漬物はネクロマンサーの香り~大量レベルアップの秘訣は新鮮な野菜の死体。大根アンデッド(漬物味)から始まる最強への道~

喰寝丸太

文字の大きさ
66 / 84
第11章 神器のアンデッドから始まる処刑阻止

第66話 人気者

しおりを挟む
「えー、美味しい漬物はいかがですか!」
「お一つ、頂こうかしら」
「聖水漬け、一丁!」

 俺達は遂に処刑が行われる街に着き、屋台に早変わりする馬車を使って商売を始め、すでに四日。
 街はお祭り騒ぎ、異常な熱狂が渦巻いている様に思えた。

「ジュサ、偵察に行って来る」
「分かっている。大人しく店番をしておくわ」

 処刑が行われる広場に到着した。
 広場には丸太の杭が何本も立っている。
 あそこに禁忌持ちを縛り付けるのだな。

 周りは観客席を建造中だった。
 ふむ、近づくのは観客にまぎれて出来そうだな。
 問題はやっぱり勇者か。

「彼方まで声を届けたまえ【ラウドスピーク】。職業に貴賎などない!! 創造主において全ては平等だ!!」

 何やら聞いた事のある文言が耳に届いた。

「ついに突き止めたぞ! ネオシンクのカラス野郎!」
「不味い!! 逃げるよ!!」

 悲鳴が聞こえてきたので、俺は覆面を被って現場に駆けつけた。

「やれ、扇子せんす

 黒い霧が暴行を働く男達を襲う。
 男達は塵になって崩れた。

「あの黒い霧。あなたは、ジェノサイド様ではありませんか」

 俺は助けた男からそう言われた。

「敵にはそう呼ばれているな。正式名称はフリーダークだ。どっちで呼んでもらっても構わない」
「やはり、禁忌持ち処刑の情報を聞いていらしたのですか」
「そうだ。罠だとは分かっているが、避けれない戦いもある」

輝職きしょく同盟の奴らが寄ってこないうちに、場所を移しませんか」
「そうだな」

 俺はネオシンク教信者達と一緒に開店前の酒場に入った。

「君らはネオシンクの信者だな。何をしている」
「もちろん布教活動ですよ。それと、ここだけの話、禁忌持ちを逃がす計画を立てました」
「俺の邪魔にならないのなら、大歓迎だ」

「計画をぶっちゃけると、トンネルを広場まで掘ったのですが、困った事に戦闘員が居ないんですよ。行き詰ってます」
「そうか、それはちょうど良い。俺は正面から勇者を討つつもりだ。その後の救出は任せた」
「本当ですか。心強いです。計画に加担した証に握手して下さい」

 俺は握手してやった。

「僕は一生手を洗わないぞ」
「ずるいリーダーばっか」
「私も」
「俺も握手したい。良いですよね」

「全員と握手するから、いっぺんに詰め寄るな」

 襲撃計画が握手会になってしまった。
 ジェノサイドの人気がこんなにも高くなっているとは。

 酒盛りが始まったので、覆面姿では飲めないからと言って、俺はジュサの所に戻った。

「ねぇ、考え直さない」

 客が捌けたところで、ジュサがそう言って来た。

「駄目だな。見殺しにした場合マイナス要因が多すぎる。それに俺とは別に救出を計画している奴らもいる。あいつらは俺が居なくとも実行しそうだ。知ってしまってから、逃げるのは性に合わない」
「男なのね」
「そうだな。馬鹿だと思うけど、俺はやる。決めたんだ」
「じゃあ、行商で稼いだお金でぱっーと飲みましょう」
「そうだな飲もう」

 手頃なレストランを見つけて二人で入る。
 料理が運ばれワインをなみなみとカップに注いだ。

「賭けに勝つ事を祈って乾杯」
「乾杯。ところでどんな計画でやるの」

「もっと小声で話せ。先制攻撃で成香なりきょうで狙撃。防がれるだろうから、扇子せんすを使う。たぶん相手はサンクチュアリの魔法を展開してくるはずだ。それにマンドラゴラヴァンパイアを叩きつける」
「それで終わると思う」
「終わらないだろうな。切り札を用意したが、使える状況にするのが難しい。だから勝率二割だ」
「そうなの。目を瞑って」
「いきなりなんだ。こうか」

 ジュサが席を立つ音が聞こえた。

「横を向いて」

 俺の唇に柔らかい物が押し付けられた。
 目を開けるとジュサは赤い顔をして立っていた。

「勝利の女神の祝福よ」
「うん、女神様の期待に背かないようにしないとな」

 いよいよ明日は決戦だ。
 俺のレベルアップの道程は死体術士の禁書に書き記した。
 俺が死んだらジュサが死体術士に渡してくれる事になっている。

 もし俺が倒れてもネオシンクの教えは残るはずだ。
 そうすれば、第二第三の俺が現れると思う。
 だから、俺の行動は無駄じゃない。
 歴史に俺の名は残らないが、俺の意志は残る。
 それで良いと思った。
 思い残す事はない。

 禁書を元の家に返せないのが心残りだ。
 心残りがあるうちは死ねないな。
 弱気は駄目だ。強気でいくぞ。
 俺は歴史に名を残すんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...