漬物はネクロマンサーの香り~大量レベルアップの秘訣は新鮮な野菜の死体。大根アンデッド(漬物味)から始まる最強への道~

喰寝丸太

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第11章 神器のアンデッドから始まる処刑阻止

第67話 勇者と対決

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 正午の鐘が鳴らされると処刑は実行される。
 俺は少し前に広場に到着して覆面を被った。
 壇が出来ていてその上には四人の男女がいた。

 勇者は一目で分かった。
 金ぴかの鎧に白銀の盾を目の前に浮かべていた。
 利き手は剣を抜いてゆったりと構えている。
 既に臨戦態勢だ。

 その隣には銀色の聖騎士の鎧を着た人物が大剣を担いでいる。
 その後ろには武器を持っていない女が二人。
 たぶん後衛だろう。

 鐘が鳴らされ処刑が始まった。

「禁忌持ちの処刑を始める」
「待った! 職業に貴賎はない! なぜなら神が最初から悪など作らないからだ! 俺は勇者を倒して正しい事を証明する!」

 俺は群集から躍り出て怒鳴った。
 群集からどよめきが起こる。

「御託はいい。掛かってこい。ジェノサイド」
「行け。成香なりきょう

 空中に浮いている盾が素早く動いて弾丸を弾く。
 やっぱりな。
 ここまでは想定通り。

「行け。扇子せんす

 黒い霧が俺の腰に付けている瓶から漂う。

「その手は食わないよ【サンクチュアリ】」

 扇子せんすが結界に阻まれた。

「火よ槍となって貫け【ファイヤーランス】」

 後衛から魔法が飛んで来た。
 俺に防ぐ手立てはない。

「くっ、熱いなんてもんじゃないぞ」

 俺が貧者の楽音がくおんジュースを煽ると、火傷は治り痛みが消えた。
 反撃だ。

 俺はマンドラゴラヴァンパイアを投げた。
 結界に当たって叫び声を上げるマンドラゴラヴァンパイア。

「くっ」
「きゃあ」
「これしき」

 苦鳴は聖騎士と後衛の二人から漏れた。
 勇者はノーダメージだ。

「三人は何時までマンドラゴラの叫びに耐えられるかな」
「おのれ卑怯な」

 勇者はなんとサンクチュアリを解除した。
 こいつ馬鹿か。

「行け。扇子せんす

 再び扇子せんすを放つ。
 驚いた事に盾が素早く動き扇子せんすを阻む。
 ここでマンドラゴラヴァンパイアを投げても意味はないよな。
 だが、好都合だ。
 切り札が使える状況だ。

「空気よ、生ける空気のリビングエアになれ【メイクアンデッド】」

「くっ苦しい。盾が何故、効かない【サンクチュアリ】」

 今更遅い。リビングエアは勇者パーティの周辺から退去して真空状態を作り出している。
 後は窒息するだけだ。

「【ヒール】【キュア】」

 後衛から回復魔法が勇者に飛ぶ。
 それも効かない。
 窒息は病気じゃないから。

 空中に浮いている盾が力なく落ちる。

 念の為、勇者パーティを扇子せんすで塵に変えた。
 群集がパニックを起こし逃げ出す。

 広場の地面に穴が開き、ネオシンクの信者が現れた。
 処刑される人達はネオシンクの信者によって救助された。

 俺が神器の盾を拾ってアンデッドにすると、脳内に鳴り響くファンファーレ。
 終わったな。

 俺は広場を後にしてジュサの待つ宿へ帰った。

「ただいま」
「おかえり。お祝いしましょ」

 ジュサはどうだったとは聞かない。

「こんな日に宴会をやると街の人に不審がられる」
「じゃあどうしようか」
「前に転写をやってもらったよな。あれをやろう」
「いいわね」

 俺は街の案内所を訪ねて転写をやっている所を聞いたら、そこは化粧品を売っていてメイクをしてくれる所だった。

「ジュサを綺麗にしてやってくれ」
「旦那さんはどうします。男でも化粧できますよ」
「俺は良い」

 ジュサの化粧が始まった。

「午後になったらお客さんが来なくなって。どうしよかと思ってました。店を閉めるのもシャクですしね」
「そうですか。勇者様が殺されたって言うんで、俺達もやばいのかなと。生きた証を残したいと思って」
「そういうお客さんが沢山来てくれたら、良いんですがね」

 ジュサの顔に白粉が叩かれて唇には紅が差される。
 うん、美人になった。
 普段、化粧しないから新鮮だな。

「さあ、出来ましたよ。壁の前に立って下さい」

 俺とジュサは壁の前で手を繋いで立った。

「笑って、笑って。かの者を写し取りたまえ。【ドロー】」

 ジュサがいきなり俺のほっぺにキスをした。
 キスマークをつけて少しあっけにとられた俺と、勝ち誇ったようなジュサの姿が写された。

「女神の報酬よ」
「さいですか。店主キスマークを落としてくれ」
「駄目よ。心配させた罰よ。一日それで過ごしなさい」
「女神様のおっしゃる通りに」

 これは帰ったら何か言われそうだ。
 転写した絵は誰にも見せないぞ。
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