ゴーレム使いの成り上がり

喰寝丸太

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第三部 無双編

第84話 不正摘発

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 ビオンダさんに手紙が来た。
 表情を見るに、どうやら厄介事らしい。

「ビオンダさん、手紙は何て書いてあるのですか?」
「貴君には係わりのない事だ」
「水臭いです。解決に力を貸しますよ」
「ナサレナからの手紙でな。ダリネスクの教会がおかしいとの情報だ」

 ナサレナさんは、部隊を指揮していた赤毛の人だな。
 ダリネスクは隣の領だ。

「何がおかしいのですか?」
「病人が減って治療師の収入が減ったらしい。それなのに教会全体の収益は落ちていない。そして今度は治療費の大幅値上げだ」

 ガスポーションを沢山作った余波がこんな所に出たか。

「密告の手紙もあった。ナサレナはマークされてない私に動いて欲しいそうだ」
「分かりました。監視任務を放棄したくないのですよね。一緒にダリネスクに行きましょう」
「すまんな。恩に着る」



 隣領は草原に囲まれ、町の周りには沢山の麦畑がある。
 のどかな景色だな。
 聞いたところ病人の治療に最適な環境という事で、教会が建てた大きな治療院があるらしい。



「ビオンダさん、どこから手をつけます?」
「密告の手紙を出した人間から話を聞こう」
「なら宿を取りましょう」

 ハンターが泊まりそうな宿を見つけた。ここにしよう。



「それでだな、貴君とフィオレラに密告者に会いに行ってほしい。私だと顔を知っている者がいると面倒だ」
「いいですよ。フィオレラ行こう」
「はいデートみたいですね」



 フィオレラと連れ立ってダリネスクの町を歩く。
 適当に観光しているふりをする。
 誰かにマークされていても困るからな。

 教会に行き、結婚の事で女性神官に相談があると言って、目的の人物を個室に呼び出す。

「聖騎士の使いでシロクです」
「フィオレラです」
「神官のミレイアです。使いであるという証拠を見せて下さい」

 ミレイアさんは若い神官でそばかすが純朴そうな印象を与えている。
 ビオンダさんから預かった聖騎士の証明書とSランクのカードを見せる。
 ミレイアさんはSランクのカードを見ると大変驚いた。



「時間もないので手短に聞かせて下さい」
「ドアの前を通りかかった時に、治療師の利益を横取りする相談をしていたのを聞いてしまったのです」
「その人物の目星は付いているのですか」
「治療院の院長と副教会長です」
「分かりました」

 二人の部屋の位置情報や部下の情報を貰う。



「行って来ました」
「どうだった」
「大体手紙の通りですね、どうしましょう」
「証拠を掴まねば難しいな」



「一応、アイデアはあるんですが、部屋に侵入しないとどうにもなりません」
「そこはまかせて欲しいにゃ」

 アレタさんが自信ありそうに言って来た。

「捕まると国際問題になりそうなんですが」
「そんなヘマはしないにゃ」
「私も協力できましてよ。最適なスキルがあるわ」

 セラディーヌさんも協力してくれるらしい。



 二人を信じるか。俺とフィオレラで隠しカメラを入れた置物を作る。
 カメラは兄貴にインターネットで注文してもらった。



 部屋の下調べをする。それからスキルを見せてもらった。
 スキルは姿隠しで蛇の魔獣が使っていた奴だ。
 薄暗いと完全に見えないな便利なスキルだな。
 ただ、スキルを掛けているセラディーヌさんから、あまり離れられないようだ。
 アレタさんとセラディーヌさんは宿の壁もすいすいと登る。
 獣人は身軽だ。エルフも身は軽そう。
 二人共スパイに選ばれたのは伊達じゃないのかも。



 カメラの入った置物をみた二人は胡散臭そうに眺める。

「これはなんにゃ」
「そうですわ。わたくしも興味ありますわ」
「神の御業です。神様が原因で出来た道具です。この置物の見た風景を後で見る事が出来ます」
「それは夢のような道具ですわ。本当に神様が係わっているのですか」
「ええ、神に誓って」
「そうですか、一応信じますわ」
「胡散臭いにゃ。いつか突き止めてやるにゃ」



 さて実行だ、院長の家は蔦の絡まる古そうな家だ。
 アレタさんとセラディーヌさんは姿を隠しながら壁を登り部屋に辿り着く。
 俺は勿論分析を使って二人を見ている。
 二人はバルコニーに立ちあたり窺う。
 アレタさんが侵入して、セラディーヌさんは近くで見張るようだ。
 安心しきっているな警備の人もいない。
 警備の人がいたらスタンガン魔法で眠ってもらう予定だったが手間が省けた。
 一応フィオレラには魔力探知を使ってもらい、屋敷の周りには人がいないのを確かめてある。



 無事二人が無事出てきたのでほっとする。
 同様の手口で副教会長の部屋にもカメラを仕掛ける。



 カメラは数日後に回収した。
 さて何が映っているか。
 パソコンをビオンダさんに貸し出して、動画をチェックしてもらう予定。
 パソコンを初めてみるビオンダさんは、流石に表情を変えた。




「貴君これは何だ」
「稀人の世界の道具です。神様に授けてもらったような感じです」
「なにやらはっきりしないが、神様が係わっているのならしょうがないな」

 慣れない手つきでパソコンを操作するビオンダさん。
 相槌を打ちながら作業を続けていたが、ビオンダさんは手を叩くと立ち上がった。

「隠し帳簿の在りかが分かった。副教会長の本棚にある本の一冊がくり抜かれているぞ」
「皆を集めましょう」



 再び部屋に忍び込み証拠の品を押さえた。
 動画の分析の結果。
 大小さまざまな不正が見つかる。
 問題の利益を横取りは裏帳簿に証拠があった。



 証拠をそろえて教王庁に告発した。
 真偽官が呼ばれ、不正が明るみになる。



「大当たりだ! やったぞ! ふはははは!」

 アドラムの町に帰り、家で手紙を受け取ったビオンダさんは興奮した様子で喋り始めた。
 俺は一応聞く事にした。

「どうしたんですか。そんなに大声で」
「嫌な奴らが粗方吹き飛んだ」
「奴らって」
「教会の聖騎士の一部と支部長の一派だ」
「不正の金が流れていたんですね」

 どうやら余波はこの国の教会支部長に及んだようだ。
 なんでも色んな教会で裏金を着服して贅沢をしていたらしい。



「任務は終わりだ。何時帰ってきても良いらしい」
「それは寂しいですね」
「そうだな、フィオレラの結婚式までは居よう」
「後任とかは来るのですか」
「ああ、それは仕方ないな。入れ替わりで後任の者が来るだろう」

 やはり教会の監視は解けないみたいだ。
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