漬物はネクロマンサーの香り~大量レベルアップの秘訣は新鮮な野菜の死体。大根アンデッド(漬物味)から始まる最強への道~

喰寝丸太

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第5章 炊き出しで始まる布教活動

第31話 教会襲撃

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 手始めにやるのは狼魔獣とオークを手なずける事だ。

「こっち、狼魔獣がいる」

 ミディがある方向を指差して、自慢げに言った。

「何で分かる」
「ゴーストが教えてくれるの」
「なるほど、こっちのようだ」

 その方向に向うと確かに狼魔獣がいた。

「あたいの出番だね。従え、この野郎【ドミネート】」

 狼魔獣は命令を待つ素振そぶりを見せる。
 成功したようだ。

「よし、ガンガン行くぞ」

 夕方までに魔獣を集めまくった。
 魔獣にシャデリーがダークカーテンの魔法を掛ける。
 暗い所に行くと本当に見えない。

「ダークカーテンが掛けられた者は周りが見えるのか」
「ええ、問題ないわ。試しにやってみる?」
「やってくれ」
「闇のとばりおおいたまえ。【ダークカーテン】」
「確かに見えるな。よし解除してくれ。どんな原理なんだ」
「精神魔法よ」
「ダークフレアもか」
「よく分かったわね。炎があると信じ込むと本当に炎が出るのよ」
「何だってー。じゃ、金貨があると思い込ませれば金貨が作れるのか」
「理論上はね。でも神によって制限が掛けられている。闇魔法に許されているのが炎と毒よ」
「なるほどな。流石だなこの世界。思い込むと本当になるとはな」
「他の魔法も一緒だと思うけど。思いが現実をじ曲げるのよ」

 元百円玉の銀将ぎんしょうが火を吹くのは銀将ぎんしょうが作られた時の炎があると思い込んでいるのか。
 じゃあ、リビングアーマーやスケルトンが動くのも、動くという思いが動かしているのだな。
 魔法ってのは神が設定したかせのたぐいなのかも。

「魔法は深いな。よし、そろそろ出発しよう」

 姿の見えない魔獣の群と一台の荷馬車が夜の街道をひた走る。
 馬のマロンには可哀相かわいそうだが、現在霊が乗り移っていた。
 そうでないと魔獣の臭いに怯えて歩行がままならないからだ。
 闇魔法だとバーサーカーみたいになってしまって暴走馬車になるそうだ。
 魔法も一長一短だな。

 御者は夜目の利く飛車ひしゃが勤めている。
 荷台にいる俺の横ではミディがこっくりこっくりしていた。

「ミディ、寝てろよ。着いたら起こしてやる」
「う……ん」

 夜の街道ではすれ違う馬車などいない。
 野営地でたまに人が起きていて夜走る馬車を見ると、視線の先を挟みでちょん切る動作をする。
 これは怪異などを見た時に取りかれない為のおまじないだ。

 俺達は夜半過ぎに街の門に着いた。
 当然の事ながら門は閉まっている。
 オークが担いで来た丸太を構えた。
 丸太が次々に門にぶち当たる。
 ミシミシと音がした。
 遂にかんぬきは壊されて門から魔獣の群がなだれ込んだ。
 教会まで大通り一直線だ。
 松明一本を飛車ひしゃに持たせて先導させる。
 門番は逃げて居ないようだ。
 騒がれたら殺してしまうところだったからちょうど良い。
 これなら心も痛まない。

 俺達にシャデリーがダークカーテンを掛ける。
 これで目撃者がいても口封じの手間がいらない。
 大勢の足音はするのに姿が見えないのを気味悪がって、家から出た人は皆、例の仕草をしてから引っ込んだ。

 教会の門をぶち破り魔獣達を暴れさせた。
 灯りに照らされた魔獣は黒いもやの塊に見える。
 そうか昼間みるとダークカーテンはこんな感じか。
 確かに昼は使えないな。

「ここは私にもやらせて。狂乱せよ【フレンジイ】。私の左手に封印された闇が勝手に」

 シャデリーの魔法で聖騎士が同士討ちを始めた。
 それは良いんだが。詠唱の後の文句はなんだ。

「その、さっきの詠唱の後の文句は何だ」
「闇の炎の詠唱を誤魔化せない時に今みたいに言うと、何とか誤魔化せた事があって。癖になっているのよ」
「逆効果じゃないの。闇魔法使いだってばればれだぞ」
「生暖かい目つきになって大抵の人は追及しなかったわ」
「そんなもんですかね」



「この騒ぎはなんなのです」

 聖女様のお出ましか。

「静まりなさい」
「ダークカーテンを纏った魔獣が暴れております」
「闇魔法使いの仕業ね。きっと、魔獣も闇魔法で洗脳して連れてきたんだわ。今、結界を張ります。清浄なる息吹よ空間を満たしたまえ【サンクチュアリ】」

「今だ。魔獣を突っ込ませろ」
「お前ら行きな」

 見えないオークが結界に触れ姿が見えるようになり、おまけに支配の魔法も解けたようだ。
 オークは少し戸惑い目の前に居る聖女を餌認定したようだ。
 護衛の聖騎士をパンチで叩きのめすと、聖女につかみかかった。

「痛い、離しなさい。この怪物が」

 あーあ、挑発しちゃって。
 オークは聖女にかぶりついた。
 上がる血しぶき。
 サンクチュアリの魔法が解ける。

 さてと、大掃除だ。

「行け。扇子せんす。魔獣も一緒に食っちまえ」

 樽で持ち込まれた黒い霧が教会に満ちる。
 魔獣も聖騎士も神官も全てを飲み込んだ。

 片付いたな。
 実にあっけない。
 俺達の他には誰も居ない、人も血の跡も全てがちりになった世界が出来た。

「念の為ゴーストで付近を調べてくれ」
「うん」

「私、活躍してないのだけど」

 ジュサがねる表情を見せる。

「次回のお楽しみだ。教会が一つ消滅したと分かれば、雲霞うんかのごとく聖騎士や輝職きしょく同盟の奴らが押し寄せてくるさ。さあ、後片付けだ」
「敷地の外れの小屋に人がいる」

 小屋に行くと、小太りの男が財宝の詰まった袋を大事そうに抱えて、震えていた。

「ひっ、扉が勝手に。黒いもやの化け物が」

 俺は剣を使い一撃であの世に送ってやった。

「ヴァンパイアになれ【メイクアンデッド】」

 男が起き上がる。

「生き残りはお前で最後か」
「はい、ボス」

「なんで戦力を少しずつ投入した」
「損害が酷いと出世に差しつかえるからです。未知の毒で大軍が死んだともなれば左遷されてしまいます」

 なんだそんな理由か。
 度胸がなかったという事か。
 軍人が指揮を執っている訳ではないからな。
 こういう事もあるか。

「金庫は開けられるか」
「はい、ボス」

「金庫を開けたら街で誰にも見られないように生きろ。見つかったら記憶喪失の振りをするんだ」
「はい、ボス」

 この男は魔力が切れたら切れたでいいや。
 今後、利用価値が出たら手厚くしよう。

「よし、金庫の中身を空にしたら、撤収だ」

 遂にやっちまった。
 もう後戻りはできない。
 俺よ。腹をくくれ。

 俺は両頬をぴしゃりと叩いた。

 よし平気だ。
 なんとかなるさ。
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