漬物はネクロマンサーの香り~大量レベルアップの秘訣は新鮮な野菜の死体。大根アンデッド(漬物味)から始まる最強への道~

喰寝丸太

文字の大きさ
75 / 84
第13章 闘技場から始まる争奪戦

第75話 勇者の手の内

しおりを挟む
 屋台をしていると色々と情報が入ってくる。
 魔獣に聖騎士が百連勝したが、神器は現れずだとか。
 勇者が莫大な賞金を懸けてならず者と決闘を始めた事とかが耳に入ってきた。
 勇者の手の内を調べる為に対戦を見に行かないとな。

 店番を四人に任せて観戦する事にした。
 ちょうど始まるところだった。
 大男と勇者が対峙する。

「俺は剛力無双のタグシャ。勝ったら、本当に金貨1000枚くれるのだろうな」
「勝てればな。御託はいいから、掛かってこい」

「大いなる力を宿らせたまえ【マッスルパワー】」
「ふん。とっとと来い」

 大男が大剣を振り下ろした。
 勇者がひらりとかわし剣は地面を叩いた。

「何をした」

 勇者が剣を抜き大男の首を刎ねた。
 何だ。何が起こった。
 ぱっと見は勇者が華麗に剣を避けて反撃したように見える。
 しかし、振り下ろした剣をそのままにしておく事はないだろう。
 跳ね上げて連撃に移ればいい。
 俺の目には大男が硬直したように見えた。

 分からん勇者の手の内が分からん。
 もっと観察したい。

 次の相手は水魔法使いだった。
 ところが魔法使いが水の弾丸を撃つも、ことごとく地面に落ちた。
 そして逃げようとした魔法使いが転んだ。
 そして斬殺。

 何となく手の内が分かった気がする。
 たぶん、重力だろう。
 これはどうなんだろう。
 しとめるのに物理は駄目だな。
 闇魔法はどうなのかな。
 火魔法使いと対戦するまで見てみよう。

 試合は何度も行われ、いよいよお目当ての火魔法使いが対戦相手として現れた。
 魔法使いが炎弾を放つもことごとく地面に落ちた。
 これは闇魔法でも危ないかも。
 霊術はどうだろう。

 ミディとシャデリーを呼んできて、勇者を攻撃してもらう事にした。

「闇よ安らかな眠りを【スリープ】」
「どうだ」
「駄目よ」
「くそう。魔力にも重さがあるのかよ。そんなのありか。ミディ、ゴーストを勇者にとりつかせろ」
「ゴーストさん、お願い」

「どうだ」
「ダメ。たどり着く前に地面の中に落とされて近づけない」

 ゴーストは物体を透過するけど、重力も物体を透過する。
 結局近づけないのか。
 ゴーストにも重さがあるとはな。
 俺の攻撃で通用しそうなのは窒息攻撃ぐらいだ。

「空気よ、生ける空気のリビングエアになれ【メイクアンデッド】」

 駄目だ。
 空気にも重さがある。
 真空の壁を重力で押し潰されたようだ。

 勇者が俺たちの攻撃に気づいていないのが救いだが、これはどうにもならん。
 呪いならチャンスありか。
 でも呪いも結局のところ魔力だ。
 重力に負けるのだろうな。
 光なら重力の影響を受けづらいが。
 リビングライトにレーザー攻撃を再現しろっていうのは無理だな。
 光の記憶にレーザーはない。
 レーザー発生装置が作れれば問題は解決するが、そんな物は作れない。
 困ったぞ。

 音と光で耳と目を奪っても殺せないんじゃどうにもならん。
 重力が目に見えれば隙は探せるが、どうする。
 見たところ勇者は重力の影響を受けてないように見える。
 なら範囲は全方位だと思っていた方が良い。
 マンドラゴラヴァンパイアの叫びも魔力だ。
 効果はないだろう。
 これは攻略法をゆっくり考えないと。

「二人ともご苦労様」
「何かおごりなさいよ」
「ミディ、屋台の焼きリンゴが食べたい」
「よし、気分転換だ」

 三人で焼きリンゴの屋台を訪れた。
 リンゴを焼いた甘い匂いが辺りに漂う。

「三つくれ」
「はいよ」

 木の串に刺さったリンゴをミディがふうふうと息を吐きかけて冷やしている。
 んっ。
 何か今、閃いた。
 ああ、そうだ。

 あれがあった。
 それを使える状況にもっていくのが一苦労だ。
 でも勝機が見えた。

 俺も熱々の焼きリンゴを食べる。

「ミディ、ありがと。ヒントを貰えたよ。焼きリンゴ好きなだけ食べていいよ」
「ほんと」
「あまり甘やかすと良くないわよ」
「じゃ、夕飯がいつも通り食べれる範囲でなら、食べて良いぞ。ミディはもう分別がつくよな」
「ミディ、子供じゃないもん」

 勇者対策も出来た事だし一杯飲みたい気分だ。
 売り物の漬物とエールで乾杯したら怒られるかな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...