうしましょう」
「うーん、捨てるか。何かに使えないかな」

 透明な玉をさわりながら考えた。
 強度はそれなりにある。
 そうだ集めてペットボトルを作ろう。

「ある程度たまったら、水筒の材料にしたらどうかな」
「それなら中身が分かって便利ですね」

 魔石の不純物は水筒の材料になることになった。
 明日の午後は魔弾の試し撃ちをやる。
 いまから楽しみだ。
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