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第3話 ドワーフと婦人
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自動ドアが開き 高齢の女性が杖代わりのリアカーを押して中へ入ってくる。
いつもの場所のいつものイスに腰を下ろした。
「いらっしゃいませ」
声をかけるとお婆さんはえしゃくを返す何事もなかったかのようにまたイスに座りなおした。
平岡と部長が少し不機嫌そうな顔になると「また 来てるのか。いらっしゃいませなんて言ったって無駄だ」と言ってくる。
そんなこともお構いなしにお婆さんは1時間ほど座ると立ち上がって えしゃくをして自動ドアを開けて帰っていった。
イスを整頓しなおそうとお婆さんのところへ行くと 包帯に巻かれた何かが置いてある。
包まれたほうがいをほどいてみると中からは かつお節のような香ばしい匂いと共に 刃物が現れた。
平岡と上司の方へ視線を向けると眼鏡をずらした上司が「かつお節くさいだろ?だいぶ しなびた顔をしてたからな。がはは」と笑い出した。
再び刃物を見ると 柄はなくむき出しの刃物で刃こぼれの跡がある・・。
立ち止まって動かない俺に平岡が近づいてきて刃物を見ると目を大きくして俺の目を見てきた。
上司もやって来て 刃こぼれのある刃物を見ると凍り付いたように体を震わせて色々な推察を語り始めたが「明日婆さんが来たら 返せばいいだろう?オレ達は何も知れない。いいな?それから その刃物の管理だがお前が見つけたんだから お前に任せたぞ・・」
しかし 次の日、その次の日もお婆さんは現れなかった。
俺は パソコンに入力をした。
「危険物を拾ったら? 発見したらどうする?」
パソコンを閉じて刃物を持ち帰り バス停やスーパー・コンビニをれにかつお節屋を回ったがお婆さんはいなかった。
俺は 自動販売機へ立ち寄って スマートフォンを起動するとタップしてコーヒーを買って飲む。
「はぁ~ コーヒーが飲みたい・・」
・・・・・
「モキチ 行くぞ」
「プイプイ」
俺は 山を登りいつもの場所でキャンプの準備を始める。
まずは テントを立ててモキチを入れる。
テナントもつけておいた。
そしてファイアスティックを作るも気が付けば数本も削り出している。
「これは何でござるか?」
モキチが テントから出てくるとくるまれていたはずの布が剝がされた物を持っていた。
あれは お婆さんの物だ。
思わず声が飛び出す。
「指紋が付くだろ」
モキチは胸を叩いた。
「指紋でござるか? 安心召されよ。拙者には指紋はござらん」
「いい フェザースティックじゃねぇか! 兄ちゃんが削ったのか?」
となりを見るといつの間にかに現れた小太りの子供くらいの背丈の男がいる。
声はしわがれており、ひげを蓄えていて60代ぐらいの顔に見えた。
ドワーフだ。
「これから ここで何が始まる?」
「コーヒーを淹れるから 飲んでいかないか?」
俺は 焚火を始めようとマキに手を伸ばすとドワーフは先にマキを手に取った。
そして 腰に下げてある小さな筒を開けて 灰を麻で作ったワタの上にかけると
グルグルと手を回して あっという間に種火を作って火を起こしてしまった。
ニヤリと笑うドワーフ。
俺は コーヒーミルの中に豆を入れる。
細引きになるまでミルを回した。
ドワーフが湖の水を汲み始めたので リュックから取り出した「岩手県産 金沢清水」を鍋に注いで手渡した。
ドリッパーにコーヒーをセットすることにはお湯が沸いており ドワーフはキセルでタバコをふかしながらこちらを注意深く見ている。
ドリッパーに注がれたお湯がコーヒーを膨らませる。
大きく膨らんだコーヒーは しぼんでいき、絞られたかのように琥珀色の液体がドリッパーから抽出された。
「うまい 苦くてうまいぜ がははは」
モキチはカップに氷を入れて持ってきた。
「拙者も コーヒーに挑戦するでござるよ」
「酸味が たまらないでござる」
「実はな オレには娘がいる。いつも 金や銀・10歳の誕生日にはミスリルまでプレゼントしたんだが、さすがに今年はネタ切れよ。そこで 兄ちゃん。ミスリルと何か交換できる物は持ってないか?」
俺は サンゴの欠片をドワーフに見せた。
「こりゃいい。しかも 加工前と来てやがる!!気に入ったぜ」
サンゴの欠片とミスリルを交換した。
「それから 兄ちゃんが持っているその刃物だが火起こしのついでに研いでおいたぜ。なあ 兄ちゃん道具を使うって事は、愛情を伝えることなんだぜ がははは」
ピカピカになった刃こぼれ一つない刃物を返して俺の肩を叩くとドワーフは去っていった。
・・・・・
自動ドアが開き お婆さんが入ってきた。
えしゃくをすると 同じイスに座った。
俺は お婆さんのところへ行って、あの刃物を手渡すとお婆さんは包帯を広げてピカピカな刃物を見る。
そして ニンマリと笑みを浮かべた。
「仕事が終わったら 付き合ってくれないかね?・・」
座っているお婆さんを見ていると時計がいつもの時間を過ぎている。
立ち去らないおばあさんの代わりに俺が仕事を切り上げて退社した。
お婆さんに付いて行くと石垣になっている狭い階段に差しかかった。
そこでお婆さんは振り返る。
「さあ 出ておいで」
ニャー ニャー ニャー
階段の上や石垣の隙間から猫たちが現れた。
猫たちはお婆さんを取り囲むとおばあさんは 懐から一本のかつお節を取り出して
あの刃物でかつお節を削り始めた。
「遅くなってごめんよ」
歩き回りながら手早く削る
シュ! シュ!
食事に参加できない小さな猫を置き去りにしておばあさんは歩き回る。
そして 最後に小さな猫のところへやって来て 厚めの削り節をシュ!シュ!と削って与えていた。
「この刃物、とてもいい切れ味だよ。この刃物の研ぎ方をよく知っていたね。。おじいさんが研いでくれた刃物みたいさ・・」
おばあさんの 瞳からしずくが落ちた。
いつもの場所のいつものイスに腰を下ろした。
「いらっしゃいませ」
声をかけるとお婆さんはえしゃくを返す何事もなかったかのようにまたイスに座りなおした。
平岡と部長が少し不機嫌そうな顔になると「また 来てるのか。いらっしゃいませなんて言ったって無駄だ」と言ってくる。
そんなこともお構いなしにお婆さんは1時間ほど座ると立ち上がって えしゃくをして自動ドアを開けて帰っていった。
イスを整頓しなおそうとお婆さんのところへ行くと 包帯に巻かれた何かが置いてある。
包まれたほうがいをほどいてみると中からは かつお節のような香ばしい匂いと共に 刃物が現れた。
平岡と上司の方へ視線を向けると眼鏡をずらした上司が「かつお節くさいだろ?だいぶ しなびた顔をしてたからな。がはは」と笑い出した。
再び刃物を見ると 柄はなくむき出しの刃物で刃こぼれの跡がある・・。
立ち止まって動かない俺に平岡が近づいてきて刃物を見ると目を大きくして俺の目を見てきた。
上司もやって来て 刃こぼれのある刃物を見ると凍り付いたように体を震わせて色々な推察を語り始めたが「明日婆さんが来たら 返せばいいだろう?オレ達は何も知れない。いいな?それから その刃物の管理だがお前が見つけたんだから お前に任せたぞ・・」
しかし 次の日、その次の日もお婆さんは現れなかった。
俺は パソコンに入力をした。
「危険物を拾ったら? 発見したらどうする?」
パソコンを閉じて刃物を持ち帰り バス停やスーパー・コンビニをれにかつお節屋を回ったがお婆さんはいなかった。
俺は 自動販売機へ立ち寄って スマートフォンを起動するとタップしてコーヒーを買って飲む。
「はぁ~ コーヒーが飲みたい・・」
・・・・・
「モキチ 行くぞ」
「プイプイ」
俺は 山を登りいつもの場所でキャンプの準備を始める。
まずは テントを立ててモキチを入れる。
テナントもつけておいた。
そしてファイアスティックを作るも気が付けば数本も削り出している。
「これは何でござるか?」
モキチが テントから出てくるとくるまれていたはずの布が剝がされた物を持っていた。
あれは お婆さんの物だ。
思わず声が飛び出す。
「指紋が付くだろ」
モキチは胸を叩いた。
「指紋でござるか? 安心召されよ。拙者には指紋はござらん」
「いい フェザースティックじゃねぇか! 兄ちゃんが削ったのか?」
となりを見るといつの間にかに現れた小太りの子供くらいの背丈の男がいる。
声はしわがれており、ひげを蓄えていて60代ぐらいの顔に見えた。
ドワーフだ。
「これから ここで何が始まる?」
「コーヒーを淹れるから 飲んでいかないか?」
俺は 焚火を始めようとマキに手を伸ばすとドワーフは先にマキを手に取った。
そして 腰に下げてある小さな筒を開けて 灰を麻で作ったワタの上にかけると
グルグルと手を回して あっという間に種火を作って火を起こしてしまった。
ニヤリと笑うドワーフ。
俺は コーヒーミルの中に豆を入れる。
細引きになるまでミルを回した。
ドワーフが湖の水を汲み始めたので リュックから取り出した「岩手県産 金沢清水」を鍋に注いで手渡した。
ドリッパーにコーヒーをセットすることにはお湯が沸いており ドワーフはキセルでタバコをふかしながらこちらを注意深く見ている。
ドリッパーに注がれたお湯がコーヒーを膨らませる。
大きく膨らんだコーヒーは しぼんでいき、絞られたかのように琥珀色の液体がドリッパーから抽出された。
「うまい 苦くてうまいぜ がははは」
モキチはカップに氷を入れて持ってきた。
「拙者も コーヒーに挑戦するでござるよ」
「酸味が たまらないでござる」
「実はな オレには娘がいる。いつも 金や銀・10歳の誕生日にはミスリルまでプレゼントしたんだが、さすがに今年はネタ切れよ。そこで 兄ちゃん。ミスリルと何か交換できる物は持ってないか?」
俺は サンゴの欠片をドワーフに見せた。
「こりゃいい。しかも 加工前と来てやがる!!気に入ったぜ」
サンゴの欠片とミスリルを交換した。
「それから 兄ちゃんが持っているその刃物だが火起こしのついでに研いでおいたぜ。なあ 兄ちゃん道具を使うって事は、愛情を伝えることなんだぜ がははは」
ピカピカになった刃こぼれ一つない刃物を返して俺の肩を叩くとドワーフは去っていった。
・・・・・
自動ドアが開き お婆さんが入ってきた。
えしゃくをすると 同じイスに座った。
俺は お婆さんのところへ行って、あの刃物を手渡すとお婆さんは包帯を広げてピカピカな刃物を見る。
そして ニンマリと笑みを浮かべた。
「仕事が終わったら 付き合ってくれないかね?・・」
座っているお婆さんを見ていると時計がいつもの時間を過ぎている。
立ち去らないおばあさんの代わりに俺が仕事を切り上げて退社した。
お婆さんに付いて行くと石垣になっている狭い階段に差しかかった。
そこでお婆さんは振り返る。
「さあ 出ておいで」
ニャー ニャー ニャー
階段の上や石垣の隙間から猫たちが現れた。
猫たちはお婆さんを取り囲むとおばあさんは 懐から一本のかつお節を取り出して
あの刃物でかつお節を削り始めた。
「遅くなってごめんよ」
歩き回りながら手早く削る
シュ! シュ!
食事に参加できない小さな猫を置き去りにしておばあさんは歩き回る。
そして 最後に小さな猫のところへやって来て 厚めの削り節をシュ!シュ!と削って与えていた。
「この刃物、とてもいい切れ味だよ。この刃物の研ぎ方をよく知っていたね。。おじいさんが研いでくれた刃物みたいさ・・」
おばあさんの 瞳からしずくが落ちた。
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