ゴーレム使いの成り上がり

喰寝丸太

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第二部 成り上がり編

第48話 魔力ゴーレム無双

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 休みの日々は終わり再び遠征の日になった。

「二人共準備はいいか。出発するぞ」
「師匠、なんでオーガの領域ではなく遠征なんです?」
「たしかにオーガの領域なら日帰りで稼げる。しかし、日帰りでは野営の経験は積めないだろう。魔力ゴーレムの攻撃方法は隠しておきたい。荒野だと丸見えだろ」
「野営つ事はもしかしてこの町ばではることも考えでらはんですか?」
「そうだな。そのうちに他の町に行く事も考えている」
「故郷からあまり離れてぐねのだばって」
「ローレッタ、その時は話し合おう。まだまだランクも足りないし、経験もない。ずっと先の事だ」



 オークの領域で野営する。
 夜半にウインドウルフの襲撃があった。

「薄いトーチカと鉄条網だ。ローレッタ俺がやる」

 魔力ゴーレムをトーチカの外に出す。拒絶を片手だけ発動する。
 ここで秘密兵器を登場させる。魔鉄と精錬魔石で作ったナイフだ。
 魔力はフィオレラに込めてもらった。



 ウインドウルフにはナイフが宙に浮いて見えるのだろう。
 鉄条網をすり抜け、ウインドウルフにナイフを迫らせる。
 魔力ゴーレムの素早さに追いつかないウインドウルフ。

 ナイフをきらめかせ首をかき切った。
 続けざまにナイフを別のウインドウルフに突き立てる。
 ナイフを素早く引き抜き。
 魔力ゴーレムを低い体勢にし胴体に切りつける。
 この状態は正に無双だ。

 三匹葬られたのを見ると逃げて行った。
 魔力ゴーレムの素早さを持ってすればウインドウルフなんて雑魚だ。

「うん魔力ゴーレム強い」
「凄い。無敵です」
「体がすり抜けるのもだの。誤射ば気にさねぐてよさそうだ」

 今夜は気持ちよく眠れそうだ。



 いよいよオークの領域を過ぎワイバーンの領域に入る。

「みんな気を引き締めていくぞ」
「「はい」」

 野営はいつでも気を抜けない。今夜も襲撃があった。



 見張り用魔道具の警報に起こされる。

「すいません。気づがねがった」
「ローレッタ気を落とすな。来たみたいだ。あれならしょうがない」

 現れた魔獣はアサシンレパードだった。

「薄いトーチカと鉄条網だ。魔力ゴーレムを前に出す。ローレッタ弓で援護してくれ」

 魔力ゴーレムにナイフを持たせ突っ込ませる。

「ちっ早いが、速さなら負けないぞ」

 魔力ゴーレムのナイフを突きたてようとするが、なかなか決まらない。
 宙を飛ぶナイフとアサシンレパードがクルクルと踊る。
 ローレッタの矢も全て外れた。
 そうだ、あれを試してみよう。拒絶を解除する。
 アサシンレパードは落ちるナイフを目で追っていた。
 魔力ゴーレムをこっそり近づける。

「今だ。【雷魔法】やったか」

 感電して倒れるのを確認した。
 ゼロレンジ魔法強いな。
 いい手札ができた。
 拒絶を再び発動しナイフを拾い目に突き入れる。

「綺麗に倒したから皮を剥ぐぞ。薬品を用意してくれ」

 皮を剥いで水で洗い薬品を塗る。
 この薬品はハンターギルドで売っている。
 なんでも倒してすぐ塗ると品質が良くなるのだとか。



「そろそろ交代だろ。ローレッタ寝ていいぞ。フィオレラもお疲れ」
「はい、ねへ」
「おやすみなさい」



 一人になって考える。
 トルネードと加速砲は大規模すぎて試せない。
 小回りの利きそうな技が幾つか欲しい。

 何が欲しいかというと範囲攻撃だ。
 火の海にすれば簡単だけど、問題がある。
 魔境の森の木は燃えにくい落ち葉も水を含んでいて同様だ。
 しかし、限度がある。
 小さい火の玉を幾つか出せば良いが、魔法でも魔術でも複数の物を同時に制御するのは難しい。

 制御しない魔法は一秒ほどで魔力に戻る。
 投擲型魔道具の風の刃も同時には出せないので連続して飛ばす様にしていた。
 トルネードも中の風の刃は本体に繋がっている。
 フィオレラが使う鉄条網も端っこでトーチカに繋がっていた。

 それと魔法は手元からしか出せないが、絶対無理と言う訳ではないけどやっぱり難しい。
 なぜなら体内にある魔力を伸ばして発動しなければいけないからだ。
 魔力を伸ばすのは時間がかかる。
 しかも分析が使えない人にはどこまで魔力が伸びたのか分からない訳だ。
 対人戦の不意打ちには使えるが魔獣相手には役に立たない。
 しかも手元から出た魔法は止まった状態で出現する。
 そこから加速するため遅い。魔法は強いが万能では無い。



 思考が逸れた。
 元に戻そう。
 範囲攻撃のアイデアだ。

 魔力のゴリ押しで魔力ゴーレムを浮かべて土魔法で作った岩の塊を落として攻撃するか。
 魔石まで潰れそうだ。

 そうだ、水魔法で粘着性のある水を出せないだろうか。
 辺り一面に出せば素早い魔獣には有効かもしれない。
 火事の心配もないし木も邪魔にならない。

 土魔法で作った檻に閉じ込めるのも有りか。
 檻の隙間から遠距離攻撃を当てるのはいいな。

 風魔法で巨大な刃を打ち出すのもいいだろう。

 精錬で酸素を抜き取るのはどうか。
 周りからあっという間に酸素が入って意味が無いか。
 でも一瞬ぐらい隙ができるかも。



 もうアイデアは出ない。次は魔境の生態系について考えるか。
 魔境はサイクルが早い。
 木の葉はいつでも落ちる。
 枯れ葉になる前に分解された。
 木の実も一年中生る。
 魔獣の成長も早い。
 だから子供の魔獣は滅多に見れない事になっていた。
 魔力が作用していると言うが本当だろうか。
 分析で見てみる。
 うわもの凄く魔力が濃いミルクの中にいる様だ。

 体に影響は無いだろうな。
 引退したハンターが年を取る前に死ぬなんて話も聞かないから、大丈夫だと思いたい。
 そうだ魔力ゴーレムはアビリティは使えるのか試してみる。

 俺が使えない照明のアビリティをやってみた。
 使えたぞ。
 スキルとの同時使用はどうだ。
 だめだ一秒も使えない。
 フィオレラからコピーしたOSだからだろう。
 ローレッタからコピーすれば同時使用ができる可能性がある。
 しかし、ローレッタにスキルは無い。
 悩む所だ。
 使いやすさで選ぼう。
 その方が安全な様な気がする。



 どっちと付き合うかそろそろ考えないと。
 もしフィオレラと付き合ってローレッタがパーティを抜けたら、攻撃力の大幅ダウンだな。
 その時はワイバーンの領域は厳しいだろう。
 逆の場合は防御と運搬が使えない。それと魔道具の整備もだ。
 どちらにしろ人を増やせば解決する問題だろうが、現状では人は増やせない。
 好みで選ぶならフィオレラだ。
 悩ましい



 その他取りとめの無い事を考えていたら、夜が明けて皆が起きる時間になった。
 今日も頑張るとするか。
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